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大学生への講義を通じてわかったデザイナーの育て方・なり方

こんにちは。オオカワラです。
去年そして今年と、母校である千葉大学にてコミュニケーションデザインⅢBという講義の非常勤講師をしています。この講義は全7週の中、自分たちでテーマ設定をし、デザインリサーチとUIプロトタイピングを経てデジタルプロダクトを提案するというものになっています。

今回は、総勢50名前後の学生に対して「デジタルプロダクトをデザインする」ということを一通り教えてみて、デザイナーを一から育てる(逆の視点からすると一からデザイナーになる)ことに対する道筋がなんとなく見えてきたので忘れないうちに書いておこうというメモになります。

継続的な実践とフィードバックこそ王道

私が担当している講義の対象学生は基本的に学部3年生です。学部3年生となると、丸2年は基礎的なデザイン教育を受けてはいますが、仕事としてデザインを行えるスキル感ではもちろんありません(これは当然ですし、当時の私もそんな感じだったと思います)。そして、インターフェースのデザインを経験したことある学生もほんの一握りという感じでした。

そのようなバックグラウンドの中で、企画を立ち上げ、リサーチし、インターフェースおよびプロダクトを設計する、という一連の流れを学生に対してたった7週でエッセンスのみ教えるというのは正直無理があります(2倍は時間が欲しい)。

ニーズを捉えたプロダクトの企画を立ち上げるということだけでも2-3週は使えるくらい奥が深いですし、デザインリサーチもそれ単体でひとつの講義として成立します。UIモデリングもインターフェース設計の中では無視できないプロセスですし、肝心のUIデザインも最終的なスタイリングを作っていくまでに多くの過程があって何週も時間が必要です。

去年今年と講義をする中で強く反省したのは、理論的なことをインストールしても学生はなかなかすぐには理解できないということです。これは、学生の資質を問うてるのでは全くなく、いくら理論的なことを説いてもそれが実際製作していく過程と結果にどう反映されていくのか、手触り感を持って伝えられていない私の教え方の問題です。私が「こういう風に進めて、こんな感じにしたらいいよ」と言ってもしょうがなかったわけです。

どんな領域のデザインにしろ、まずは手を動かしてみなければ何もはじまりません。そして、その手を動かした結果出てきたアウトプットに対して丁寧にフィードバックすることでしか経験を糧にはできないわけです。昨今、独学でデザイナーになるという方も増えており、それ自体は良いことであるものの、先達の経験が豊かなデザイナーからアウトプットに対するヒューリスティックなフィードバックをもらわないと限界に到達しやすいのではないかと思います。また、そのフィードバックも単発ではなく、高頻度かつ継続的に実施されることで初めて生きたデザインスキルの獲得へつながるのかなと感じました。

できることならば、講義の中で各グループに対してもっとフィードバックの時間を確保することと、手を動かしてアウトプットをどんどん引き出す仕組みを用意しておけばよかったなと思います(来年以降に活かします)。現在、デザイン学生として学んでいる方もそうでない自分の力でデザイナーになろうとしている方も、デザイナーとしてのスキルを近道で身につけたいならばメンターとなるデザイナーを見つけて指導してもらうことが一番だと感じます(なかなか難しいことですが)。

そういう意味でノウハウと体力がある大きい企業で新卒デザイナーで入社するというのは、先輩デザイナーが育ててくれるので極めて合理的でもあるんだなと今更思いました(学生当時は同期がメーカーをはじめとした大手企業に行くのがあまり理解できなかった)。ちなみに私が現在所属しているSmartHRでもプロダクトデザイナーの新卒採用がはじまりました(宣伝)。会社という場であったら私も7週という限られた時間ではなくもっと丁寧にじっくりと教えていけたりするのだろうか?

そんなわけで(領域は問わず)デザイナーを育てたいあるいはデザイナーになりたいのならば、メンターおよびメンティーの関係性を作り、継続的なフィードバックとアクションを泥臭くやっていくしかないのかなというお話でした。また来年度の講義が終わったときに見えてくるものもありそうです。

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