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ギブソン・ファイアーバード

僕がクレイジーケンバンドのステージにて現在もメインで使っているギターがギブソン・ファイアーバード(Gibson Firebird 1976)。アメリカ建国200周年記念モデル。横浜のニチイ(現在ビブレ)のB1Fにあったヤマハ横浜店(現在はユニクロとGU)の壁のディスプレイに長いこと吊るされてあったギターだった。

ギブソン・ファイアーバード

僕は高校生の頃から横浜のヤマハに出入りしていて、スタジオで練習したりコンテストに出場したりしていた。お店の人達と仲良くなるにつれて、僕がジョニー・ウインターとかが好きと判ると、ファイアーバードを強く薦められた。「のっさん(当時からそう呼ばれていた)買うっきゃないんじゃない?」と云われ続けて、20歳くらいの時に遂に購入を決意した。当時35万円くらいしたと思う。漢の10回ローンを組んで、バイト代の殆どをそのローンに突っ込んだ。我ながらなかなか根性があったと思う。さて、買ったは良いけれど、当時僕はフェンダーのストラトキャスターをメインで使っていて、ファイアーバードはその取り回しの悪さもあって、あまり使用しなかった。宝の持ち腐れになる寸前だったかと思う。

ギブソン・ファイアーバード

奇妙な縁があって、ドラムの廣石さんに誘われて(横山)剣さんとバンドを一緒にやることになった時、自分のギターを色々と持って行って(とは云え当時は4本くらいしかなかった)どのギターが好きかと剣さんに訊いてみたら「ファイアーバードがイイネ」と云われて、剣さんと一緒に演奏する時はファイアーバードがメインになった。その後暫くはまだフェンダーストラトキャスターも併用していたけれど、クレイジーケンバンド結成にあたってファイアーバードが完全メインとなった。購入から40年余り、クレイジーケンバンドではかれこれ25年、ファイアーバードを使い続けている。

ギブソン・ファイアーバードとエクスプローラー

ファイアーバードはかなり使いにくいギターである。持った時のバランスが非常に悪い。ヘッド側が重たいので、肩から提げているとヘッドが下がってしまう。なので演奏中は左手でネックを常に持ち上げるようにしていないといけない。または右腕でボディを挟んで固定することもある。さすがに最近はもう使い慣れてしまってあまり弾きにくさを感じないが、一時期はあまりステージに出さなくなっていた。エクスプローラーは何となく似ているが持った時のバランスは格段に良い。音も大きくて派手なので、クレイジーケンバンドが大きなステージに出るようになってからは、エクスプローラーの出番が増えた。エクスプローラーはちょっと重たいのが難点。どんなギターにも一長一短がある。

ギブソン・ファイアーバード

昨年(2022年)にかなり長期に渡ってのメインテナンスを神戸のリードマン(楽器店)で施してもらい、見違えるようにリフレッシュした。ギターは木で出来ているので曲がるのは判っていたが、このファイアーバードはどうやら捻れていたようだ。それで出にくい音があったり、チューニングが合わなかったりしていたようだ。その捻れも曲がりも直してもらい、ネジなどの金属パーツも出来る限り一新してもらった。そして昨年末より見事メインギターに復帰。剣さんも「やっぱりファイアーバードがイイネ」と喜んでくれた。やっぱりファイアーバードなんだな。そう深く思った次第。

ギブソン・ファイアーバードとジェリー・ジョーンズ・ギターシタール

クレイジーケンバンドのレコーディングでは、僕は9割くらいファイアーバードを弾いている。ステージに出さなかった時期も、レコーディングではファイアーバードを使っていた。なのでクレイジーケンバンドのサウンドとファイアーバードはかなり密接である。デビューアルバム『Punch! Punch! Punch!』から最新作『世界』に至るまで様々な曲でファイアーバードを使ってきた。手に馴染むどころかもう一心同体に近いような気もする。

ギブソン・ファイアーバード

一本だけでは不安なので、サブになるファイアーバードを探していたこともある。ところがである。中古楽器店で同じ建国200周年記念モデルに何度か出合って、その都度試奏をさせてもらったのだが、音が全く違う。ファイアーバードは元々キャンキャンした音のギターで(なんたってサーフサウンド用に開発されたギターなんですもの)僕のファイアーバードみたいにちょっとジャジーな鳴りなんて全くしないのだ。出合ったのはカチカチでキャンキャンのファイアーバードばかり。僕のファイアーバードは僕がそんな風(と云っても判りづらいでしょうが)に育ててしまったので特殊なこの一本になってしまったようだ。きっとこんなファイアーバードはどこにもないのだ。だからこの一本を大切に使おうと思う。これからもずっと。

ギブソン・ファイアーバード

もう何度も話していることだけれど、20世紀の終わり頃、もうクレイジーケンバンドも始まっていた1998年だか99年だかの年末も押し迫った某日。僕はこのファイアーバードを電車の中に置き忘れたことがあった。リハーサル(友人のバンドに参加)で高円寺に行き、ファイアーバードを持ったまま朝まで飲んで始発の中央線新宿方面行きに乗った。席に座ってすぐ寝てしまい、ふと気が付いたらそこが千駄ヶ谷駅。何を思ったのか僕はそこでホームに降りてしまった。自分がどこにいるのか何をやっていたのかまったくホワイトアウトしてしまっていた。あ、ギター、と思った時には列車のドアは閉まり、電車は発車してしまった。ファイアーバードはどでかいハードケースに入っていて、ドア脇の手すりのところに立てかけたままだった。えらいこっちゃ。すぐに改札口の駅員さんのところに行ったら「忘れ物とかは新宿駅の駅務員室(駅長室であったか)に行ってください」と云われ、すぐに新宿駅に移動。駅員さんに事の顛末を説明すると「見つかったらお知らせしますからそこの(パイプ)椅子に座って待っていてください」と云われ、落ち着かない気持ちのまま座って待った。誰かが持って行ってしまったらもう二度とファイアーバードを弾けない。ああどうしようと暗澹たる気分になりつつも、ストーブで部屋の中が暖かいのとまだアルコールも残っていたのでうとうとしているうちにぐっすり寝てしまった。一度起きたらもう2時間以上経っている。もうどうにでもなれ。とにかく待つしかない。そこからまた2時間ほど寝た。すると突然駅員さんに起こされた。「お客さん、お客さん、お客さんの忘れたの、高尾にある高尾」。ああ、やった、あったんだ、見つかったんだ、万歳、万歳。僕のファイアーバードは電車に乗ったままラッシュアワーの乗客の誰にも持って行かれずに高尾まで行ったようだ。「高尾駅のね、逸失物預かり所に行って受け取ってくださいね」。ありがとうございます。本当にありがとうございます。それにしても高尾か、遠いな。中央線に乗って高尾に向かった。もう時間は午前10時過ぎ。ファイアーバードが見つかってホッとしたのと、座席が温かいのも重なって、中央線の車内でまた寝た。今度はぐっすり寝た。起きたら高尾から折り返して立川駅にいた。こりゃいかん、高尾に戻らねば。電車に乗ったらまた寝てしまった。そしてまた立川駅に戻ってきてしまった。これは本当にいかん。もう寝ないぞと心に決めて電車に乗ったら豊田止まりの電車。寒風吹きすさぶ豊田駅のホームで高尾行きの電車を30分ほど待って、ようやく高尾駅に降り立つことが出来た。改札脇の逸失物預かり所に行って事情を説明したら係員の方が奥の方に行ってファイアーバードの入ったケースを出してきてくれた。「お客さんダメだよーこんな重くてデッカイの忘れちゃあ」すみませんでした。本当にありがとうございます。高尾から電車に乗って、ファイアーバードが戻ってきた安心感に包まれて横浜に帰ってきたのでした。ああ良かった。

ギブソン・ファイアーバードとCOMBAT「パンジー」とギターシタール

こんなに長々と書くつもりではなかったが、ファイアーバードにまつわるお話は大体こんな感じ。昨日始まったクレイジーケンバンドワールドツアーもメインはこのファイアーバード。それとパンジーとギターシタールとエスクプローラーで行こうと思う。2024年の3月まで続くツアー。元気に楽しく務めようと思う。グリグリバリバリがんばります。

末永くがんばりますのでご支援よろしくお願い致します♫