RPC-313 翻訳してみた

はじめに

note初投稿です。ブログでの記事投稿そのものも初となるので見辛かったりする場合はご容赦ください。

そもそも今回のタイトルにもある「RPC-313」とはなんぞや?と思った方に説明。RPC-313は、RPC Authorityという共同怪奇創作サイトに出てくるアノマリーの一つです。

共同怪奇創作サイト?アノマリー?それってSCP Foundationのことじゃないの?とお思いになられる方もいるかと思いますが、まあ似たような別のサイトだと思っていただければ結構です。そもそもSCPというワードを見てもピンとこない方は回れ右していただいて結構です。

元々SCP Foundation内のコミュニティにいた投稿者達の間で内輪揉めがあって、その一部がSCP Foundationを離れて新たにRPC Authorityというサイトを作り上げて、記事投稿を始めたって感じらしいですよ。(ざっくり過ぎる説明)

そんな感じで出来上がったRPC Authority、本家大本のサイトでは結構な量の投稿があるんですけど、日本での認知度があまり高くないのか翻訳されてる記事が少ないんですよね…。

そんな中で、この日本語未翻訳の「RPC-313」ってアノマリーの記事を一目見て、大変興味を持ったので、勝手に日本語翻訳しました。

しかし、正直翻訳の精度に自信がないから気が引けるってのと、wiki dot会員のなり方がわからないということで本家への翻訳投稿は渋っているところです…。本家でまだ翻訳されていないSCPの翻訳文を投稿しているサイトもちらほら見たりするので、問題ないのかなあと思ってますが「勝手に投稿しないほうがいいぜ!」とか「俺が先に翻訳して本家に投稿しようとしてたんだから消せや!」と言った声があれば削除しようと思います。

この「RPC-313」の原語版、専門的・学術的な言葉が多くて結構翻訳大変だったんですよね。なので書いた後、自分でも理解していない箇所が大半です…。でも、こういうアノマリー特有の形容しがたい恐ろしさ、元の投稿者が表現したかった世界の奥深さを感じてもらえることが出来ればなあと思い、翻訳を進めていきました。結構長いので飽きるかもしれません(?)

元ページを見ながら本記事の日本語訳を見ていただけるとより分かりやすいかと思うので以下にURLを貼り付けます。

http://rpcauthority.wikidot.com/rpc-313

オブジェクト情報

RPC-313 源泉 (The Wellspring)

登録事象コード:
313
オブジェクトクラス:
Omega-Purple
ハザードタイプ:
地球外的、情報、超次元的、集団的

収容プロトコル:
RPC-313-Sを閲覧可能とする全ての端末操作はレベル3以上のクリアランスを持つ者にしか許可されていません。
端末が存在するエリアへのアクセスはサイト管理者の正式な要請がある場合のみに限られます。
端末へのアクセスに割り当てられた時間を超過した者は終了処分となります。
オブジェクトS-01に関連する調査は重度な認識災害予防策のもと行われます。¹
S-01関連のテストを行う際は████主任研究員の同意を得る必要があります。(この一文は取り消し線で消されている)
現状RPC-313は収容出来ていませんが、機構以外の存在に認知されることを防ぐ必要があり、ACI情報操作セクターが該当存在の隠蔽を行っております。
このプロトコルは二つのプローブISO-Castor、ISO-Polluxが指定された地点に到着するまでは保持され、到着した際は理事会を招集し、以降の収容処置を決定します。

説明:
RPC-313(収容以前はFischer-Griess Voidとして知られていた)は██星座の付近にある、地球から約86億光年先に位置する空白の領域です。
RPC-313は直径27億光年の楕円体であると思われ、170,000Mpc³の空間を包含しています。WMAPデータによるとRPC-313の物質密度は一般的な宇宙空間の平均より少ない0.01%であることを示しています。²
RPC-313の異常性は、物質不足によって生じているものと考えられます。

上記の異常性は、██の研究者たちがRPC-313の中心と思われる場所から一定の長波で流れる無線通信を傍受したことにより初めて発見されました。
解読された通信には、機構コンピュータ端末T77と不明な場所に存在する別サーバー間との遠隔通信を可能にするための詳細指示が含まれていました。
サーバーは一つのプログラム――RPC-313とほぼ同様のサイズ、形を完璧に再現した空間のリアルタイムシミュレーションを実行していると見られています。(前述のRPC-313-Sに該当する)
シミュレーションが実際のRPC-313と異なる点は、それには宇宙全体と一致する割合の物質が含まれており、銀河系とそれらに必要な無数の星が存在しているということです。
視覚的情報が少ないことからRPC-313-Sの観測は難しいとされておりましたが、プログラムが提供する驚異的な詳細データを活用したことにより、いくつかのエリアの探査は完了しています。[重要オブジェクトの一覧は補遺S-Aを参照]

+RPC-313から受信した通信の一部分(音声データ)

RPC-313-Sの中心にあるオブジェクト(前述のS-01に該当する)に関連するデータを相当数観測した研究者は極度の精神機能低下に苦しむことから、S-01は認識災害に指定されております。S-01の更なる精神への影響に関しては補遺01-Aに記録されています。
元主任研究員の██博士はS-01の重大な影響を最も受けた患者とされており、現在精神リハビリテーションセンターに入院しております。██博士へのフルインタビューは補遺01-Bに記録されています。

RPC-313-Sの構造もまた、異常性を有しています。
RPC-313-Sによってシミュレートされた空間のアンダーソン定数³は中心に向かうにつれ減少し続け、S-01付近で0に到達したと研究で明かされており、研究者たちはS-01中心部のアンダーソン定数は絶対零度を示すと仮定しています。
これが事実であれば、S-01は観測史上初のACS-0クラス現実の実例となります。
このRPC-313-Sの特性に関する研究は現在も続いています。

RPC-313-Sで現状、生命存在が確認されている唯一の惑星S-06の居住者と研究者間の交流が過去に行われています。該当生物が如何にして研究者たちの言語を理解しているのか、如何にして研究者たちと接触を図ることが出来たのかは不明です。
会話の詳細は補遺06-Aに記録されています。

RPC-313は現在未知の速度で拡大していると考えられます。
ISO-Parmenides(詳細は事象ログを確認)によって行われた隕石SR-3486Yの観察によると、RPC-313の境界線を通過した物質は一度破壊されたかのように見えます。しかし、RPC-313の境界線を通過した全物質のその後の軌跡や位置は現実の宇宙と完全に同期する形でRPC-313-S内にて忠実に複製されます。ISO-CastorとISO-Polluxは██に位置する発射サイトStella-97からRPC-313に向け、該当アノマリーをより詳しく観察、テストする為に発射されました。⁴

事象SR-3486Yログ

事象ログ:
隕石SR-3486は15-08-██にISO-Paramenides太陽系外望遠鏡によって初めて観測されたRPC-313に一番近い観測可能な物体とされていました。RPC-313の境界線に向けて移動していたことから、ISO-Paramenidesは定期的に該当物体を監視するよう命じられました。(後に隕石SR-3486Yが実際には定常位置から動いていないことが発覚しました)ISO-Paramenidesの位置と、SR-3486Y表面の様子を撮影するのに掛かる時間を考慮した結果、全体の撮影は一年に一度しか行われませんでした。

SR-3486YがRPC-313を通過し始めたところ、隕石の一部が空洞の境界線を越えた際、ほぼ瞬時に破壊された様子が確認され、ISO-Paramenidesはこの過程を最後まで撮影することに成功しました。
研究員が行ってきたこの監視作業は、破壊されたSR-3486Yの一部と相関する物体がRPC-313-Sの境界線から現れたことにより、意義のあるものとなりました。
研究員達の間では、この共通点が只の偶然ではないという認識で一致しています。

補遺06-A: RPC-313-S内の生命体との交信

<通信開始>
生命体1:もしもし?
研究員:もしもし
生命体1:あなたは私が交信しようと思っていた方でしょうか?
研究員:わかりません。私の言っていることは理解できますか?
生命体1:はい。あなたは誰ですか?
研究員:研究員です。教えてください、あなたは約70%が水で構成された、12ある軌道に乗った惑星のうちの4番目の惑星に住んでいますか?
生命体1:はい。あなたは私のいる惑星には住んでいないのですか?
研究員:いいえ、私は他の場所に住んでいます。
研究員:さて、教えてください、あなたは自分が住む世界の確実性について疑問を感じたことはありませんか?
生命体1:言っている意味がわかりませんが。
研究員:もし、あなたの世界が広大なコンピューターシミュレーションの中に存在していると言ったら、どのように思いますか?
生命体1:あなたを信じないでしょう。私は自分の世界が目に見える通り真であることを知っています。見ることが出来、感じることも出来ます。源泉は与えて下さり、嘘をつかない。
研究員:源泉?それはなんですか?
生命体1:全てが流れ、戻る。最期の光。螺旋の中心。
研究員:あなたが住む宇宙の中心にある物体のことですか?それは何をするのですか?
生命体1:そのことについては話すべきではないと言われています。
研究員:誰にですか?
生命体1:聞こえないのですか?その思考の音色、その飢え、全てに染み渡るさまを?
研究員:その源泉が語りかけているというのですか?源泉は何と言っているのですか?
生命体1:それは言えません。
研究員:従わないと何が起きるのですか?
生命体1:この言葉が何を意味するのかわかりません。止めてください。
研究員:私はただ源泉のことが知りたいだけです。
生命体1:止めてください。それが悲鳴を上げているのが聞こえないのですか?止めてください。止めてください。それが彼らにしたことを覚えていないのですか?止めてください。
研究員:過去に生命が存在していた別の世界があったのですか?彼らに何が起きたのですか?
生命体1:もう止めなければなりません。この通信の目的はすでに果たしました。私はもう解放されます。あなた方は見られていることを知って下さい。
<通信終了>
終了報告:生命体1と再度会話を行うため何度か通信を試みましたが、いずれも失敗に終わっています。

補遺S-A: オブジェクト一覧

警告!
認識災害が含まれています。注意が必要です。

S-10
オブジェクト名称:S-10 ”Orchid Nebula”
オブジェクトタイプ:惑星状星雲
座標:[45359.58,-35751.77,11164.02]
オブジェクト説明:
S-10はS-01から約14億光年離れた惑星状星雲の呼称です。
6つの星から成る恒星系の残物と考えられており、現在は白色矮星の周りに星雲が形成されています。
直径は400光年であり、S-10はRPC-313-S内において現在知られている中で最も大きな非銀河オブジェクトとなります(S-01を除く)。研究員達は重力及び電磁気データに基づく美しい対称性に着目しています。現在、その情報を基にS-10の外観を正確にシミュレートする取り組みが行われております。

S-09
オブジェクト名称:S-09 ”Echo”
オブジェクトタイプ:浮遊惑星(巨大氷惑星)
座標:[54011.03,-64001.59,-33914.62]
オブジェクト説明:
S-09はS-01から約1.85億光年離れた巨大氷惑星の呼称です。
直径は約61,000kmであり、同じ惑星種の中では比較的巨大な部類となります。
S-09の着目すべき点はRPC-313-S内にある他の物体との位置関係にあります。
S-09は正真正銘の浮遊惑星であり、軌道に乗って周回しません。
それは銀河系と銀河系の間に存在する虚無空間に位置しています。
S-09に一番近い銀河系は1,500万光年先に存在してます。⁵
研究者はS-09を”孤独”と特徴づけました。
他の全ての物質からこれほど離れた状況で、一つの惑星がどのようにして形成されたのかという原因については現状不明であり、研究員達による精査が進められています。

S-08
オブジェクト名称:S-08 ”Damocles”
オブジェクトタイプ:三連星系
座標:[-3762.89,65322.05,-4451.72]
オブジェクト説明:
S-08はS-01から約2,300万光年離れた三連星系の呼称です。
三つの惑星の中で着目すべきは、最も大きいスーパーノヴァ間際のB9クラスの惑星(研究員たちの間で”The Sword”と呼ばれる)です。
三連星系内でのスーパーノヴァの影響を観測できる可能性があることからS-08は着目すべきオブジェクトとされており、該当イベントに備え現在も研究者達による定期的な観察が行われています。

S-07
オブジェクト名称:S-08 ”Captain Franklin”
オブジェクトタイプ:銀河系
座標:[55502.43,82166.31,-29581.04 ]
オブジェクト説明:
S-07はS-01から約96万5千光年離れたSBa型棒渦巻銀河の呼称です。
直径11万3千光年であり、サイズとしては一般的な部類の銀河系となります。
S-07の着目すべき点は、それが回転せず完全に静止しているという点です。
このことにより、銀河系内の温度が異常に低く、多くの研究者たちにより”凍ったような”特徴的な外観であるといわれています。
現状、このようなS-07の停滞環境の理由を説明する術がなく、研究員達はRPC-313-Sのプログラム内にあるバグが原因であると仮定しています。
上記が事実であれば、S-07は完璧な機能を有するシステムに存在する唯一のバグであることになります。
S-07の研究は現在も進められています。

S-06
オブジェクト名称:S-08 ”Vesta”
オブジェクトタイプ:生存可能惑星
座標:[42131.22,67708.01,-24617.6]
オブジェクト説明:
S-06はS-01から約200万光年離れた生存可能惑星の呼称です。
F1クラスの星を中心とした軌道を周回する13ある惑星のうちの4番目の惑星です。
RPC-313-S内で唯一、生命体の存在が確認できる物体です。(可能性があるS-01除く)
S-06内に存在する生命体の構成や形態に関しては現状不明ですが、コンピューターへの基本的アクセスを最低限行えるほどに文明は発達していると思われます。研究員とS-06内生命体間の会話から、他の生存可能惑星が存在する―もしくは破壊される以前に存在していたことが示唆されています。
なお、RPC-313-S内に他の生存可能惑星、または生存可能惑星が存在していたという証拠は発見されていません。

S-05
オブジェクト名称:S-05 ”Dr. Leach”
オブジェクトタイプ:恒星
座標:[1011.2,4504.5,-236.7 ]
オブジェクト説明:
S-05はS-01から約9万4千光年離れた恒星の呼称です。
直径は約3000☉であり、当初S-05は光の発散がないことから恒星ではない別の固形物体であると思われていましたが、詳しい調査を行ったところ、S-05の光は惑星表面を蠢く計り知れない量の節足動物(ダニに良く似た)によって遮られていたことが発覚しました。
該当生物は全長約2万kmの大きさを有しています。恒星の熱から生き延び、耐える事が出来る理由は現在不明となっています。
また、死体を食すことによって生存していると仮定されていますが、該当種の死は稀なものであると見られています。
研究員による該当生物の死は未だ確認されていません。

S-04
オブジェクト名称:S-04 ”Julia”
オブジェクトタイプ:星間雲
座標:[-16345.2,5671.1,-3244.9 ]
オブジェクト説明:
S-04はS-01から約9万3千光年離れた場所に位置する主に氷微惑星で構成された星間雲の呼称です。
S-04の平均直径は約175光年とされていますが、星間雲そのものの異常性により、大きさは一定ではありません。S-04の異常性はそのフラクタル模様が絶えず変化する事です。(具体的にジュリア集合模様を模したような)
S-04の形状が絶えず変化する観測可能な力学的原因は現在不明です。
S-04の研究は現在も進められています。

S-03
オブジェクト名称:S-03 ”Stronsay”
オブジェクトタイプ:有機体
座標:[2384.7,-647.1,-502.5]
オブジェクト説明:
S-03はS-01から約7万3千光年離れた場所に位置する物体の呼称であり、生物であると仮定されています。
全長約2光年の大きさを有しており、仮に該当物体が生物であれば、機構が知り得る中で最も大きな生命体となります。
不動ではあるものの、生物であると仮定されている理由として、最表層にある身体の一部を微細に振動させ「発声」を行うことが挙げられます。
この「発声」の周波数はクジラ目の生物がS-03と同等のサイズだった場合に予想される発声と合致しています。
クジラ目の生物がそのような大きさ、尚且つ宇宙空間で生存出来る理由に関しては現在不明です。
仮定の一つとして、現状S-03はその動作の少なさ、新陳代謝の低下を示唆する事からクリプトビオシス状態(厳しい環境に対して、活動を停止する無代謝状態のこと)であると見られています。
この仮定を確証する為の研究は現在も進められています。

S-02
オブジェクト名称:S-02 ”Achlys”
オブジェクトタイプ:地球型惑星(炭素で構成された)
座標:[-31.88,-3.03,-57.29]
オブジェクト説明:
S-02はS-01から約6万8千光年離れた地球型惑星の呼称です。
主に炭素で構成されており、研究員達の間では特徴的な黒い色をしていると言われています。
S-02の着目すべき点はミリ秒パルサーを軸に軌道周回する唯一の物体としての位置づけです。
またS-02は異様にパルサーとの距離が近く、たった0.21AUの半長径を軌道周回します。
S-02がパルサーの発する絶え間ない放射能の影響を受けない理由と、パルサーと非常に近い軌道周回を維持し続けることが出来る理由に関しては現在不明です。
S-01に最も近い物体の一つであることから、研究員達の間でS-02はRPC-313-S内で最も古い物体であると考察されています。
この安定した惑星系がアンダーソン定数の低いエリアに存在し得る理由は現在不明です。
S-02の内部構成に関しては現在不明です。

S-01
オブジェクト名称:S-01 ”The Wellspring(源泉)”
オブジェクトタイプ:不明
座標:[0,0,0]
オブジェクト説明:
S-01はRPC-313-Sの中心にあるとされる物体の呼称です。
衝突した物体は惑星系から消失するという特徴以外に判明している事はありません。
S-01の全長は約130万光年とされており、現在知られている中で最も大きな銀河系ですら矮小と思わせるほど広大です。
S-01関連のデータを視認する事は精神に有害な影響を与えるとされています。
被害者はS-01に対し強い献身、尊敬を示すようになり、場合によっては宗教的な信心を抱くようになります。
また、関連データを視認するよりも直接S-01を視認したほうが影響が多大なものになると推定されていますが、この仮説に関して現在研究は進んでいません。
不明点は多くありますが、S-01とそれによく似た存在の崇拝は数々の並行現実において最も多く確認される信念体系の一つであり、最も熱心な宗派はACWクラスの基底現実に存在しています。
情報のいくつかは補遺01-Aにて目録があります。
S-01の中心はACS-0クラスとされていますが、現在研究は進んでいません。
06-Aにて行われた会話から、S-01は知恵を有している事を示唆していますが、その事実を確証するための調査などは行われていません。

補遺01-A: 特筆すべき並行現実におけるS-01崇拝の実例

所在地:Rift N-25 [ACS-2]

説明:
Rift N-25は謎の構成物から成る顆粒状の砂に似た物質で覆われた地帯に開きました。
光源が全くないことから、生命体が存在し得る場所は地中であると仮定されました。
砂を掘り進めたところ、大きなミミズに似た生命体がいくつかの異なるコロニーを築いていることが判明しました。
彼らが掘ったトンネルがレーダーで製図されるまでは、彼らにコロニーを作り上げる知識は皆無であると思われていました。
製図の結果、大きなコロニーは特徴的な螺旋構造のトンネルを掘っていた事が明らかとなり、その中心にはS-01の形がはっきりと描写されていました。
これがS-01に対し、崇拝行動を示す原始的な生命体の最初の発見例となりました。
この生命体がS-01の姿を正確に描写出来た理由に関しては現在不明です。

所在地:Rift K-16 [ACS-2]

説明:
直径数kmの星型八面体の石が五つ、Rift K-16の入口付近で浮遊しているのが確認されました。
詳しい調査の結果、それらは12足から成る節足動物のコロニーを収容していた事が判明しました。
その過程で発生した生命体との衝突の結果、収容船の一つを機構が撃墜し、石造物のサンプルを幾つか確保することに成功しました。
石造物から発見された彫刻はRPC-313-Sにある他のオブジェクト同様、見事にS-01を模していました。
また、石造物に居住していた生命体がS-01に服従し隷属となっている様子が彫刻に描かれていました。
木が火炎に飲み込まれる様子を描いた彫刻の一部も発見されています。
石の構成物や彫刻技術に関しての調査は現在進行中です。

所在地:Rift W-33 [ACS-2]

説明:
都市にも匹敵する大きな建物群がRift W-33付近にて確認されました。
完全に氷結しており、その極度に低い温度から生命は存在しないものと見られます。
唯一入ることのできる建造物は図書館、ないしは知識ベースと思われる場所のみです。
そこには抗争の跡、床と壁に深い爪跡のような傷があり、他の建造物は焼かれたような痕跡がありました。
解読可能な状態の書物はほとんど残存していません。
書物の大部分はS-01とRPC-313-S内オブジェクトの描写と多くの文字を記載していました。
書物に使用されている言語の解読は未だ完了しておらず、翻訳作業は現在進行中です。

所在地:Rift H-08 [ACS-1]

説明:
Rift H-08を経由してアクセスした現実は、空間全体が四次元自由度を満たない段階的な物質によって支配されている為、調査を行うにはあまりにも不安定であると考えられました。
しかし、偶然にも発見された空間内で形成した粒子が不吉な兆候を示唆しました。
粒子はS-01に似た形の異なるクラスターのみにしか発現しませんでした。
Rift H-08内でこのような現象が起こる理由に関しての調査は現在進行中です。

補遺01-B:①S-01音声データ

質問者:アレン研究員
回答者:精神病棟にて入院中の元主任研究員████

<ログ開始>

アレン研究員: こんにちは、████。随分久しぶりですね。一体どういった待遇を受けたのですか?
████: 待遇なんぞ受けていない。
アレン研究員: 何故、ここに連れてこられたのかはご存じですか?
████: 奴らが私の信念を理解できなかったということ以外に思い当たる節がない。
アレン研究員: 私はそうは思いません。

―アレン研究員が████に絵画を渡す―

アレン研究員: これに見覚えは?
████: 私が描いた源泉の絵の一つだ。あまり正確ではないが、その観念は伝わるだろう。
アレン研究員: これは、目ですか?
████: いや、だが見ることが出来る。
アレン研究員: 何故、あなたはS-01の絵でオフィスの壁一面を埋めたのですか?
████: 私は・・・何故かわからない。全く。目を閉じた時もそれが見え始めた。ほとんど無意識的に 描いていたのかもしれない。
アレン研究員: S-01について何かわかることは?
████: お前ほどは知っていない、本当さ。根底では私と同じく真実を知っているはずだ。それが 我々のもとにやってくれば、死体一つ残さないくらいには親切にしてくれるだろう。
アレン研究員: S-01が現在、認識災害に指定されていることはご存じですか?
████: そのように決め付けるのも仕方あるまい。あいつらは柔軟性がないからな。
アレン研究員: あなたは、自身が認識災害の影響を受けているという自覚がないのですか?

████は応えない―

アレン研究員: ジョンソン研究員にしたことを覚えていますか?
████: 我々は望遠鏡にParamenides(パラメニデス)と名付けた。彼の書物を読んだことはあるか?
アレン研究員: いったい何を伝えたいのかわかりませんが。
████: 彼は間違っていたんだ。

<ログ終了>

終了報告:以降、████はアレン研究員の質問に応答することを止めました。そのことに気がついたアレン研究員はやがてインタビューを終えました。
████のRPC-313研究チーム内での地位は取り消されています。
彼は現在RPC-313-1に指定されています。

補遺01-B:②██委員によるスピーチの音声記録

前書:
RPC-313に関する聴衆への発表を終えた際、新人の質問に対する回答として██委員はある夢について語った。

記録:
私は、遥か昔に夢を見た。しかし実際の記憶以上に、はっきりと覚えている。しばらく黙ってはいたが、皆に共有する時が来たようだ。君達の中にいる誰かにとって…役に立つ事であろう。

シミュレーションを発見してから数か月、ある暗示が私の頭の中に重くのしかかっていた。我々は長い期間Fischer-Griess Voidを観察し、信号を傍受する遥か前から、それが拡大している事実に興味を引かれていた。だが、あの中心にある忌々しいものを発見してからは、事態は悪方向に進んでいる。肩の荷が特段に重く感じられた数週間後、私は夢を見た。

当時は同じ夢を何度も見るようになっていた。地面で横たわり目を開けると、周りには美しい花園が広がってる。私は立ち上がり、眩惑的な自然の中を歩き回り始めた。まるで植物の一つ一つが精巧で手練な庭師によって丁寧に手入れされているかのようだった。その場所は、きわめて優美な輝きを放っているように思えた。私の心の芯まで温めてくれて、安心感だけではなく自分自身と人生に対してより深い自信と楽観的な気持ちを授けてくれる。今までにない感覚だった。しばらくして、ちいさな小川を見つけたので歩みを止めた。約2フィートほどの大きさ、たった数インチの深さでしかなかったが、それは私の注意を引いた。

その水は、控えめに行って何かがおかしかった。とても浅い小川であることは明らかなのだが、まるで数マイルもの深さがあるかのように、水そのものが暗くて見通しづらい。ともあれ、私の散歩にこの小川の水源を見つけるという目的が加わった。上流を目指して曲がりくねった水流を辿っていくと、定期的により大きな川に出くわし、自身が辿ってきた道から分岐するようになる。目的地にたどり着く過程でこれは何度も起きた。

しばらく水流を辿っていると、やがて芝が茂る小さな丘が見える開けた場所に出た。丘を覆う草は明るい光沢感のある緑色で、丘の下側で流れる暗い水との対比がハッキリしている。丘の上には古臭い小さな小屋があった。その古めかしい小屋からは奇妙なオーラが漂っていて、慈愛に満ちて懐かしい・・・あたかも私がそこで産まれ、育てられたかのような感情を抱かせた。その小屋を見ていると、私は人生の全てをかけてこの場所を探していて、やっと見つけることが出来たかのようで、感情の波が押し寄せて来た。小屋の入口に近づいた私は、体重が軽くなるような感覚を覚えた。私はどこか…心の奥深くで…これから知覚する事象が忘れ難いものになることを知っていた。

小屋の中央には水で満たされた奇妙な石造りのなにかがあり、高さは2から3フィート程のものだった。それは自然の源泉の上に作られたもので、水流口からは暗い水が花園に向けて流れ出ている。これこそ私が追っていた小川の水源であった。向かいにはその水源に触れる年配の女性が座っている。彼女の顔を見ていた私は何故かわからないが微笑んでいた。そんな私に気付いた彼女は、母性と落ち着きのある眼差しで微笑み返す。彼女が話すと、その声はまるで交響曲のように聞こえ、得も言われぬ調和と感動を覚えた。彼女は「何が其方を悩ませているのですか、我が子よ」と私に尋ねた。私は悩みを伝え、今となっては遠い記憶のように思える絶望感について説明した。奇妙なことに、彼女の言葉に関しては完璧に近くはっきりと覚えているのに、私自身の言葉は曖昧であまり覚えていない。彼女は「まあ、それは其方の心を蝕む絶望の苦しみです。」と応えた。彼女が源泉から手を離すと、水の流れがわずかに強くなった。

彼女は話し続け「不公平であることはわかりますが、其方はその苦しみの根源を理解すべきです。苦しみを背負う為に産まれたわけでなくとも、そうすることが其方の役目なのです。今其方にのし掛かる絶望より、危険なものがあります」と言った。彼女が源泉に手をかざすと、まるで煮えたぎり、かきまわされているかのように水の流れが激しくなった。「この源泉を御覧なさい。」と彼女は言う。「これは花園にとって最も重要な力、生きとし生けるものを養い幸せに保つ為に必要不可欠です。花園は水源によって生かされている故、源泉がなければ花園は存在し得ない。しかし、この水は奇妙で風変わりなものです。花園よりも古く、私なんかよりも古い。自身のことのみを理解し、その最も古く、未知の欲求は水が流れ続け、邪魔されないのを見守ること。」彼女が話し終えると、源泉が溢れ始める。私は小屋の中が水で覆われ始めているのを感じた。逃げようとしたが、扉は既に開かなくなっていた。「源泉は全てを水で覆い、広大で空っぽな海以外何も残さない事だけを望んでいるのです。水流が山際を喰らい尽くし深淵に飲み込むことを、花園やそれ以外の全てが形無き暗い水に姿を変わることを」

水かさはとうとう首にまで到達し、何故か私は動くことが出来なかった。恐怖と苦悶が私を麻痺させる。「これは我が苦しみ、源泉が抱く拗れた望みを寄せつけぬ為の、庭が存続する為の全ての命の苦しみ」私は呼吸を続けるために必死に顔を水面に上げる「我が一瞬でも手を抜こうものなら、源泉はその意を実行に移す。この地に生きる命を覆い、流し出す。」やがて、水が私を完全に飲み込んだ後、彼女はこう終えた。「御覧なさい、絶望などといった些細なものに敗れてしまっては、こういった不可解な苦しみによって一瞬で破壊されてしまうのです」と。

水に飲み込まれた後、小屋はやがて姿を消し、私は女性が言及していた広大で空っぽな暗い海に沈んでいた。その孤独感…その圧倒的な虚無感…子供の時や大人になった後に見たどんな夢よりも恐ろしかった。目を開けても閉じても、終わりのない暗闇だけしか見えない。 この忌々しい空間にただ居続けるだけで、底の見えない深淵に魂の全てを奪われるようであった。更に深みに沈んで気が遠くなっていき、水そのものが精神を引き裂くようなオーラを発しているのを感じた。それはまるで、花園で感じた幸福と安堵が残酷にも逆転し、醜悪でグロテスクな形となって私自身に襲い掛かるような感覚だった。私は引き裂かれたが、それは身体的な意味ではない。「私」と言う根本的な概念が崩壊していき、叫ぶことさえ出来なかった。方向などなく、法則などなく、あるものは私と恐ろしい暗闇だけだった。渦巻く虚無の中で、深い苦痛と苦悩のみを感じながら私は転げ回る。息が切れたことを実感したその時、混沌が慈悲もなく徐々に私の姿を破壊していき、最期に私は目を開けた…か閉じた…はっきり覚えていない。私の下で、水底で見えたのだ。あの極悪な形が。研究員達があちらこちらに描いていた、シミュレーションの中央に見えた形が。私はその歪なパターンの暗い中心部を見つめた。繰り返しはしないが、あの空っぽな円の中に見えたものは。それは…それは見る事さえ凄惨な形容しがたい拷問であった。想像を絶する苦痛に意識を失う最中、私ははるか遠くから歪んだ女性の声を聞いた。

「理解しましたか?」

私は即座に起床し、体験したことのショックで震えていた。数分後に落ち着き、やがて息を整える事が出来た。息を止められることなく、生きているという実感に大きな喜びを感じた。ここ数十年で始めて、私は静かに泣いた。教えられた事の重みが一瞬のうちに圧し掛かってきた。その時感じていた絶望に私は完全に打ち負かされてしまったのだ。しかし、これを聞いているであろう権力者達に、それは前の出来事であったということを伝えたい。受けた教えを、私は…理解したと。

補足

1. S-01がもたらすミーム的影響の詳細原因についての調査は現在進行中です。
2. 平均的な宇宙空間の物質密度は>10%です
3. 現実度を表す指標です。
4. 2台の惑星間探査機は■■■■によって推進されています。
5. S-09が占めている空間はそれ自体が超空洞に分類されます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?