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当社がAI技術を始めた理由

オンキヨー開発部の河村です。
 
 
当社のこれまでのオーディオ技術を活用して、新事業へ、というお話から、当社の事業とそれに関連する技術をいろいろとnoteで紹介していますが、その中で、「AI技術」という言葉が何度も登場しています。実際、当社には機械学習やディープラーニングなどのAI技術を習得したエンジニア、ならびにAIに必要なデータをラベリングするスタッフが多数います。

しかし、元々、オーディオ会社だった当社がなぜAI技術を保有しているのでしょうか。オーディオにAIは必要ありませんので、もともと持っていた技術ではありません。では、いつ、どういう経緯で始めたのか、今回は、当社の紹介の番外編として、事業や技術の紹介ではなく、当社がAI技術を保有している理由、経緯、を解説いたします。

当社はオーディオの技術を新事業に展開する、という方針で作った会社、というのは以前も述べたとおりです。当社のオーディオ技術は素晴らしいものと自負していますが、このオーディオ技術だけで、新事業創出するのはなかなか難しい、ということも分かっていました。低ノイズ技術やスピーカーの技術はあっても、局所的な課題解決にしかならないため、事業、というところまで至らない、のです。他社や社会に役立つには何かプラスアルファが必要と考えました。とはいえ、何があれば、、、ということで当社がやったことがAI技術の習得です。

しかし、なぜ、当社がAI技術を習得しようとしたか、です。それについて説明したいと思います。


時を少し遡ります。2016年くらいから、Amazon、Googleといった会社が家庭で使えるスマートスピーカーを発売し始めました。AmazonやGoogleの音声認識技術は他社でも導入が可能で、AIを知らなくても使えました。当時、オーディオ会社であった当社も、GoogleやAmazonが出して一世風靡していた、スマートスピーカーを、”音のいいスマートスピーカー”として発売しました。また、GoogleのAIを使った他のサービスに応用しようと開発を進めていました。しかし、開発しているうちに疑問が沸き上がります。

「当社の特徴を出すことはできない」
「このまま彼らの仕組みを使っていても、他社と同じことしかできない」


AIは様々なところで活用ができる優れものです。しかし、既存の方法だとどうしても、実現する方法が限られるため、他社もすぐに実現できてしまう、またはやりたい、と思ったことが実現できない、となります。それは、競争力がない製品、サービスに他ならず、結果、価格競争になります。価格競争だと当社では太刀打ちできません。


そのジレンマの中で、それであれば、自社でAI技術を保有しよう、という議論が沸き上がりました。その当時、Google、Amazonなど大きな会社しか実現していなかったAI技術を独自で開発する、というのは、現実的なのか、本当にモノになるのか、という意見が社内からありました。他社からも大変だからやめとき、と言われました。私も悩みましたが、やってダメならばそれまで、と考え、やろう、と決断しました。

とはいえ、イチからAIを始めるとなると、勉強が必要です。そのため、大学に勉強しに行くところから開始です。そのために社内説明し、費用を会社に認めていただき、音声認識などAIを研究している研究室に当社のエンジニアに常駐してもらいました。大変だったと思います。しかし、1年以上にわたり、当社の優秀なエンジニアが頑張って確実に習得し、そこから独自の技術として作り上げていき、今では当社の技術の一つの礎となりました。エンジニアに本当に感謝です。

その結果、現在、音や振動などオーディオ技術にプラスして、AI技術を使うことで、他社には真似できないサービスを展開することができるようになりました。音や振動とAI技術の組み合わせでは、日本国内ではトップクラスだと考えています。

以前ご紹介した、音声認識技術や交通量調査の技術、また、他社さんの困りごとを解決、というときにもAI技術を提案することが多いです。

今思い返してみれば、あのときの決断は当社にとって大きなターニングポイントになったと感じます。AI技術をやろうと提案してくれた、またそれを実現してくれた当社のエンジニアたちは、私の自慢です。


いかがでしたでしょうか。少し裏話にもなりましたが、いろいろと葛藤や悩みなどストーリーでした。皆さんも人生の中で選択のタイミングがあると思います。その参考になれば幸いです。
 
今回は少し重い話になりましたが、次回はいつものように軽い(?)お話しに戻ると思います。そっちの方が好きです。(笑)


それではまた次回。