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客層に合わせた売り方を再構築する

 卸売から小売業へ。ホテル業を取り巻く環境は、旅行エージェ ント経由の卸売業的な売り方から、小さくたくさんの人に売ってい く小売業のような販売形態へのシフトが必要だ。小売業の生命 線は品ぞろえにある。品ぞろえのよしあしは、お客さまの欲求の 受け方のよしあしにある。単なる数の多さや安さではない。同じ 売り場面積でも大きく異なってくるのが品ぞろえである。  

 以前、牛乳の品ぞろえを、売場面積の大きなスーパーと小さ なスーパーを比べたことがある。牛乳の売場面積は、大きな店 は小さな店の5倍ほどだ。普通に考えれば、5 倍も置けるのだか ら、大きな店が有利に働くように思えるのだろう。だが、お客さま の欲求の受け方という質の品ぞろえに関して、小さなスーパーの 方が一枚も二枚も上手であった。お客さまの牛乳に対する欲求 を理解している。
 
 具体的には、大型店は、100 円代から 200 円前半から後半の似つかわしい商品が横並びでそろえられてい るだけであった。このような品ぞろえでは、お客さまの選択基準 は、どのメーカーの商品にしようかと考えるくらいで、楽しみはない。 おそらくメーカー主導でそろえているか、お客さまはこれくらいの価 格のものしか買わないというおもいこみからそろえているのだろう。  

 対して、小型店では、100 円代から 200 円代、300 円代、 500 円代と、価格に幅がある。間に合わせ的に購入する人、 価格を重視する人にとっての牛乳。おいしいカフェオーレを飲み たい人にとってのコクがあるものを探している人。よりナチュラル な本物品を求めている人にとっての牛乳など、お客さまと生活が 牛乳に求めるものを分類して手を打っている結果であろう。
自分たちのホテルの品ぞろえは、大型店の選べるようで選びに くい品ぞろえになっているのか。それとも、小型店が行なってい た生活と牛乳の連関を意識した品ぞろえになっているのか。異業種の事例から自社の品ぞろえのレベルを考えてほしい。  

 MDのレベルは次のように 5 段階に分けられる。レベル 1:イメー ジ型 MD レベル 2:価格訴求型 MD レベル 3:価格帯別 MD レベル 4:グレード別 MD レベル 5:客層別グレードMD。 大型店は 3 段階目の価格帯別MDを初級レベルで展開している ことになるし、小型店は 5 段階目の客層別グレード別 MDを実 践していることになる。  

 最初はだれだってイメージから入る。そこで売れないことが多 いから価格訴求で安さ伝えてなんとかしようとしていく。安く売っ ていては儲からないから価格帯事の売りわけを考えていくように なる。価格帯事の違いを売り手が実感していくことで、グレード の違いがはっきりと認識されていく。そして、お客さまの求める欲求とグレードの連関が分かってくる。  

 ホテルの部屋も品ぞろえである。誰のどんな欲求を満たしていくた めのものか。そのグレードは、ささやかなリニューアルで、より、その 客層が求めるものに近づけていけないか。まとめて提示していくの ではなく、細かく、細かく、品ぞろえを考えて、さまざまな客層から の支持を得ていくことが、今、必要だ、 お客さまは、自分の求めるもの=価値を、一定の予算内で一番満たしてくれるところを選んでいくのだから。

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