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漬物の焼飯

僕の若い頃からの愛読書のうちの一冊、池田満寿夫著『男の手料理』(1989年初版、サンケイ新聞連載時期は1985年から1986年)に登場する料理を実際に作ってみようシリーズの第5回。また半年近く間が空いてしまった。今回は漬物の焼飯を作ってみることにする。

漬物の焼飯は昨年のもっと早い時期に記事を書こうと思っていた。それがこんなにずれ込んだのは、とにかく自分の納得の行く漬物の焼飯が出来なかったからである。それに尽きる。何度も何度も作って食べてみては、どれも一長一短で決定打が出ない。その逡巡具合も含めて読んで戴ければと思う。

漬物の焼飯№1

まずは漬物の焼飯№1。池田満寿夫先生の文章にあった通り、3種類の漬物を用意して焼飯にしてみた。僕が選んだのはしば漬けたくあん青しその実漬けの3種類。彩り優先。先生のセレクションは、高菜野沢菜漬けシソの実漬けであった。更に先生は焼飯に一番適しているのはしば漬けと書いておられるのだが、その3種類のなかにそれが入っていないのもどうかと思って、僕なりのセレクションで作ってみた。追加の味付けはせずに、ご飯と漬物の味だけで作るのは池田満寿夫先生の手法を踏襲。ウマウマウー。なかなかウマイのであるが、しば漬けたくあんは一緒くたにするとお互いの主張が噛み合わない感じがする。青しその実漬けは我が道を行く味で、とりまとめもしないし孤立もしない、不思議なポジションにとどまる。結果的に散漫な印象の焼飯となってしまった。漬物とご飯の世界が遊離している。これは改良の余地があると思い、試作を続けることになったのであった。

漬物の焼飯№2

そして漬物の焼飯№2には岩下の新生姜野沢菜漬けをセレクト。どうも3種類と云うのは要素が多くて散漫になるような気がしたからである(池田満寿夫先生ごめんなさい)。細かく切って、ご飯と一緒に炒めて出来上がり。簡単に出来る。そしてウマウマウー。これはなかなかウマかったのだ。でもこれは池田満寿夫先生の云うところの「漬物とご飯の関係のわびしさ」に欠けるのだ。岩下の新生姜の味わいが華やかでわびしくない。野沢菜漬けだけを使えばそれが叶うのかも知れないが、それだと野沢菜の焼飯になってしまう。もう少し考えてみることにした。

漬物の焼飯№3

ふと自分にとって馴染みのある漬物は何だと思ってスーパーマーケットの漬物売り場を物色していたら東海漬物のきゅうりのキューちゃんを見つけた。これを使ってみたのが漬物の焼飯№3ウマウマウー。ウマイのであるがこれはわざわざ焼飯にすることもない。白飯とキューちゃんで良かろう。その昔は冷飯と云うものに馴染みがあった。今のように保温ジャーが当たり前の時代ではなかったのだ。保温ジャーはあったけれど、すぐにご飯が黄ばんでしまって(それはお米の質の問題もあっただろうが)冷飯で保存しておいた方がご飯が美味しく保てるのでそうしていたとも考えられる。冷飯にキューちゃんでお茶漬けなんてのを昔良く食べていた覚えがある。焼飯にするとちょっと油脂の分だけトゥーマッチか。きゅうりのキューちゃんはお茶漬けがよろしい。次行ってみよう。

漬物の焼飯№4

福神漬けも漬物の一種ではあるので、いつも添え物の福神漬けをもう少しクローズアップするために、ここは漬物の焼飯の手法でどうだろうかと考えて作ったのが漬物の焼飯№4。どんどん脱線しているようだが気にせず進む。ただ福神漬けの味だけで焼飯と云うのもどうだろうかと悩んでいたら、ちょうどジャワカレー味付けカレーパウダー中辛なんて便利そうなものもあったのでカレー味にしてみることにした。福神漬けとご飯を炒めてカレーパウダーで味付けして出来上がり。ウマウマウー。まあまあだ。これこそがまあまあと云う表現がピッタリの出来栄えである。気になった方は作ってみてほしい。本当にまあまあなものが出来上がる。やはり福神漬けは添え物のポジションにいてこそその実力を発揮するのだと実感した。適材適所。

漬物の焼飯№5

池田満寿夫先生のイチオシのしば漬けオンリーで作ってみたのが漬物の焼飯№5。京都土産のしば漬けを使って、彩りも鮮やかな出来栄えとなった。ウマウマウー。かなり酸っぱい。炒めることが要因なのか、元々が酸っぱかったのか、その酸っぱさがかなりクローズアップされた印象。塩味や旨味を加えていないので、どうにも素っ気ない感じが否めない。これまでに作ったものでも味の素をちょっと加えればピタッとまとまったとは思うのだが、そこは「調味料はなくてもいい」と云う先生の言葉を守って行きたいと思う。ただやはりしば漬けもお茶漬けがお勧めである。

漬物の焼飯№6

キムチは漬物である。キムチを使って漬物の焼飯№6を作った。ウマウマウー。先生これはウマイですよ。これで決まりですよ。でもよく考えたらこれはキムチチャーハンである。かなり脱線した。本筋に戻ろう。

漬物の焼飯№7

ここでふと気が付いたのだが、池田満寿夫先生が作られた高菜野沢菜漬けシソの実漬けの焼飯を作っていないではないか。これを作らずして再現も何もなかろう。これに気が付くのにかなりの時間を要してしまった。色々と自分勝手にアレンジして遠回りするのは僕の厄介な性分である。まあいいか。とにかく漬物3種を揃えた。

漬物の焼飯№7

ちょっと面倒だが高菜野沢菜を刻んだ。ずぼらな僕はどうも包丁が苦手である。一応ギタリストであるので包丁で指を痛めるなんてことは避けたいのでどうもおどおどしながら切ることになる。それがまた危ないのであるが。実際何度か痛めて後悔したことが何度もある。今後も気を付ける。

漬物の焼飯№7

池田満寿夫先生の作ったのに忠実な漬物の焼飯№7の完成である。とてもグリーンな仕上がりとなった。

漬物の焼飯№7

追加の味付けはナシ。漬物の味だけで勝負。イタダキマス。

漬物の焼飯№7

ウマウマウー。ああ、これはウマイ。肝は高菜漬だ。高菜漬の風味が油と相性が良く、それで全体がぴったりと収まるのだ。そして高菜漬の塩味が絶対不可欠であった。味を足さなくて良いと云うのは高菜漬の功績である。ここに至るまでに高菜漬を使っていなかったのは痛恨の極みである。高菜漬ありがとう。

漬物の焼飯№7

ウマウマウー。高菜漬の風味と塩味があれば、青しその実漬けも素っ気なく感じたりはしない。野沢菜も含めて全体がしっくり馴染む。高菜漬の包容力、そして調整力に感心すること頻り。ヒジョーにウマイ。漬物の焼飯ブラボーである。

漬物の焼飯№7

ウマウマウー。一つだけカスタマイズしたことあった。炒め油にごま油を忍ばせたのであった。これもウマく全体がまとまった要因の一つであろう。ごま油はその存在を主張することもなく、見事に調整役に回ってくれた。漬物の焼飯、もっと色々と組み合わせを考えたが、それはまた時間のある時にゆっくりやろうと思う。男の手料理の再現もまたやるのでお楽しみに。

男の手料理

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