[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022]5/26 石川直の9球、北山の23球

 3連戦の3試合目。今日も生観戦の予定でチケットも確保していましたが、直前に仕事が入ってしまい、チケットはヤクルトファンの友人に譲って私は自宅で仕事の準備。途中までは合間にテレビ観戦してましたが、伊藤が逆転を許したあたりで仕事モードに。なのでそのあとの展開はネットの速報でしか確認してませんし、以下に書くのは録画を見ての感想です。

 8回表にやっとのことで1点を返し1点差に詰め寄った直後、相手に1点を追加され再び2点差に突き放されて9回表のハムの攻撃を迎えた時は、ヤクルトファンの大半は勝ちを確信したでしょうし、ハムファンは3タテを食らうことを覚悟したはずです。しかしまさかまさかの万波・アルカンタラの連続ホームランで同点に。どちらもパ・リーグのHRランキングの2位の強打者ですから驚くほどのことではないかもしれませんが、やはりこの土壇場での、それも連続の一発はすごい。どちらもカウントを取りにきた甘いカットボールを一発で仕留めたものでした。相手は今季無失点、得点圏被打率が0.00という驚異の安定感を誇るマクガフ。カットボールを狙ったというよりも、追い込まれてから対応するのは難しいから、甘い球が来たら積極的にいこうというぐらいの感じだったと思いますが、それにしてもよく打ちました。ただし打線が繋がったり、ベンチの戦略が当たったわけでもなく、2人の打者の個人技がたまたま炸裂したというに過ぎない。なのでチームとしてマクガフを攻略したとはとても言えませんが(ソロHRを何本打たれても「得点圏被打率」はゼロのまま)、ここは「とにかく積極的に、思いきり振れ」と口を酸っぱくして言ってきた監督の指導が実り、個々の選手の打力が上がった結果、この劇的な連続HRが出たということです。まずは個の力を強くする、そのチーム方針の成果が出たということですね。ただし同点に追いついてなおノーアウトでの攻撃が続いたのに、その後畳みかけるように追加点を取れなかったのは今後の課題と言えますし、そこでこそベンチワークが問われます。

 そしてこのゲーム最大の見せ場が9回裏のヤクルトの攻撃でした。マウンドは石川直也。9回表に同点に追いついたということは、逆に言えば3試合連続サヨナラ負けの可能性が出てきたということでもある。ましてヤクルトの攻撃は昨日逆転サヨナラHRを打った2番山﨑から始まり、最強のクリーンナップ山田村上に回るという(ハムから見れば)最悪の打順。山﨑にいきなりヒットを許し、続く山田の打席、1-1からの3球目の甘いストレートを打ち損じてくれたイージーなファウルフライを水野と野村がお見合いしてまさかの落球。そして山﨑の盗塁で無死2塁になった時、全てのハムファンの脳裏には3夜連続サヨナラの悪夢がよぎったはずです。しかしそこからが凄かった。フルカウントから渾身のフォークで山田を空振り三振に。2球続けてフォークを見極められてカウント1-2からフルカウントになっても、四球を恐れず3球続けてのフォークを選択し、最高の高さに落とした見事な石川の一球。これが大きかった。続く村上は当然申告敬遠で一死一二塁。そして続く中村を2球目のストレートで詰まらせ3ゴロ併殺で3アウトチェンジ。野村は難しい態勢からよく二塁にストライク送球しました。この間わずか9球ですが、あとからビデオを見返してみても凄まじい緊張感でしたね。いしちょくはトミージョン手術から復帰して、初めてと言っていい、一点も許せない厳しい局面での登板でしたが、プレッシャーに負けずよく投げました。挫折を経験して強くなったんでしょうか。これで一皮も二皮も剥けてくれれば言うことなし。

 その最高の流れがその直後の10回表の攻撃に結実します。打順は9回裏のヤクルトと同じ2番から。途中出場の先頭・清宮が四球を選びます。3球目の甘い球を見逃しての四球でしたが、なんとしても塁に出なければならない場面なので、じっくり見極めたのは正解。先頭打者が出て無死1塁と、ここまでは9回裏のヤクルトと同じ。ところがこの後ハムには幸運が3度続きます。次打者の松本の2球目に、いきなりバスターエンドランを敢行。ですが松本が空振りしてしまい、結局代走中島の単独スチールという形になりますが、相手捕手が送球できず2塁ラクラクセーフ。これが第一のラッキー。そして3球目にバントを試みるもののファウルになり失敗。これが結果的に第二のラッキーになります。目下首位打者、この日も3安打を打って絶好調の松本にバスターエンドランなんて奇襲のサインを出した是非、単独盗塁という形で走者が得点圏に進んでもなおもバントを指示した是非……は、ここで置くとしましょう。しかしバスターエンドランもセーフティバントも失敗し、なんとしても進塁打を打とうという松本の執念は、4球目の変化球をおっつけて一二塁間をゴロで抜けるヒットとなって、無死一三塁という絶好機が訪れます。バスターエンドラン、セーフティバントとベンチが指示した策がことごとく外れたものの、その2つが結果的にラッキーとなって重なり、願ってもないチャンスが訪れた。

 そして次打者野村の初球に、まさかのワイルドピッチがあって、労せずして1点をとり、1塁走者も3塁まで進む、この回3度目の幸運。つまりベンチの小細工(とあえて言います)の失敗を中島の走塁技術、松本の打撃技術、そして相手のミスが補っておつりまでくれたと。冷静にタマを見極めた清宮の選球眼も大きかった。

 さて1点勝ち越したものの、おととい昨日の悪夢を思えば、点はいくらあっても多すぎることはない。無死三塁。続く野村のヒット性の鋭い当たりは相手二塁手の好守に阻まれ打者走者はアウト、三塁走者は釘付け。もしゴロゴーやギャンブルスタートのサインが出ていたら三塁走者はホームタッチアウトになっていた可能性が高い。これもある意味でラッキーでした。一死三塁となって次打者は万波。相手バッテリーとしてはなにがなんでも三振をとりたい、そして万波としたら絶対に三振だけは避けなければいけないところ。無死満塁で1点もとれなかった昨日の悪夢が蘇ります。初球の変化球に態勢を崩され空振りした時は、とても打てそうにない感じでしたが、ファウルでなんとか粘り、4球目のインコース低めの難しい変化球に執念で食らいつき、器用に腕を畳んでレフト線に運んで、これが見事なタイムリー2塁打となります。あの球、あの打ち方でファウルにならないのが凄い。万波ってこんな凄い打撃技術があるのかと刮目した場面でした。なんか全盛期のイチローみたいな。万波個人のことを考えれば、9回表のHRよりもこのタイムリーの方がはるかに価値が高いと思いました。この場面、求められるのは特大のHRじゃなく三塁走者を確実に帰す打撃です。ただ単に馬鹿みたいにフルスイングするだけじゃなく、場面に応じてこんな器用なバッティングができる。相手の失投を出会い頭に仕留めるだけでなく、ギリギリ追い込まれた局面で決め球の難しい球を打ち砕く。その前は守備で、ライトから三塁までものすごいレーザービームを見せた場面もありましたが、もしかしたら我々はプロ野球の歴史を塗り替えるようなものすごいスケールのスター選手の誕生を目撃しつつあるのかもしれません。「右の柳田」の爆誕か????

 続くアルカンタラの一発が結果としてはダメ押しになったわけですが、9回の同点弾はライトスタンド上段、そして10回の一発はハムファンの待つ歓喜のレフトスタンドギリギリ最前列に飛び込む一打になりました。まさにおととい昨日と私が観戦していた席の目の前ですよ! なんでこれがおととい昨日じゃなく、今日なんだ……と歯がみするほど悔しかったw 現場にいた人、ラッキーでしたね。

 さて、見事な攻撃で4点リードして10回裏は北山の登場。全23球すべてストレート勝負という圧巻の投球でした。ここも過程を詳細に記したいところですが、ここまで長文を書いてきて、もう力尽きた(笑)。なので記事の引用で簡単に済ませます。

 何点差だろうが、最後は(2試合連続でサヨナラ本塁打を浴びていた)北山君にね、行くぞと。投げる前に、これだけのファンのみんなが遅くまで残ってくれて見ているから、超えて行けと(声を掛けた)。

 ――北山はこのまま守護神か?

 ◆いやいや、その辺はね、ピッチングコーチと相談しながら。今日は乗り切らせたかったから、今日は投げさせた。1点差であろうが2点差であろうが。これを乗り越えないと上にはいけないから。

(全球ストレート勝負)やっぱりもう、それしかないというか。このマウンドで逃げるような投球していたら、何にも収穫というか何の成長にもならない。たとえボールになろうが一歩も引かずに向かっていくような姿勢で投げようっていうのは強く決めていた。全球ストレートで行こうと初めは決めてなかったですけど、結果的にそうなったのかなと思います」 

https://mobile.twitter.com/nikkan_fighters/status/1529852946464505856

「昨日の夕食会場でも山田コーチから『落ち込みすぎて、こうへんかと思ったわ』とか。ブルペンでは宮西さんが『逆にお前、3日連続サヨナラホームラン打たれて新記録作ってこい。それくらいの気持ちでいけよ』と。僕の中では心強かった。温かいチームだと感謝しています」

 私は昨日の日記で「北山はファームに落としたほうがいい」と書きました。しかし指揮官が選んだのはまさかの3連投。もちろん今後の経過を見なければどっちが正解だったのかはわからない。3連投させたツケがどこかで回ってくる可能性もある。だが今回に関しては、新庄監督の激と、北山の不退転の決意が見事な復活劇に繋がったと言えます。全球ストレート勝負はもちろん4点リードだったからこそできたわけで、僅差の登板だったらそんな余裕はなかったはず。ヤクルトの打者も途中でどうやらストレートしか投げてこないと気付いたはずですが、でも気合いのこもった渾身のストレートは、それとわかっていても空振りしたり打ち損じたり詰まったりするんだなと思いました。北山も生命線のストレートに改めて自信が持てただろうし、プロ1年目で抑えという重責を任されぶちあたった壁を、なんとか乗り越えられるかもしれないと思ったんじゃないでしょうか。それでも最終打者の山﨑相手では昨日の悪夢が頭をよぎったでしょうし、繋がれれば山田村上という地獄の閻魔様みたいな最強のラスボスが待ってるという展開。よく頑張って断ち切ったと思います。


 さてこれで交流戦最初のカードは1勝2敗で終わりました。結果だけ見れば負け越しですし、昨季日本一チームとの力の差をいやというほど思い知らされたわけですが、むしろ個々の選手の成長を強く感じた3戦でもありました。短期間で若い選手をここまで成長させた新庄監督の育成能力は認めざるをえない。そしてそんな伸び盛りのチームで、指揮官の好きな奇策や奇襲がチームの足を引っ張っていると感じたことも確かです。次はホームに戻り対巨人3連戦。難敵が続きますが頑張って応援しましょう。


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