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庭園からなにを学ぶか

2020年も『おにわさん ― お庭をゆるく愛でる庭園情報メディア』を宜しくお願いいたします。

“おにわさん”について』のページを更新しました。今回の更新で追加したテキストも、このnote記事も3周年を迎えるにあたって11月の半ばに書き始めたテキストです。

今回『“おにわさん”について』ではっきりと表明したのは、
・庭園の権利を侵害する形で営利をあげない(ビジネスにはしていない)
・シェアの精神に基づく庭園写真の無償提供

の2点です。

庭園からなにを学ぶか

自分はほんと地方のニュータウン出身で日本文化のようなものに触れる機会もなく、テレビで流れる音楽・エンタメやスポーツといったユース・カルチャーを愛でて育った典型的な無宗教人間。

そんな人間が庭から何を学ぶか。いや、庭を通じて結果的に400箇所近く巡った寺社仏閣や、100箇所近く巡った茶室の空間から何を学んだか、と言った方が良いかもしれないけど。

単語で言うと、『禅』『律』『礼』
…と言ったもののそれぞれについて深く勉強したわけではないので詳細は割愛。

それぞれを自分の言葉で言うと、

禅。

我欲で動かない、執着しない。シェア。

律。

自分の行動・欲望を律する。

礼。

庭そのもの、そして庭を取り巻く人々(庭師さん、研究者、施主・所有者など)に礼の気持ちを。

自分の主張や自分の利ではなく、“シェア”することによって 『カルチャー・文化が育つ』と信じていて――
そこへ至ったのは少なからず、色んな場所で色んな方の寺社や庭への想いをお聞きしたからで。いやまあ「あぁああ庭見たい!」ってめちゃくちゃ我欲で動いてますけどね。

庭園の魅力をシェアしたい

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一方で大名庭園や別荘建築の『庭』は所有欲の行く末によって完成した作品である、とも思う。
それは真逆の世界観なんだけれど、今日(こんにち)にそれらが多く開かれていて(写真の京都『無鄰菴庭園』も)、自分らにとっての癒しの場になってる――ってのは結局“シェア”になってんよなあ、って。

繰り返すけど“シェア”の精神。
自分が得たものを自分だけのものにしない。庭園の魅力が周囲に伝わってほしい、だってすごくいいから。
その手助けになるのなら、自分の持っているアーカイブをどなたかに利用していただくのはやぶさかではない。これまでいくつかの自治体、観光団体、企業様、生徒さんや先生方から「この写真が欲しい」と依頼を受けて、無償でお渡ししていたので、『無償提供する』ということを明示しました。
※もちろん無断でパクられたら「いやいやちょっとマナーがあるでしょ」と思うけどw

庭園の権利を守りたい

前提となるのは『権利を侵害した形で収益を上げない』ということです。権利侵害犯罪アフィリエイトサイトと並べられるのは心外である、ということも主張しておきたい。
ここからは線引きが難しい話も混ざってくる。

まず、
・寺社仏閣は神聖な場であると同時に、プライベートスペースである。
・なので公共の建物ではない(精神上は、公共の場ではあるけれど)

寺院が秘仏などの写真を無断使用した写真家を訴えていた裁判、寺院らの主張が認められる(Exciteニュース)
「信仰の対象として重要な本尊を寺の意思に反して広く一般に流布する行為は、宗教上の人権を侵害する不法行為に当たる」

【ニュースから】”秘仏写真”無断使用は”宗教上の人格権”侵害(18/06/20 共同通信 他)(那住行政書士事務所)
学習教材などを作成する場合で、仏像など神社仏閣の所有するもの、あるいは神社仏閣の建物の写真を利用する場合、出版社等が神社、お寺等に対し、何らかの金銭を支払い、利用しているケースがあるようです。

建物にも著作権 撮影した写真をSNSに載せて大丈夫?(NIKKEI STYLE)
神社仏閣など、一部の建造物で見かける「敷地内撮影禁止」の看板は、著作権法上のものではない。敷地や建物を管理するために必要な措置なので、屋外の建物ではあっても、敷地内からの撮影に関しては管理者の規定に従うのが賢明だ。

以上の文章から言うと“収益を上げるかどうか”とはまた別で、“寺社の写真使用”にそのものが権利侵害にあたってくる場合もある。(なので、上記の提供の際にはお互いで寺社への許可取りもちゃんと行っています。)

ここからは『法律的にどうか』という目線と『人としてのモラル的にどうか』という2つの考え方がある。

「法律的にどうか」という点ではいくらでも言い訳は作れると思うのですが、後者において――
そこまでしてお金が欲しいか?というのは単純に、クソダサいしキモいしカッコ悪いと思っていた。別に自分はこのウェブサイトは「お金が欲しくてやっている」わけではない。
主役は庭園そのものであり、所有している方であり、作庭者であり管理されている庭師さんだ。あと研究者やその場を運営されているスタッフさんも。決して自分ではない。そこであぶく銭、小遣い稼ごうなんざ、その精神がダサ過ぎて泣けてくるわ。

昨今、寺社や色んな施設を拝観する中で、『営利目的の撮影禁止』という注意書きを多く見掛けるようになってきた。
根津神社も以下のようなメッセージを発した。

神様をお祀りしている場所であり、
ご参拝の方がたくさんいらっしゃいます
教会の中で勝手に撮影会ができますか?
お寺の境内で勝手にロケができますか?
またご自身のお家や庭が勝手に写真素材として販売されていたらどう思いますか?

『神聖な場を写真に収めて、それをお小遣い稼ぎに用いるだなんて、なんて罰当たりな』
という風にフツーは感じるように思うのですが(別に神仏への信仰心がなくても)、どうやらそうではない人が多くいらっしゃる。

「他の人がやっているから自分も――」という人が多く発生するメカニズムはわかる。でも“ばれないからいいか”“訴えられないから犯罪する”、それって万引きや痴漢と同じじゃない??

“美しい日本文化”と言いながら、それらにしゃぶりついて集団痴漢しているような気持ち悪さ

を感じる。でも犯罪であってもラクして稼げるから、始めちゃったらやめられないんだろうな。シャブと同じですね。

あまり何かに怒りを覚えたくはないけれど、「普通に考えたらそうだろう」と思うことも想像できず、我欲に走る人々が多いことは悲しいことだ。
それぞれの信教が“性悪説”“性善説”どちらを唱えているかはわからないし、『突き詰めてゆくと性悪説なんだろう、だって人も殺められるのだから』と思うけれど、自分の好きなカルチャーに関しては“性善説”でありたいもの。

まともな美的感覚でありたい

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庭園は沢山見に行けば見に行くほど空間芸術だと思う。写真は静岡県の『実相寺庭園』

「“おにわさん”も広告載せたらいいのに」と言われたことは何度もありますが、美術館で撮った絵画の写真で「これでお金を得よう」と思うか。好きなバンドのライブ映像をYouTubeに転載して広告収益を得たいか――
マトモな感覚していたら、思わないでしょう。主役は自分じゃねーし。

他人のふんどしで権利侵害してお金得たいという発想が、純粋にダサいしキモいしカッコ悪い。そこまでしてあぶく銭欲しくない。それより大事なものがあると思っている。

そして純粋にそこにセンスを感じない。想像してみよう――庭園と同じ空間に、ダサい広告が出ていたとする。自分がアウトプットしたものがそのような状況になることは、想像するだけでガッカリする。ダサすぎる。
たとえば枯山水庭園を囲む竹垣が、広告看板になっていたらどう思う?ダッサwwwwwqあwせdrftgyふじこlp

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『おにわさん』というメディアの中の人は、別に「何者かになりた」くって一つのテーマ掘ってるわけではない。名声もキレイな服も靴も要らない。
純粋に“日本庭園の存在を広めたい”“シェアの精神”という想いでこれからもやり続ける。

純粋に『日本庭園の存在を広めたい』――その精神に共鳴してくれている人、すでに居らっしゃいますが、それをもっと広げて、自分個人が失業保険で庭園観に行くみたいなことではなくてwwww、パトロンやスポンサーのついた一つのプロジェクトとして――運営されていくことを最終的には願いつつ。
ということで…年明け着手できなかったけど2020年は新プロジェクトのリリースが目標です。

[おにわさんーお庭をゆるく愛でる庭園情報メディア]( https://oniwa.garden/ )の中の人が、庭園について思うことなどを綴ります。 サイトでは日本全国約1400の庭園と2万枚以上の庭園写真を掲載!