[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022]5/28 若手起用の是非

 最終回、先頭の万波が内野安打で出て、なんとかここから繋いで一矢報いてほしいと思っていたら、なんとアルカンタラに代打杉谷。しかも登場曲がハム時代の中田の登場曲。これを「素敵なファンサービス」「気の利いた演出」と思った人もいたかもしれませんが、私は馬鹿にされたような気がして、非常に不快でした。4点差あるとは言え、まだ試合が決まったわけでもない。勝つために最後の1球まで全力を尽くすのがお客さんからお金をもらうプロとしての最低限の責務だと私は思いますが、4点差でアルカンタラに代打杉谷というのはーーここで1点とれば勝てるという場面で、ランナーを得点圏に送るためにピンチバンター杉谷と言うならまだわかりますがーー戦略上は全く意味のない用兵です。勝負がほぼ決まった場面とはいえ、ほんの少し残っていた勝利への可能性をさらに狭めるような、極端に言えば「敗退行為」と言っていい。一億歩譲って代打を是とするとしても、ベンチに残っていた水野を(若手に経験を積ませるという意味で)出すべきでした。しかも中田と仲の良い杉谷が中田の登場曲と共に登場するという下らない演出。杉谷に罪はないし、彼も必死なのは理解しますが、(以下11字削除:監督あるいは球団広報は)こんな下らない演出でファンが喜ぶと思ってるんでしょうか。ダシにされた杉谷も、昨日の汚名返上とばかりに必死に食らいついて内野安打で出塁し後続に託した万波も不憫です。

(追記)
どうやら中田の登場曲を流したのは杉谷自身のアイディアらしい。なので上の文のその部分は撤回します。でも感想自体は特に変わりありません

https://news.yahoo.co.jp/articles/35ccdea67b11551d493ee70840e404cb97eb3a94

 さて、そんな後味の悪い終わり方をした今日の試合ですが、焦点は「若手の起用法」だと思います。若手を積極的に起用しチャンスを与える新庄采配の功罪。まず「功」でいうと、逆転された直後の5回裏、3点を追って、先頭の石井が2ベースで出塁、続く梅林の代打田宮が、なんとか進塁打を打って一死三塁、続く上川畑の三塁ゴロで1点をとります。逆転された直後、すかさず1点返して反撃の姿勢を見せる。とても意味のある1点でしたが、これが若手ふたりの2つのアウトでもたらされたのが大きい。もちろんヒットヒットで繋いで点をとれるに超したことはないし、それができない若手2人の力不足にがっかりした人も多いと思いますが、まだキャリアも経験も技術もない2人が必死に繋ぎ、アウトを無駄にせず決してかっこいい形ではないが泥臭く1点をもぎ取った。抜擢・起用された限りはなんとしても戦力になりたい、そういう必死な思いが伝わってきました。そして清宮の連続HRで1点差に詰め寄ったものの中田のタイムリーで再び2点差に突き放された直後の7回裏。ヒットのアルカンタラをランエンドヒットと相手エラーで2塁に進め、さらに田宮がセーフティバントで三塁に進めて、二死3塁から上川畑がタイムリーヒットを打って再び1点差に詰め寄ります。田宮のバントはサインではなく自分の判断だったようで、監督は普通に打って欲しかったらしく、ベンチで不満そうな表情を見せていました。監督から見れば田宮のプレイは消極的に映ったに違いありませんし、ここで代打も出さずお前をそのまま打席に送った意味を考えろ、と言いたいのだと思いますが、自分のできる範囲内でなんとかチームに貢献したいという田宮の必死の思いが伝わってきて、私は良かったと思います。突き放しても突き放しても追いすがってくるハムのしぶとさ、不気味さを巨人サイドは感じていただろうし、それはど派手な清宮のHRだけでなく、下位打線の若手2人の必死のプレイがもたらしたものだと思うからです。

 一方若手起用の「罪」は、ディフェンス面です。好投を続けていた杉浦が5回に一気に崩れたのは、2つのバッテリーミスと、ショート上川畑の記録に残らないエラーが原因です(持ちこたえられず一気に崩れて大量失点してしまう杉浦も、もちろんダメ)。上川畑のファンブルはイージーなゴロでしたし、振り逃げと暴投という2つのミスも、どちらも捕手・梅林が止められる球だっただけに非常に残念でした。決め球のフォークを捕手が止めてくれないとなると、投手は投球の幅がうんと狭くなってしまう。同じようなケースは、1点差に追い上げた直後の8回表、二塁走者を田宮のパスボールで三塁までやってしまい、決定的な追加点を許した場面でもありました。上川畑のエラーも含め、経験も技術も不足している若手を、育成のためとはいえ起用する弊害が、これです。

 今や正捕手として活躍する宇佐見は、この日最後まで出番がありませんでした。重労働の捕手に疲労回復のために時々休養を与えるのはいいとして、問題は控え捕手との技量差が大きすぎることです。なのでこの日の杉浦のように若手捕手の育成試合に当たってしまった投手が割を食うことになる。この日のプレイ、攻撃面でもディフェンスでも、控えの梅林や田宮が出てくるとプレイの水準ががっくり落ちる。2人が出場するのは、上沢・加藤・伊藤という3本柱以外の、杉浦や金子、ポンセや生田目といった投手の時が多い。むしろ未熟な若手や力の衰えたベテラン、日本の野球に不慣れな新外人の時に経験豊富な宇佐見を使ったほうが私はいいと思いますが(そして、加藤や上沢のような経験豊富な投手から、若手捕手こそいろいろ学ぶ点がある)、そこはまあ監督の考えとして、気になるのは清水や石川亮といった1軍経験豊富な選手をなぜ控え捕手として使おうとしないのか、ということです。開幕当初は1軍にいた清水はすぐにファームに落ちて全然上がってこないし、石川に至っては1軍に呼ばれる気配もない。もちろん現在の宇佐見に比べればプレイの水準は落ちるかもしれませんが、それでも田宮や梅林よりははるかに上のはず。もちろん育成のため若手に1軍の試合を経験させるのは必要としても、梅林か田宮、どちらか1人だけにして、せめて第二捕手は清水か石川、どちらかを使ったほうがいいのでは、と思います。競った試合で宇佐見がアクシデントで欠場したりしたら、非常にまずいことになりますからね。もしものために正捕手と遜色ない控え捕手は必要ではないのか。監督に嫌われているのか、あるいは山田バッテリーコーチとソリが合わないのか。なぜ清水や石川が1軍で使われないのか。誰か監督に訊いてもらえませんかね?

 こうした積極的な若手起用はもちろん悪いことではないし、発展途上のチームではチーム活性化のためにも必要ですが、普通の野手と違って捕手の場合、特に投手の投球やその結果に深く関わってくるだけに、使い方のバランスが難しい。それを強く感じた試合でした。


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