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武芸の達人

今となっては伝説的なバラエティ番組「リンカーン」の企画だったと思う。ベテラン芸人たちがTwitterを始めるという企画があって、松本人志さんもさまぁ~ずの三村さんもそれでTwitterを始めたのは。
薄れていく記憶で曖昧模糊としているけれど当初は期間が設けられていてその後続けるかどうかは自由という企画だったわけで、その中で松本人志さんはいやだとずっと言っていたように思う。それでもあっという間に爆発的にフォロワーが集まって、あ、ちゃんと見てるんだって思うような発言やTweetがあったりして、時代のスピードのようなものをワイドナショーをやりながら自然と体感していたのだと思う。

とにかく大事なことはレスポンススピードだ。
そもそも役者でも芸人でもそうだと思うのだけれど大事なことはリアクションだ。目の前で練習してきたこととは違う事・・・それこそグラスが落ちて割れるようなことが起きた時に練習通りのセリフを言ってしまえば芸は死んでしまう。同じように練習してきたように段取りとしてグラスが落ちて割れたとしても、実際に落ちてきた時のようなリアクションを常に新鮮に引き出せるようなそんなまるで武芸の達人のような精神的に無の状況でいられるのかどうかというギリギリの勝負をしているはずなのです。
何かが起きればすぐにその場の対応をする。
そしてそれはすでにSNSの普及もあって、日常生活どころか社会的な活動の中でも重要項目になっているわけです。
そういう意味で今回のそのレスポンススピードのすさまじさをもっともっと高く評価されていないといけないなぁと思うのですよ。

二人の芸人がネット中継で謝罪会見をしたその夜にすぐに本社に行き、テレビ局に急遽生放送は可能なのかどうかを確認してちゃんと話もしてくる。テレビ局スタッフは急遽でもスタジオの用意からスタッフの準備、セットの準備、ゲストのオファーまでやるわけだし、例えば松本人志さんだって何人かにきっと連絡をしているわけです。そして深夜まで話して翌朝10時にはスタジオで生放送を始めるという。
あまりにも急すぎて、セットそれかよ!みたいなことになっちゃっているのがかえってその急なセッティングのすさまじさを物語ってた。
それもその時点で岡本社長の映像を撮影して、かつ翌日の記者会見の約束まで取り付けていたっていう。

それで今日の記者会見だったわけだけれど。
あの若そうなあんちゃんの弁護士、ぶるぶる震えちゃって。
矢面になんか立ったことないんだろうなぁ。
人前に立つというのは常に批判にさらされるという意味であり。
そこで戦っている芸人のおかげで君は安定した大企業内の弁護士をやれているのだよ。芸人は社員ではなく、商品だとちゃんと理解してたのかな?
法務担当の若造が、会社を守るためのプランを創ったのかもしれないけれど、そのリアクションスピードが現代社会においてはクソがつくほど遅かったんだって気付いただろうか?

一か月間謝罪出来ないことがどういう意味なのか理解していたのは芸人で、情報が揃うまで静観する方が良いというリスクマネジメントをしたエリート弁護士はまったくそこを理解できていなかったんだろうなぁと思う。実に眠い仕事だった。
会社と弁護士の関係と、会社と芸人の関係は別物で、そこに入っちゃうからそういう事になるんだろうなぁ。

だから震えてしまう。あれだけの記者に囲まれてフラッシュを焚かれて。
じっくりと作戦を立てる暇もなく、次々に展開して自分も立つことになったのだろうけれど、そのスピードじゃないともうダメなんだよ。即謝罪会見にしなかったツケが全部それを計算した人たちにブーメランになってた。
一か月間の意味のない時間が妄想を拡げて全部自分に返ってきてた。

まぁ、社長に関しては知らないけれどさ。
立場として実は大変だったこともあるかもなぁとかも思うし。
関連番組とかスポンサーとか謝罪巡りとかもしたはずだしね、腹が立つほど忙しかったのかもなぁとかも想像は出来る。
実際にレギュラー番組のCMは、ACの広告が目立っちゃってて色々な企業や広告代理店にも巨額の迷惑が掛かっているわけで、そういう対処をしてくれているっていう感謝は二人からは感じなかったしさ。
ただ社長さんは結局、芸人を守る前に、会社を守る弁護士を信じちゃった。
原因は芸人側にあるから理解できるような気もするけれど、もっと根本的な自分がマネージャー時代にどう接触してきたかを忘れちゃってた。
・・・だから世間はともかくむしろこれからなんだろうなぁって思うけれど。
まぁ、降格人事になるんだろうなぁ、結局。減俸じゃ収まらないな。これ。
会見で叩かれているけれど、叩かれるという仕事をやったんだなぁって思うな、おいらは。つらいだろうけれど芸人を叩かせずに自分が矢面に立ち続けるのが仕事だものね。そう思えば偉いよ。
まあ遅いけど。

「松本 動きます」からのこのスピード感。
現代においてどれぐらい大事なのか、改めて感じ入った次第。
まぁ、自分なんか小さい所でちまちまと芝居をしているわけで。
そういう意味では関係なさそうだけれど、でも関係あると思う。
現代を生きる人たちは「いま」を探している。
速報も出せるものはどんどん出していかないとだ。
矢継ぎ早に行ければ、なお良いのだけれど。

大変な時代になったよ。
その場の判断力、決断力、そして総合力。
全部が試されている。
しかもそんなスピード感のある社会の中で、ゆったりと時間を過ごすことも逆に大事になってくるんだぜ。
バランス感覚まで必要ってことだ。

まるで武芸の達人のようにね。

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