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「だからね、男は美味しく食べてあげないといけないんだよ」

SFマガジンの六月号に掲載された小説「ピュア」が、早川書房さんのnote公式アカウントでも無料で全文掲載され、めっちゃバズる。

とても嬉しい。

2万4000字もある、しかもSFの小説がここまで読まれると思っていなかった。

イラストを描いてくれた佳嶋先生や、掲載までお力添えいただいた編集者さん、またSFマガジンさんの懐の広さもあってこそだろう。


宮木あやこさんの「花宵道中」を読んで以来、美しく、官能的で、かつ女性の強さを描いた小説をずっと書きたいと思っていた。

それで、4年ぐらい前に、初めて小説を書くことになった時、小説家の西崎憲先生が主催する「世界小説化計画」という池袋カルチャーセンターの講座に行ったのだが、3ヶ月の講座の最後に一本、短編を書くことになり、その時に書いたのがこの作品の元になる話だ。

それは新潮社の「女による女のためのR18文学賞」に応募して、一次選考に落ち、その後何回か改稿して、今の形になった。

モチーフは「人魚姫」で、種族の異なる男と女がどうやって愛を成立させるか、というお話。

けど、私は元の「人魚姫」が嫌いだ。女が不幸になりすぎてるし、王子はやすやすと浮気する。

「お前!何、簡単に泡になっとんねん!津波でも起こして復讐しろよ!」とつい主人公に怒ってしまう。

だから、人魚姫が自力で幸せになる話を書きたかった。


作中で「体の構造的には太古の昔から"女が男を食ってる"ってことには変わらないじゃん」ってセリフがあるけど、これは、物書きになる前、AV監督の二村ヒトシさんのAVの撮影現場を見学させてもらった時、主演女優さんが控え室で言っていた言葉だ。

「だからね、男は美味しく食べてあげないといけないんだよ」って。

(その撮影も、女優さんが男性器に一切触らずに男性をイかせるっていうけっこうコアな内容だった。私以外にもたくさん女性の見学者がおり、いろいろと凄かった。)

その時は「ほへぇ」と思っていたけれど、まさか小説の中でそのセリフを使うことがあるとは思わなかったな。

あの女優さん、元気かしら。

とりとめもなく作品の裏話を書いたけど、これからも、女性性の楽しさとか美しさとか強さとか、そうしたものを書いてゆきたいと思う。醜さも含めて、美しいのだ。

現実的には嫌なニュースとかもあり、ジェンダーの押し付けられた役割からの解放も過渡期で、いろいろと戦わなければいけない理不尽なこともあるけれど、それはそれとして、私は自分が属する「女性」という性をけっこうに愛していて、その愛しさをどんどん表現してゆきたいなあ、と思う。

男性という性への愛しさも、もっと表現してゆきたいんだけど、そっちの方はまだまだ、修行(?)が必要だなあ……。

瀬戸内寂聴さんくらいの年齢になったら、書けるのかも。






ありがとうございます。