祖母、肝臓ガン、末期、幸せな最期ってなに?②「看取りの教科書」がほしい

祖母が末期の肝臓ガンだと知らされた。気持ちを整理するためにこれを書く。

告知から数日。気持ちはだんだん平常に戻りつつ、突発的な上り下がりを繰り返している。

真夜中、特大のホチキスの針を打ち込まれたような、バチン、バチンという痛みを喉の奥に感じて飛び起きたら、それは自分の心臓が激しく波打つ衝撃だった。目が覚める直前、ぼんやりとした覚醒状態の中、頭の中にあったのは、おばあちゃんが死ぬことへの恐怖だった。先々週に実家に帰った時、「お腹が痛い、痛い」と、カブトムシの幼虫みたいに小さくまるまって、血の気がうせて真っ白になった、おばあちゃんの姿が、ずっと目の前にちらつく。

朝まで待って、母に電話して「今日帰ろうか」と聞くと、「これから杉並区の人とか、ターミナルケアの担当の人が家にたくさん来るから、しばらくしてから帰って来てよ。あんた帰って来たら、おばあちゃん、あれやこれや世話しようとして起き上がるから、大変だから」と言われてしまった。なんとなく「戦力外」と言われているようで悔しい。まあ、実際そうなんだけど。。。

しかし、思い出すのはここ半年くらいのことだ。

私はずっと忙しくて、おばあちゃんの電話をなかなか取らなかった。

おばあちゃんは、電話に出るたび、「身体大丈夫か」「インフルの予防接種受けなさい」とか「ちゃんと食べろ」とか、口うるさい。上半期、本の出版やら、ハワイ出張やらでノリノリだった私は、おばあちゃんの電話が枷になりそうな気がして、まともに取り合ってなかった。電話をかけてきても、友達と遊んでいるときは出なかったり、また、着信に後で気づいても、どうせ心配してのことだろう、と、かけ直さなかったりした。

これが、もし「お腹が痛い」とか「家に帰って来てほしい」みたいな電話だったら、取ったと思う。でも、おばあちゃんは自分の要望を決して言わないのだ。いつも、私と母のことを心配している。心配がうっとおしくて、実家があるのに、家を出ている側面がある。

なんで、もっとおばあちゃんの電話を取ってあげなかったんだろう。忙しいと言ったって、フリーランスなんだから時間は無限にあり、決して、電話に出られないわけじゃなかったのに。あの時、おばあちゃんは、もっと、私の声が聞きたかったのだ。心配は口実で、本当は、私ともっとコミュニケーションしたかったのだ、きっと。なのに、なんで・・・

ああ・・・


と、後悔したのは実際は0.2秒くらいで、(私は過去に起こった事に関してはドライなのだ)

代わりに、「じゃあ、これからおばあちゃんが、最期まで幸せな時を過ごすには、どうしてあげたらいいだろう?」というふうに、すぐに気持ちを切り替えていた。

しかし、具体的に看取りって何をすればいいんだろう。

どうしたらおばあちゃんが一番幸せな時間を過ごせるんだろう。

知るための検索ワードすらも、今の私には分からない。

とりあえず「看取り」で検索すると介護施設のページがたくさん出てくる。

Amazonで「エンディング」と検索すると、エンディングノートの本はたくさん出てくる。けど、本人用だ。

「看取り」で検索すると、「ラストプレゼント 家で看取るしあわせ」とか、「こころを看取る―訪問看護師が出会った1000人の最期」とか、パステルカラーで、可愛らしい、エモい感じの表紙の本がいっぱい出てくる。まじか。こんなの読んだ事ないぞ。

とりあえず、エモすぎなさそうな、この2冊の本を買うことにした。


でも、まあ、ハウツーはさておき、一番大事なのは、本人の希望を知る事なのだと思う。

うちのおばあちゃんは大正世代なのだが、この世代の人ってどうにも遠慮がちで、何かしようとしても

「いいよいいよ」と言って希望を言ってくれない。

欲しがりません、勝つまでは、がDNAにまで刷り込まれているのか。「欲しがります、負けたって」の椎名林檎世代だから、その感覚は分かんないぞ。

「何か食べたいもの、ある?」

「何か欲しいもの、ある?」と何度聞いても、

「いいよいいよ、おばあちゃん、なんにもないよ」と言って、はばからない。

この世代の本音を聞き出すテクがあったら、知りたい。

とりあえず、昨日は京都に出張だったので、おばあちゃんの好きな柿羊羹と栗羊羹を死ぬほど買って来た。

新幹線まで時間があったので、駅前の伊勢丹でブラブラしていたら、シニア向けのアクセサリー売り場と、帽子売り場が目に入った。

おばあちゃんはお洒落で、今もデパートでしか服を買わない。自分好みでないものは身につけないので、私が買っても、あまり意味が無いかもしれない・・・と思いつつ、おばあちゃんに似合いそうな、ワインレッドのカシミアの帽子と、ラピスラズリの濃紺色のイヤリングを買った。

おばあちゃんはいつも、出張の土産を買って持って行くと、「いいよ、いいよ」と言って過剰につっぱねる。だから、とりあえずクリスマスプレゼントって口実で渡す事にしようと思う。

4日前までは物欲の塊だったのに、今は、自分のために何かを買いたいという気持ちがまるで湧かない。

代わりに、おばあちゃんのためなら、いくらお金を使っても構わないと思っている。


と思っていたら、誕生日が近いので公開していた(普段、物欲の塊なのですみません)Amazonの欲しい物リストの中から、友達が沖縄県産ドラゴンフルーツ1kgをプレゼント郵送してくれた。やったー!

ドラゴンフルーツを山盛り持って、おばあちゃんに会いに行こう。



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ありがとうございます。

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小野美由紀

文筆家。著書に銭湯を舞台にした青春小説「メゾン刻の湯」(2017.2)「傷口から人生。メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった」(幻冬舎文庫、2015年2月10日発売)絵本「ひかりのりゅう」(絵本塾出版、2014)など。http://onomiyuki.com/

コメント1件

看護師をしています。看取りの教科書をnoteで書きたいと思っています。看取りのための検索ワードすらわからないというのが印象的でした。力になれるようなコンテンツを作っていきたいと改めて思いました。ありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
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