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8月2度目の満月は今年一番大きいらしい。
その日が近づいているからなのかすこしいびつな月はすでに大きかった。

正円の満月もオツだけれど。
いびつな月も悪くない。
というよりも。
いびつだからこその情感。

整然と並べられた美しさというものがある。
効率的に整理されて、AIロボットがピックアップしていく。
自動的に配送先のラベルが貼られて、配送先ごとに並べ替えられる。
埃どころか、無菌室の中で小麦粉がこねられて。
ベルトコンベアの上に寸分たがわぬ大きさのパンが並べられていく。
工場を一周した頃にはすっかりこんがりと焼けている。
オートマティックに袋詰めされたパンが四角四面のトレイに整理されていく。

学校の朝礼で。
身長の順番で並んで。
前へならえ!なんて感覚までそろえて。
おーい、そこの君、はみだしとるぞーなんて言われて。
美しく整った隊列。
ありがたい校長先生の話は長すぎて生あくびさ。

僕はそんな整った何かからはみ出す瞬間を探してる。
想像力が飛躍して、はみだすこともあるし。
それが顕現して、何もかもがごった煮になることだってある。
その瞬間に笑ってしまう。

整理された直線があるから曲線が面白いのか。
曲線が自然だからこそ、直線にストレスを感じているのか。
それがなんなのかわからないけれど。
何かからはみ出していることが面白いのだとすれば、結局、その何かに縛られているじゃないかと考えてみたり。
お前はお前であれとか、お前らしくとか、そのお前自体がわからんのとよく似てらあ。

そんな僕には安心感だよ。
いびつな月。
なんて中途半端なんだ。
あんなにも大きいのに、見れば月だとわかるのに。
だがよ、真の正円なんて一瞬だもんな。
月の形は常に経過でしかない。
こうしている間にも変化している。
いびつなもんか。あれが常態だ。

ちゃんとしている人がいるから?
何がちゃんとなのさ。
僕はちゃんとしているつもりだよ。

僕はいびつかな。
僕ははみだしているかな。
最高だな。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。