[野球][北海道日本ハムファイターズ観戦日記 2022] 6/10 清宮をどう育てるか

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 昨日の試合に関しては見ての通りで、白熱したいい投手戦でした。最近先発もブルペンも崩壊気味なので、ああいう引き締まった投手戦を見るとハラハラしつつ安心しますね。

 さて昨日の試合で気になったのは0-0で迎えた4回裏の攻撃。先頭の万波がヒットで出て無死一塁になり、打席は清宮という場面です。ここで清宮は初球の変化球を三塁線に見事セーフティ・バントを決めました。清宮がバント? もちろん清宮の意思ではなくベンチのサインですが、見ていたファンも、おそらく相手チームも全く予想していなかったはず。完全に意表をついた形で、もし清宮の足がもう少し早ければ一塁セーフになっていたでしょう。プロに入って初めてのバントだそうですが、おそらく高校時代を通じてもほとんど経験がなかったはずで、それをきっちり一発で決めたのは持って生まれた野球センスでしょうね。

 しかしあそこで清宮にバントさせる必要があったんでしょうか。まだ回は4回。両先発の出来から1点勝負になる予感はあったものの、あんな浅い回でクリーンナップに置いた若手スラッガーにバントさせる意味がどこにあるのか。もちろんファンも相手も予想してなかった一種の奇襲ですから、うまくすれば一塁もセーフになってさらにチャンスが広がった可能性もある。そういう意味では「何をやってくるか予測できない」新庄采配の最たるもので、驚くほどのことではないかもしれません。また、好意的に見れば、清宮に打つだけでなくバントなど小技やサインプレーもこなすオールラウンドな選手になってほしいという思いがあったのかもしれません。

 しかしファンはそんな清宮を見たいでしょうか。セーフティバントをソツなく決めたり、ダブルスチールを難なく成功させたり、さまざまなサインプレー要求に的確に応える器用な選手。上川畑や水野や細川ならともかく、清宮は将来は球界を代表するようなホームランバッターになることを期待されている若手スラッガーです。わざわざ球場に足を運ぶファンの多くは、清宮のバントなんかじゃなく、豪快なホームランを見たいんじゃないか。私だってそうです。清宮はバントを決めたあとニコニコと嬉しそうでしたが、あれは「ベンチの要求にちゃんと応えられた」という喜びでしょう。彼はまだ万全のレギュラーでもなければ誇るべき実績のある選手でもない。とにかく試合に出て、与えられた役割をこなすのに必死な若手に過ぎない。内心で「打ちたかったなー」と思っていても、ベンチの指示に応えられた安堵感の方が大きかったんでしょう。

 繰り返しますが、これがゲーム終盤で、ここで1点とればほぼ勝てるという場面ならまだわかる。でもまだ4回ですからね。しかもここ最近の清宮は打棒好調で、出塁率もOPSも(規定打席不足ながら)チーム上位。確かにランナーがいると打てない傾向はありますが、それも今後の経験次第。こういう打席を重ねていけば打てるようになるはず。なにより、守る側からすれば、ああいう緊迫した投手戦では一発長打のあるバッターが1番怖い。あそこで清宮がバントを決めて一死2塁になっても、次の打者は松本と石井。うまくタイムリーが出てもせいぜい1点止まりでしょうが、清宮がHRでも打てば一挙2点です。その確率は低いかもしれませんが、もちろん絶対はありませんから、相手はそれなりに気を遣う。間違いなく中日ベンチは「バントしてくれて助かった」と思ったはずです。つまり勝つための戦略としても疑問が残る。

 「育成第一」を謳う監督ですが、一体清宮をどんな選手に育てたいのか、そのビジョンが全く見えない。あそこでバントをソツなく決めるような選手に育って欲しいのか、0-0の投手戦で相手エースから勝負どころで豪快な一発を決めるような勝負強い選手になってほしいのか。サヨナラを決めた11回裏も先頭バッターが万波でしたが、もしあそこで万波が出塁していたら、監督は清宮にどんな指示を出していたか。興味深いですね。

 監督は清宮だってバントさせるんだぜ、というある種の全能感に酔ってる気がします。選手は駒にすぎない。選手も、監督の顔色をうかがいながらプレーしているのはいつも感じます。どこの球団でもそれは同じかもしれませんが、ハムの場合、選手はノビノビ楽しそうにやっているように見えて、実はそうでもないのかもしれません。もちろんこれは完全な憶測ですが。

 さて話題は変わります。こんな記事が出ていました。

トレードの打診をするたびに、相手チームから同じ選手を要求されるそうで「ウチがこの選手が欲しいと言ったら、向こうの球団から『じゃあ、この選手ください』という〝この選手〟がものすごく多くて(笑い)。それ(名前)は言えないけど、この選手がもう毎回この選手」

 この選手が一体誰なのか。ファンの間では早くも論議になっています。監督の発言を素直に読めば、相手からは望まれるけど、ハムとしては出したくない選手。だからなかなかトレードが成立しない、ということになります。

 相手もトレードの可能性が全くないような選手をトレードして欲しいとは言わないでしょう。ハムで言えば伊藤や野村がトレード候補だとは誰も思わない。実力があって、あるいは潜在能力があって、それを生かし切れていない、あるいはハムではなぜかあまり使われていない選手を希望するはずです。「使わないならくださいよ」ということですね。

 新庄政権下で明らかに干されている(チームに不要だと思われているように外からは見える)選手で、他球団が欲しがりそうなのは、おそらく清水でしょう。まだ若いし、捕手としてのポテンシャルもある。もちろん欠点はありますが、矯正可能とみれば需要は高いはず。一部ハムファンは清水の能力を不当に低く見ていますが、一軍経験豊富な中堅〜若手捕手は、どこだって欲しいでしょう。怪我持ちでもないし。ハムで使われない理由は新庄監督か山田コーチに個人的に嫌われているから、としか思えないわけです。でもハムの場合監督に編成権はないので、どんなに監督が要らないと思ってトレードに出したくても、最終的な決定権は球団フロントにある。どの球団からも欲しがられるけどなかなか成立しないのは、球団として、その選手は(まだ)出せないと判断してるということ。

 現在の選手構成で去年までの正捕手を放出するような余裕がチームにあるとは思えない。もし宇佐見がケガで戦線離脱でもしたら、代わりが務まるのは清水か、せいぜい石川しかいないのです。そんな選手を出せるわけがない。フロントがマトモなら、少なくとも今シーズン中の清水のトレードはないはずです。一軍ローテクラスの先発投手でもとれるなら別ですけどね。

 落合監督は就任一年目は既存の選手を使い、その力を見事引き出して就任初年度から優勝を決め、同時に選手の力量や可能性を見極め、その年のオフに大量の選手を入れ替えましたが、新庄監督は早くもトレードを画策しているようです。つまり現状の戦力で足りないところを他球団の選手で手っ取り早く補強したいと思っているわけで、それは「育成第一」という言葉とはちょっと違いますね。もしトレードがあるとすれば交流戦明けにセ・リーグと、というのが相場だと思いますが、さてどうなるでしょうか。

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