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智慧

モロッコで起きた大震災の死者が2000人を越えるかもしれないという報道をみて、その土埃が舞う映像と共に恐怖を感じた。
M6.8は日本でも大地震の部類ではあるけれど、それでも年に数回は日本国内起きる規模だとも言える。
それよりも規模が大きい地震も起きている。
ここまで古来から震災が多い国は耐震設計や生活に根差した自然災害の意識がやはり違うのだろう。ましてや台風の通り道である日本は地震だけではなく自然の驚異が深層レベルで沁み込んでいる。
滅多に地震がない国ではこれほどの大規模な被害になるのだから。

自然災害の少ない国に移住したいなんて東日本大震災の頃、目にしたのだけれど。こういうことが起きると考えてしまう。
自然災害が少ないということは平和であると同時に、「少ない」だけなのだということを考えてしまう。
根本的にあらゆる災害の可能性はどこにいたって存在しているということだ。
数が多いことも嫌だし、準備されていないというのも恐ろしい。
日本では野犬に襲われるなんてことがほぼなくなったけれど、住宅街や山林迄アスファルトで固められた結果、交通事故はどこでも起こりうるようになった。
なんだかそういうことに似ているのかもしれない。

モロッコという国には行ってみたいなぁと何度か思った。
地中海の出入り口。スペインの目と鼻の先。
ヨーロッパの影響が色濃い北部アフリカ。
多くのセレブがリゾート地として訪れるのだという。
極東という地理に住んでいるからだろうか、僕は古くからの文化の交流地点のような場所が昔から好きみたいで、例えばアジアとヨーロッパの交流地点であるトルコは昔から言ってみたいなぁと思う場所だった。
被害が大きい地区の映像は粘土で建てられたような土壁の平屋が土煙に覆われた潰れているような地区で、ああ、こういう地区もたくさんあるのだろうなぁと思った。どんな生活だったのかなぁ。きっと地震は怖かっただろうなぁと思った。

今、僕は地震を感じてもパニックになることはない。
実はこの間の千葉を震源とした地震が試写の真っ最中に起きた。
ぐらりと長めに揺られながら、スクリーンをみていた。
特別、誰も慌てることもなく、緊急に映像が止まるようなこともなかった。
近い将来、大震災が来ると発表されているにもかかわらず、平常心で大きくなったらどうようかな?ぐらいまでは冷静に考えることが出来ていた。
でもきっと地震の少ない国であればそうではなかったのだろうなあ。

多分、知らなければ知らないままやりすごせることはたくさんある。
地震の恐怖だけではなくて。
地震を体感しないまま一生を終える人だっているだろうしさ。
まさかパンデミックを経験するとは思わなかったけれどさ。
知らないままの方が幸せなのかな。どうなのだろうか。
先人の知恵は様々な災害への予防策を残してくれているけれど。
知らないままでいられるならそれでもいいのかもしれない。
人間の歴史はその無知を受け入れず、知ることを続けているのだけれど。

知ることは幸せなことではない。
知らないことで不幸せになる可能性があるだけだ。
ところが今、幸せかどうかで四苦八苦することだってあるのだ。

明けて今日は9.11。
同時多発テロが起きた日。
高層ビルにジェット機が突入する映像を深夜の生放送でみた。
テロの時代に突入したと言われ、冷戦構造が終焉し世界はテロとの戦いになると言われるようになった。
世界が大きく変容した日。
手榴弾を持ち、ダイナマイトを体に巻き付けた自爆テロを狙う少年を映像で見た。

何がほんとうなのだろう。
それを見た日は嘘みたいに平和な一日だった。
僕は知ることをやめてはいけないんじゃないかと思っている。
それ以上のことが出来ないから苦しいとしても。
あの少年の目をみたときにそう思った。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。