多才な人々の成功における反抗心の役割

はじめに、
このnoteでは、多才な個人が成功を収める過程において反抗心がどのような役割を果たすかを探求したいと思います。具体的なケーススタディを通じて、反抗心が彼らのキャリアや人生の選択にどのように影響を与えているか、分析を試みます。

甲田まひるという衝撃


先週の日曜日、ジム帰りに車を運転しながらJ-waveでクリスペプラーさんのOTO★AJITOを気持ちよく聴いていたのですが、ゲストの甲田まひるさんがぶっ飛び過ぎていて、ガツンとやられてしまいました。

5歳でピアノをはじめ、8歳でジャズにハマるという早熟さ。耳コピでビバップを弾き始め、16歳でジャズピアニストとしてメジャーデビュー。

さらに、小6でインスタにハマって、ファッションインフルエンサーへ。20歳でポップミュージックに転向してシンガーソングライターになり、最近は映画女優業に進出。という尋常じゃないマルチタレントさんぶりです。

新虎トンネルを運転しながら、早速ぼくの人物プロファイラーの性がむくむくと出てきました。この人、なんでこんなに多才なのかなぁと、ラジオに引き込まれていきます。

まず、あちこちのエピソードが過剰というか、マニアック(耳コピしたアーティストは、バド・パウエルとか、セラニアス・モンク)なことから、彼女が異様なハマり性だということはすぐにわかるところです。好奇心が特に高い人は、すべからくハマり性で、それは高ポテンシャル人材のシグナルだと言えます。でも、他になにかありそうです。

ひき込まれて、トークを注意深く聴いていたのですが、「ああ、これか」と腹に落ちた一言がありました。

甲田さんが、影響を受けた音楽についてトークされていたのですが、最初はジャズ・ヒップホップクロスオーバーの、クルックリン・ドジャーズ。マニアック。でもこれはジャズの延長という文脈があるので、まだわかる。次に、ポップミュージックのアリアナや、リアーナとのことで、今どきの女子って感じで、これもわかる。

しかし、その次にもってきたのが、甲本 ヒロト。まじかよ、まひるさん

「わたしは、わりと中身はもう、すごい反抗心というか、強いかもしれない。もともと。ピアスとか小学生であけちゃえとか、髪染めたりとか、色々していたので。やっぱ、そういう時の自分に、すごいハマって、ブルーハーツが。よりどころ!みたいになってました」

Sapporo Beer Otoajito 1/6

ギャルっぽい喋り方で、さらっと反抗心って。
エッジが立ちすぎて困りますね。

まず、結論。

ぼくは多くのリーダーたちとお会いする中で、体感値として、反抗心は、新しい可能性を切り拓く力になりうる心のメカニズムだと考えています。さらにいうならばそれは、一流と、超一流のリーダーを分けるキワの一つだと言えるのではとさえ、ぼくは考えています。ここでは、多才な人々の成功過程での反抗心の影響を探ってみたいと思います。

反抗心のケーススタディ

ぼくが好きな友達のSさんという、現在、音楽業界の大手で役員をされている方がいます。もともとは、いいところの家の出らしく、青年期を90年代初めのアメリカ・テネシー州で過ごされていたそうです。そこでは強烈なアジア人差別との闘いがあったそうで、帰国後、彼は池袋のチーマーのNo3となり、大学をドロップアウト。パーティ三昧の日々を送っていたそうです。

しかし、ある日このままではダメだと悟り、中国に留学します。卒業してサラリーマンとして真っ当な人生を歩むべく、エンタメ最下層(自称)の放送系の系列企業に就職しました。そこから、現職の総合エンタメ企業に転じ、数々の功績を残し、竜のごとく出世していかれました。

「なんでそんなに偉くなれたの?」と聞いたことがあるのですが、彼がいう話のエッセンスを集約すると、それはまごうことなき反抗心でした。

  • 親に甘やかされたと思われたくない。

  • 外人に負けたくない。

  • 学歴エリートに負けたくない。

こういう種類のエネルギーは強いし、持続性が高い。今もSさんは、自分が育てた事業で得た地位や権力にこだわらず、また新たな事業領域に挑戦にしておられ、実にかっこいい生き方をされています。

反抗心が創造性、自己表現、新たな選択を促すことを分かっていただけたかと思います。一方で、反抗心はリスクも伴います。

Fincというスタートアップの元創業者、溝口さんは興味深い例です。社長時代にお会いした時から、ご自身の反抗心の強さを原動力としてよく口にされていましたが、ややエキセントリックな部分があったのでしょうか。創業した会社から退任に追い込まれます。

その次、本田圭佑さんと組んで、インキュベーションビジネスを起業されましたが、ここでは早々にクーデターで追放され、割と大きなニュースとなりました。普通だったらもう表舞台から逃げてしまうと思うのですが、今度はエンタメ業界でCEOとして活躍されています。格闘のリングにものぼり、本もだされて、とにかく元気ですごいなと思います。

彼が今日現在「成功者」だとは世間的には言い難いかもしれません。モラル面の問題が、かつてあったことを擁護するつもりはありませんが、客観的に分析するならば、溝口さんは「個」としては、そのリスクの取り方、活動量、多彩さを考えるに、やはり超一流の才なのでは。と言えるかと思います。

成功とは、単純に職業的な成果や社会的地位の獲得に限定されるものではなく、個人の創造性、革新性を含む、広い概念として捉えられるべきではないでしょうか。

しかし一方で、溝口さんは、社会との適合という面において、反抗心のネガティブの側面に食われ、足をすくわれたことは、間違いなく言えるでしょう。

それはプラスなのかマイナスなのか

反抗心は、しばしばネガティブな感情と見なされがちですが、Graham(2008) の研究によれば、ネガティブな感情の表現は、関係構築や親密さの増加にとってプラスとなることが示されています。

また、Francesca Gino の著書 "Rebel Talent" では、規則を破ることが職場や人生で有益であること、反抗心がリーダーシップやイノベーションに貢献する可能性が論じられています。これらの視点は、反抗心が個人の成功においてプラスの役割を果たす可能性を示唆しています。

じつは、ぼくがお会いした超一流の経営者たちは、そこまで分かりやすくなくて、「ほのかな反抗心が見え隠れする」程度感の方が多かったと思います。体感的には組織の上部階層に行けばいくほど、反抗心を自分の中で、うまく飼い慣らしている人が多いと言えるかもしれません。

分かりやすい例として、イケている跡取りさんからは、そのほどよい塩梅を学べることが多いように思います。

10年ほど前になりますが、数度ミーティングをご一緒させていただいた、サントリー創業家の鳥井信宏さん(当時はサントリー食品の社長)からも、そういった、さらりとした反抗心の匂いを感じたことがあります。同類の匂いはトヨタの豊田章男さんのコメントや行動からも感じられます。

「ほのかな」というのがポイントで、いい大人になっても、反抗心バリバリでそれが強く出過ぎている人は、さすがに周囲との軋轢が出がちです。そのネガティブな力を、ポジティブ変換せず、そのまま使ってしまう人が、組織人として上の立場に立つと、あらぬ方向に経営判断が飛んで行ってしまうリスクもあるように思います。正直、前述のSさんが今のままで、あの大組織のCEOになるかというと、そうではないかもしれません。トップとして選ばれるには、やはりどこかに正統性というか、安心感は必要なんですよね。


ここまで考察してきたように、反抗心は創造的な力を生むというメリットがある一方、ネガティブな方向に振れがちで、そうなった場合は人生を壊す可能性すらあります。そのトレードオフの状態を乗り越え、昇華することができた成功者の、分かりやすい例として、大谷選手はいいケースだと考えます。

少し余談ですが、大谷選手、実はぼくの通っているアシックスのジムに、オフの時によくいらしています。勝手に心の中で「マイ・ジム友」認定させていただいています(笑)

ジムの中では、ゾーンを分けてトレーニングをされていますので、話しかけたりはできないのですが、こちらもストレッチしつつ、じっくり拝見することができます。

長い練習の間、ずっと、通訳の一平さんが近くにいらっしゃるわけですが、大谷選手はストレッチをした後マットを丁寧に拭いて、自分で丸め、ネットで区分された一般ピープルゾーンまで出向いて、マット類が整理されているところに戻しにいき、また練習に戻るんですよ。脇においやるとか、一平さんに「片付けて」とポンと渡すわけでなく。当たり前のことを自分でちゃんとやるその姿、素晴らしくないですか。

つい興奮して話が横道にずれてしまいました。
大谷選手、まさに誰からも嫌われない、明るくて素直なスーパースターですよね。最近のMVP受賞コメントでも「反骨心みたいなものは正直なかった」と話されています。親御さんもインタビューで、あの子は反抗期はなかった。と話されています。となると、どうやら反抗心とは無縁ぽいな。と片づけるのは簡単ですが、はたしてそうでしょうか。

ぼくの友達に、生粋の野球オタクのプロサッカー選手がいます。彼は大谷選手のことをこう評していました。

「大谷さんのバント安打とかみると、結構、反抗心みたいなものは強い人なんじゃないかなと思うんだよね。
反抗心がないと、無理だ無理だと言われていた二刀流を、やらないんじゃないかなぁ。
彼は純粋に上手くなりたいだけです。って言うけど、それは反抗心を脳内ポジティブ変換しているように思うんだよね」

まあ、人類の宝であるオオタニサンを一般人の学びにしようというのはおこがましいですし、サッカー選手の野球トークを鵜呑みにするのもおかしな話ではあります。ただ、彼の分析は、あながち否定はできないところがあります。

人間、かならずどこかに多面性があるものですので、大谷選手にもそういう複雑な心理模様があってもおかしくない。ポイントは繰り返しますが、脳内でのポジティブ変換です。

陽の感情の裏には必ず陰の感情があります。しかし、陰だからダークサイドに落ちるとは限らないのです。シンプルに、大谷選手は陽の感情も陰の感情も、ライトサイドに変換する習慣があるだけ。ということかもしれませんが、彼にももし、人間らしい反抗心があるのではないかと思うと、超一流とは何か。反抗心はどう成功に関係するか。という問いに、彩りを与えてくれるように思います。

まとめ

以上の考察・ケーススタディから、反抗心は以下のようなメリットをもたらすことが示唆されました。

  • 創造性の向上

  • 新しい可能性の発見

  • 自己表現の機会拡大

一方で、以下のようなリスクもあると考えられます。

  • 既存の関係性の破綻

  • 社会的非難を招く可能性

成功するには、反抗心は強い因子となりうる。だたし、これらのバランスを取るため、脳内ポジティブ変換を癖つけ、その心の動きを自分で把握し、飼い慣らすことが重要であると言えるのではないでしょうか。

最後に、著書「人を選ぶ技術」で掲載したコンセプト図を掲載。ネガティブ(陰)も、ライトサイドの力として活かすことが可能ということです。

小野壮彦『経営×人材の超プロが教える人を人を選ぶ技術』



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