私はタクシーが大好きだ。

とにかくなんでもギリギリを攻める私は大学も会社も隙あらばタクシー移動。

タクシーは素晴らしい。

なんせ家までお迎えに来てくださるのだから本当に時間ギリギリまで支度ができるし、なんなら移動中にもスケジュールの確認や提出物の総仕上げができる。

それは会社に入って数年が経った頃、
「ザ•お局」なお姉様にかなり精神的にやられてしまって憂鬱で朝起きるのがすごく大変な時期があった。
遅刻寸前の私は当然タクシーを呼ぶ。
最近みたいに便利なアプリはないから、
決まったタクシー会社に電話して配車をお願いする。
頻回にお願いするのでだいたい運転手さんが決まってくる。

中村さんは、会社を早期退職して運転手さんになった所謂「セカンドライフ組」だった。

前職ではよく聞く名前の会社でゼネラルマネージャーをされていた。
中村さんは、優しかった。

いつも浮かない顔で会社に行く私に何気ない話を振ってくれた。
毎日が憂鬱だった私はだんだん中村さんの車に乗るのがとっても楽しみになった。

悩んでることや悔しかったことを話すと、
中村さんがアドバイスをくださった。

「苦手な人ほど笑顔で接しなさい」
「遠くに味方を作りなさい」
「時間を捻出するにはこんな方法があるよ」
「やりたいことはどんどん上に伝えなさい」
「そんなとき、こんな言い回しはどう？」

あの時彼は間違いなく私のメンターだった。
中村さんが癒してくれた傷、中村さんが授けてくださった知恵は今の私を助けてくれる。

今はもう中村さんは運転手を辞めてしまったけれど、彼の教えはちゃんと私の中にあってずっと大切にしてる。

私はタクシーが大好きだ。