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秋を食す

昨日の夕方、文学学校のN先生と『日本料理 寺田』で食事をした。
拙書『だし巻き玉子』の出版祝いを兼ねての食事会で,美味しいもの談義に花が咲いた。
ご主人の寺田さんにも以前に拙書を謹呈したらすでに読んでくださっていた。
この日のお料理はどれもこれも絶品で、開店されてから八年の献立の歴史を知るささやかなファンの僕にとって、真摯な努力の積み重ねが才能をさらに開花させてゆくんだという事実を再認識させられた。分野は違えども同じクリエイターとして頭が下がる思いだ。

圧巻は椀物で、蓋を開けるとその裏の黒塗りに沈金の菊文が一面に咲き渡っている。見た目で秋を感じる。続いて松茸とスダチの香りで心躍り、ボタン鱧がこの夏の終わりを告げてくれたような気がした。
熱々のお出汁が身体中を駆け巡る。至福の時である。

感動は最後にやってきた。
なんと「だし巻き玉子」が出てきた。小説を書くために僕は100本以上自分で焼いて食べたが、プロのは今年初めて食べたかもしれない。
とてもうれしくてなんだか涙がじわりと滲んできた。
こんなに嬉しい出版祝いの食事会はないだろう。
よし、僕ももっと感動を産むために精進せねば!

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