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造園の就業者、この15年で6割減。庭園専門家は専門家同士の争いや批評をしてる場合じゃない/【おにわさん】は「庭園ファン」の『好き・楽しい』のためのサイト

■このエントリを書くきっかけ:

本エントリはTwitterでつぶやいたこの愚痴から派生し、つぶやいたことを再構成したものです。

で、表題の前に「お庭の専門家」の人口についてのデータを紹介。

■造園工事業 就業者数は2004年〜2017年で6割減

政府統計の総合窓口(e-Stat)にて集計
https://www.e-stat.go.jp/

2004年の68,335人から2017年には27,436人に減少。10年強で約4割に。
なお同じ統計で2003年には約78,000人だったそうなので、そこから数えると15年間で約3分の1まで減少していることになる。
(なお2018年から増加に転じてます。)

■ランドスケープコンサルタンツ協会の職員数(≒会員数)は2004年〜2014年で6割減

引用元:CLA白書2014(一社)ランドスケープコンサルタンツ協会:https://www.cla.or.jp/wp-content/uploads/2015/08/207ff5ab8e534d9d0a90eef85326d2bd.pdf

① 職員数(技術系)
・ 全会員における技術職員数はここ10年で1950人から813人と半分以下に減少していますが、会員数が半減していることから当然ともいえます。

引用元:CLA白書2014(一社)ランドスケープコンサルタンツ協会:https://www.cla.or.jp/wp-content/uploads/2015/08/207ff5ab8e534d9d0a90eef85326d2bd.pdf

補足として「令和2年度 定時総会資料」(https://www.cla.or.jp/wp-content/uploads/2013/04/2020soukai.pdf)によると技術職員数は890名となっていて、若干ながら回復しているようです。

■日本造園学会会員は2000年代前半から〜2021年で3割以上減?

造園学会の安定運営のための基礎的 財源は学会員からの会費収入になりま すが、平成10~20年までは3,000人 程であった会員数も、現在では2,500 人程に減少しているのが実情

引用元:一般社団法人 日本造園建設業協会「日造協ニュース」2014年12月号https://www.jalc.or.jp/monthly/pdf/489.pdf

データ更新日 :2021/11/07
公益社団法人 日本造園学会
会員数
【個人会員】 名誉会員:24(人) 正会員:2099(人) 準会員:2(人)
【団体会員】 賛助会員:52(団体) 購読会員:72(団体)

引用元:学会名鑑 https://gakkai.jst.go.jp/gakkai/detail/?id=G00073

なお日本造園学会のウェブサイトには「3,200人」とあり、3,200人と2,100人、どちらの数字がメンテナンスされていないものかは不明。
事業報告の「会費」から換算すればおそらく2,000人台というのが正しそうですが、知ってる方が居たら教えてください。

■高年齢層に偏った会員組織は10〜15年後に大きな岐路を迎える/造園と比べて減少幅が少ない「土木学会」

ランドスケープコンサルタンツ協会は同じ2014年の資料で高齢化についての課題にもふれられています。

引用元:CLA白書2014(一社)ランドスケープコンサルタンツ協会:https://www.cla.or.jp/wp-content/uploads/2015/08/207ff5ab8e534d9d0a90eef85326d2bd.pdf

・ 平均年齢数47.0歳と、企業平均35.6歳に比べるとかなり高齢化しています。業種別で一番高い製造業の45.4歳よりも高くなっています。

このグラフの時点から10年経過していることを踏まえると、
現在の50〜60代が徐々に組織から離れはじめる10〜15年後には今以上に大幅な減少が進む。

日本の少子化を考えればV字回復は不可能にしても……
おそらくこういう分析と対策もあまりやっていないんだろうな?というのが外から見ている印象。

造園学会と比べると「日本土木学会」は減少幅が少ない。
「ダイバーシティ推進委員会」が存在し、性別・年齢別の会員数について分析・発表されているところからも危機感⇨対策がちゃんと取られていることが感じられます。

■『おにわさん』の年間アクセス数やSNSフォロワー数は右肩上がり

おにわさんInstagramのフォロワー数のおおよその推移

2016年秋の開設以来、当サイト(https://oniwa.garden/)はウェブサイトの年間利用者もSNSフォロワー数も右肩上がり。

ちなみに『おにわさん』より少し遅れてはじまった『Japanese Garden TV』さんも昨年チャンネル登録者数:10万人を達成。

『おにわさん』にしてもYouTubeにしても無料で公開されて気軽にアクセスし利用できるもの。
専門家のための有料の会員組織とは性質は異なるけれど、伸びている以上は
『決して日本の(日本人の)“庭”に対する興味が失われているわけではない』と思っている。むしろ「日本の“庭”が好きな人自体は増えている」

また少なからず「グリーンテック」なんて言葉も生まれ、『自然に関わる庭やランドスケープの仕事⇨社会貢献度の高い仕事』という認識は高まっているはず。

■『おにわさん』の運営思想:「みんな違ってみんないい」「日本庭園施設全体の底上げ」「(庭園に対して)安易な批評はしない」

⇩この記事でまとめたように、また毎年ことあるごとに書いているけれど、
『現在の日本は文化財的価値のある庭園ですら消失している』
『そしてその事が知られていない・注目されていない』
という課題がある。

あと『地方の庭園へ行くと、文化財や古庭園であっても「京都はすごいけどうちなんか大したことないでしょう」と言われがち』とか。
地域の人がそんなふうに自信を持てなければ、残るものも残らない…。

そんなことを少しでも解消したくて、
『おにわさん』では『安易な批判/批評をしない』『褒める』という行為をとても大切にしている。

昨今よく聞く「多様性を認め合う」という言葉が苦手な方もいらっしゃるだろう。
それが苦手で、あくまで「自分の価値観を押し付け、主張したい」ならば、「おにわさん」の文章を読むのにはたぶん向かない。

(でもそんな方であっても、「日本庭園マップ」⇩をきっかけに庭園をめぐる数が増えれば「おにわさん」サイトとしては無問題!
あくまで「巡る数を増やしたい」ためのサイトだからね!)

■庭園専門家は専門家同士の争いや批評をやめて「庭園ファン」の方を向くべき⇨若い担い手を増やしたいなら「魅力を伝える」に専念して欲しい

以前この⇩エントリを書いた時に書いたことの繰り返しになりますが。

一般の人から見たら同じ『庭を守るべき専門家』なのに、対立していることが少なくない。自分にもそんな話が多々聞こえてくる。
「現場の人は」
「研究の人は」
「設計の人は」
「外構の人は」
「建築の人は」(ランドスケープや植物のことをわかってない、等)

↑このような「業態間」の話も聞くし、「同じ業者間」のピリピリした話も色々お聞きする。
もちろん競合同士、争い合うことは仕方ないと思うのだけれど、

●これだけ各業態の担い手や会員数が減ってるのに、いつまでもそんなことやってる場合?

●少なくとも「ただ庭園が好きな人」にとっては関係ない話。庭園ファンのためのサイト『おにわさん』に他者の批判を持ち込もうとしないで欲しい

たしかに前の時代は重森三玲や中根金作が七代目小川治兵衛の庭園に対して批判的だったりしたらしいし、クリエイターが他者の作品を気に食わない感情は仕方ない(音楽だってそうだ)のだけれど、

●人口が増加し続け、経済が発展し続けた昭和〜バブルのの時代はバチバチやってても担い手に困ることはなかったかもしれないけど、
もう『魅力や楽しさを伝えることを優先』しないと沈下は止まらない
と思う。

あとは例えばさ、『東京の庭園はビルが映り込むからダメだ』みたいなことも別に“ファン”が聞いて楽しい話ではない。
楽しい話をしよう!!!(ていうかそういう景観を守れなかったのは前の時代の大人の責任だろう!!!)

もちろん、中には沈下を止めるためにポジティブなことを発信している人もいらっしゃる。Japanese Garden TVへ出演されている庭師さんたちはそういう方々だろう。
『おにわさん』はそういう方の力にはなりたい。

■何度でも言う:『おにわさん』は【庭園が好きになった人がより沢山庭園を巡る(好きを深める)ため】のサイト

上記では「会員数:●,000人」(数千人)の世界の話をしてきたけれど、
1年間での日本庭園施設の累計入場者数は「●0,000,000人」(数千万人)。

中には、小中学校の授業ではじめて都立庭園を訪れた人や、修学旅行ではじめて日本三名園を訪れた人も居るでしょう。

『おにわさん』はそのような「庭園が気になった人」により多くの庭園を知ってもらうことを目的としたウェブサイト。
決してマニア向けの先鋭化や専門家による批評を目的としていない。

■『ファン』や『好き』を増やせば、少しでもプラスに転じるかも(知らんけど)

学会系の方や先生から
「学生がおにわさんを参照してレポートを提出するのが困る」と言われたことが複数回ある。もちろん自分の耳に届く時は笑い話的に。

上記の通り「正しさ」を目的としてるサイトじゃないので…「確かにそれは困るかも」と思うけれど・笑

一方で「書籍を買わないと辿り着けない」ではリーチ出来なかった層に「おにわさん」は確実にリーチしている(それはインスタフォロワー数が示す通り)。
造園に限らず、建築系の学生さん/プロの建築家さんもけっこうフォローしてくださってるし。

若い学生さんはきっと「おにわさん」を使って、カフェを巡るような軽い気持ちで庭園を巡り、「ここ好きだな」なんて風に“好き”を深めていってくれるはず…

「庭園好きな人」が増えればきっとそういう仕事に就きたい人も、「守りたい」「良くしたい」と思う人も増える。
『おにわさん』が「お庭が好きな人と、そういう人を必要としている人」を繋ぐものになっていけばいいなあとは思うし、『ファン・好きを育てる』ことを大切にする方が増えたらいいなとは思います。

■数百人/数千人と居る「専門家による専門家のための」サイトも本来はとっくに存在するべき/存在しないのはただの怠慢

「専門家同士でお金出し合って正確な“日本庭園公式サイト”を1日でも早く作るべき(10年前からずっとそう思ってる)」
というエントリはまた別途書こうと思うけれど、

「批評性」や「正しさ」を優先したければ自ら作るほかないし、個人で『おにわさん』が作れるのだから数百人・数千人といる組織なら少しずつ資金とリソース(執筆を分担)すればすぐ作れるものだと思う。
あとは逃げずにそれをやるかやらないかだけ

別に『おにわさん』が無くても検索すれば日本庭園について語ってるウェブサイトなんて今は他にもあるから!
『おにわさん』どうこうの問題じゃなくて専門家が専門家自身の責任で「正しいことが調べられるウェブサイトを作らなきゃダメ!です!

(正直、「おにわさん」の文章ははっきり言って『書かないと検索で引っ掛からないから書いてるだけ』と言っていい。
行きたいと思うかどうか、9割はビジュアルだと思うし(僕はそう)、写真を30秒ぐらいでバーっと見るだけというのが理想。)

長くなったけど本エントリは以上です!

[おにわさんーお庭をゆるく愛でる庭園情報メディア]( https://oniwa.garden/ )の中の人が、庭園について思うことなどを綴ります。 サイトでは日本全国約1400の庭園と2万枚以上の庭園写真を掲載!