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湿布から映画を学ぶ

夏は嫌いである。嫌いな点を挙げると、みんな具合が悪くなってしまうので控えさせていただく。だが僕の中での四季ランキングは万年ビリなのは伝えておきたい。4人で競っているのに1人だけ表彰台に立てないことほど屈辱なコトはないと思い、僕ながら夏への抵抗をしてるのだ。今年も夏がやってきて、ある出来事によって、また一歩、夏の嫌いを前進させた。
それは脚を酷使した日の夜のこと。明日の僕への優しさと、クソ暑い夏をちょっとでも快適に寝られるのならと、家の引き出しの中にあった湿布を、安易に貼った。ダサいとも思ったが、自分のカラダとココロを大切にするのに年齢など関係ないと言い聞かせた。勿論、次の日には万全な脚になった。ただそんな脚は見せかけであり、落とし穴だったのだ。
皆さんは「モーラスパップ」をご存知だろうか。ここまで聞けばもうお分かりの方もいらっしゃるかと思いますが、そう、僕の脚には湿布の貼ったまんまのカタチをした発疹ができていたのである。モーラスパップ貼付後に強い紫外線を食らうと「光線過敏症」という症状を引き起こすのだ。無知とは怖いもので、赤紫でブツブツとした皮膚は、名にふさわしい妖怪の形相の様に思えた。
海の日だったが、近くにやっている皮膚科を見つけて、オープン30分前から待機した。だが一向に開く雰囲気がない。周りには複数のクリニックなどがあるにも拘らず客らしき人は僕以外いなかった。スマホを見たながらウロウロしているおじさんが来て、「今日は休みなんかな?」と話しかけてきた。「10時になれば開くと思いますよ」と僕は答えた。おじさんは何処かに行ってしまった。嘘を教えてないか心配になり、再度ウェブサイトを確認したら、【休館日‥土日祝】と書いてあるではないか。僕の見間違えから、おじさんも半分くらい巻き込んでしまった。簡単には見当たらなかったので、逆に僕を気づかせる為に知らないフリをしてくれたのだと思うことにした。ありがとうおじさん。
家に帰り、一旦落ち着いた。今度は本当にやっていて、一応皮膚科もある休日診療所を見つけ、再トライした。総合的なクリニックなのと、休日の午前中が相まって、待ちが2.3時間になると言われた。みんなは一旦帰宅していたが、僕は綺麗な看護師が2人もいたのでそこで待機することにした。本を読むフリをしながら結局その2人をずっと見ていた。みんなが一旦帰宅してくれていたため5人飛ばしくらいで僕の番に1時間で回ってきた。コレはいい流れが来ている、シメシメとニヤついていたところ、僕の脚を見て医師から言われた言葉がこうだ、

「これは、皮膚科に行ってください。一応塗り薬は出しておきますから。」

ものの1分程度で診察は終わり、気づいた時には何故そんなに高いのかよくわからない1500円の請求を払い終え、常夏の駐輪場に立っていた。手元には処方箋の紙だけが残っていたが、皮膚科に行ってくれと言った医師の薬を買う気も無かったし、市販で買える塗り薬はもう既に塗っていたので、バックに強くしまい、帰宅した。気休めで音楽を聴きながら帰っていたが、ポップなメロディーだったからか、尚更悲しくなった。いわゆる映画の手法的な感じだが、効果はバツグンだった。

このひと騒動全てが、きっと夏のせいなのだと、また僕は思った。ただ、夏を毛嫌いし侮辱した天罰なのだとも同じく思えた。だから僕は3位タイという表彰台を設けることにした。1位が春、2位が秋、3位タイに夏と冬と横並びになる表彰台を。そしたらきっと神様も赦してくれるし夏も喜ぶ。でも今度は、冬に何かが起こりそうな気もしないでもない。

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