#5 Uberドライバー Amit
シカゴ オヘア空港に降りる。気が滅入る寒さだ。
「パキスタンから24年前にアメリカにきた。家族親戚、ほぼ全員だよ。
もともとは、凄く穏やかな民族でね。ムスリムの本来の良いところは、旅人も家に招いてご馳走したりね。困った人を助けて、平和に生きることは、俺たちにとって、とても大事なことだった。食べることが大好きな民族さ。
でもね、国はとても変わってしまった。サウジアラビアに、セクトがある。ワハーブって聞いたことあるかい?彼らが70年代に活動を初めて、ムスリムの定義を変えてしまった。政治家はオイルマネーに流されてさ。
知らない人が来ても、ワハーブだったら困ることになるから、いつかしら、旅人を家に招くなんて、自殺行為になってしまった。
人が人を信じられなくなると、国は壊れていくんだよ。あっという間だった。
今でも時々パキスタンに帰るよ。旧友に会うんだ。北部は驚くほど綺麗なところなんだよ。国は観光客を呼ぼうと動いているけどね。いつか君にも訪れてほしいな。
アメリカはね。誰も助けてくれないけど、ほっといてくれる。何を信じようが、悪いことさえしなければ、自由でいられる。少なくとも、そのことだけは信じられるんだ。
日本は素晴らしいじゃないか。君たちは戦争を永久に放棄して、軍隊を一切持たないんだろ?」
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