見出し画像

詩・無題

息を切らせて坂を昇る人がいる
声を殺して泣いている人がいる
手首を切る代わりに壁を作ってとじこもる人がいる
この肉体を・この行為を
じぶんと名付けたならば
いくつかのことがあきらかになり
同時にいくつかのことを
あきらめることになろう
私と世界とのはざまに
亡霊のように居つづける
まだ名のつかないいくつかを
取りこぼす事になるだろう

空に向かって手をかかげている
どちらも・空も・腕も・この世界に同時にあるものなれど
思い通りにならない歯がゆさは
距離と反比例
他人の肉体よりも自分の方が遠い
寸前に茂る葉の一枚一枚にも
命はたっぷり照り返っているというのに

ありがとうございます。