【雑談】弓の価値

新品だけどずっと売れ残ってる竹弓、なんで安くならないの?
について感じてることを書きます。
考えたことありますよね?

まずは、お金の仕組みから
不動産の会計では減価償却という仕組みを使うことができます。
家屋や機械などが使用するにつれて、資産価値が減少していきます。
10年で資産価値がゼロになるならば、もともとの価値を10回に分けて経費計上ができます。
例えば、100万円の機械を経費で購入したら、1年で100万円の経費計上はできずに、10万円を10年かけて経費計上を行います。
減価償却の期間が個別に定められています。

耐用年数という言葉が出てきました。
製品が通常使用に耐えうる期間のことです。減価償却期間よりも長く設定されています。

そう、今回は竹弓の減価償却と耐用年数と価格のお話になります。

合成接着剤の耐用年数は30年〜40年と言われています。
以下の条件を仮定して考えてみましょう。

本体価格 → 12万円
耐用年数 → 30年
減価償却期間 = 耐用年数期間

30年経過すると竹弓としての価値がゼロになりますので、
1年間で4000円ずつ価値が無くなっていく計算になります。
在庫として1年経過するごとに安くなっていくことが自然のような気がしますよね。
しかし、実際には新弓の価格が年数で値下がりすることはありません。(お店のサービスは別です。)

閑話休題
そういえば、接着剤の耐用年数ってずっと使っていない場合でも自然と減ってくものなのでしょうか?
打ってから1回も引かれずに50年経過した弓でもあれば、実験できるのでしょうが、気になりますね。

竹弓の価格が下がらないのは2つの理由があると考えています。

1つ目は耐用年数のデータがないことです。
全く引いていない状態で耐用年数は変わらないのか、短くなっていくかの確証がありませんので、竹弓の価格は下がりません。
ニベ弓であればなおさらですね。
耐用年数の起算日も打たれた瞬間からなのか、お店に来た瞬間からなのか、それもバラバラです。
それに経過年数を理由に値下げが罷り通ってしまうと、(いないとは思いますが)悪質なユーザーは値下げ交渉をしてくるでしょうし、お店にとってもマイナスでしかありません。

2つ目は値下がり前提の購入になることです。
新弓よりはある程度張り込んであったほうが竹弓は安定します。
張り込んである期間でも耐用年数が下がってるといってしまうと、価格が下がった状態で販売することになります。
この値下がりを計算して元値をつけると、今度は新弓の価格が高くなってしまいます。新弓が購入されなくなると、射手のメンテナンス技術が衰退していきます。古い弓ばかり求められると、店舗としても在庫を抱えなければならず、古くなるまで取り置き、なんて悪質なユーザーも出てきます。
古い弓(=安い弓)はありませんか?、みたいな迷惑な問合わせも増えてくるでしょう。

逆に古い弓の場合のメリットを考えてみましょう。
年数が経過しているので弓が枯れています。枯れた弓は重量も軽くなっていることでしょう。使い込んだような飴色の風合いも素敵だと思います。
張り込んである場合は安定もしていることでしょう。

巷では質の良い櫨が手に入らなくなった、ということを聞きます。
昔は質の良い櫨がたくさんありましたので、その材料が使われている竹弓も現存していることでしょう。

銘にこだわらない方であれば、代変わりする前の銘を入手できることもあるかもしれません。
新弓で注文すると当代の弓師作になるが、古い銘だと先代の弓師作のいった具合です。
そうすると、長い弓師歴の中で培われた技術、晩年の洗練された技術が培われている弓になります。
そのような響きの弓もワクワクしませんか?

ちなみに、弓右衛門の竹弓は殆どが打たれてから2年以内に購入をしています。欲しい強さの弓が需要がある範囲にあるので、在庫として置いて残る確率が低いのです。

さて、次は中古の弓を考えてみましょう。
ここでの中古とは一度人の手に渡った弓のこととします。
オークションやフリマアプリではたくさんの中古の弓が出品されています。
年代物といって差し支えない弓に対しても高額な価格が設定されてるのを見ますと、それだけの価値があることを分かった上での値段設定なのか、ダメ元での値段設定なのかは疑問が残るところです。塗り弓に対して10万を超える設定も見かけます。
使えるか分からない状態の弓に5.0万、完全に破損してる状態の弓に2.0万など、これを購入する人は現れるのでしょうか?

これは置いておきまして、
まだまだ使える竹弓についての価格設定は興味深いところであります。
購入した状態で保管してあったとしても10万円を超えた竹弓は選ばれることは稀です。新弓で入手が難しい銘であってもです。
使用頻度が少ない弓であっても7.0万あたりがボーダーラインになってるのではないでしょうか?
弓としてはまだまだ使える状態にも関わらず、人の手に一度渡っただけで価値が下がったように感じてしまうのです。

なんというか、不動産と同じような感じがします。
不動産には新築価格というものがあります。不動産では新築を購入する時だけ価格が1割ほど高く設定されています。家賃も高く設定されています。
これで例えば次の入居者が入居しようとするときは、家賃はかなり減額されます。新築でこそ許容されていた家賃が、次の人からすると新築という付加価値がなくなるので、価格を下げないと入居してもらえないのです。

竹弓のセカンドオーナーはたしかにリスクが伴います。
前のオーナーがどのような使い方をしたのか分からないですし、どんな癖・どんな破損がついてるのかも実物を見なければ判断できません。

実はメリットもあって、オーナーが正しい扱い方をしていれば変な癖はついてないですし、使用歴もちゃんと申告してくれます。
慣らしも終わってますし、弓力を落ちることは稀でしょう。自分が慣れる期間が省ける点が良いでしょう。

竹弓の何に価値を感じるかは人それぞれです。
どんな弓を入手するかの判断は自己責任になります。
弓右衛門は勉強のために中古の弓を購入してしまうかもしれません。

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