見出し画像

本当の"やさしさ"は甘やかしではない。櫻本さんが伝える本当の"やさしさ"とは。

やさしいはいくつあるのだろう。

落としたものを拾ってくれるやさしい性格。
ほうじ茶ラテのやさしい味。
ニコッと笑ったときのやさしい顔。
想いやりで溢れるやさしい世界。
できなかったことに対して許してくれるのもまたやさしさ。
薬局のおじさんに言われた「これは軟膏のやさしいタイプで、こっちはクリームタイプ。」これもまたやさしさ。

世のなかのいろいろなものが、"やさしい" で表現される。そう表現されることは、どちらかというとマイナスではなくプラスであり、否定ではなく肯定として使われる。ただ同時に、"やさしい" の解像度はとてもつもなく低い気がしてしまう。そのときどきでいろんな意味に変わり、たくさんのものを肯定してくれる "やさしい" は、それ単体で説明するには難しい。

やさしさってなんなんだ。

そんな疑問を持っていた僕に、CoachEd/cotree CEO 櫻本さんがひとつのヒントを示してくれた。

本当のやさしさは、"相手に力を与える"こと。

櫻本さん:

一般的なやさしさ
は、相手を甘やかすとか、相手がやるべきことを自分がやってあげるとか、相手が必要なものを自分が与えるとか、いわゆる"差し上げる"ような動きだと思われることが多いです。
しかし、実際のやさしさは、相手が力を得て成長したりとか、わかることが増えるとか、いわゆる"力を与える"ような相手との関わり。だと思います。

"相手の力を奪うやさしさ""相手に力を与えるやさしさ"があるなかで、相手にあった課題、相手の苦しさを把握したうえで、「この人に乗り越えられる壁はなんなんだろう」「この人は何があれば次のステップに行けるんだろう」に自分が向き合っていくような"相手に力を与えるやさしさ""本当のやさしさ"だと思っています。

つまりやさしさとは、持っているものを一方的にあげるではなく、相手が誰かを前提としたうえでのコミュニケーションだと思います。

櫻本さんの目でやさしさの解像度を上げていくと、そこには"相手の力を奪うやさしさ""相手に力を与えるやさしさ"がある。この2つの違いは、"相手に対して、自分が真剣に向き合っているかどうか"だと思う。だからこそときに「厳しい人は、優しい人」になりうる。櫻本さんのお話を通して、僕の中で"やさしさ"が何者なのかを見抜く力が宿った気がした。

ただ、”相手に力を与えるやさしさ”だけではあまたある”やさしさ”を含められない。1つ1つ解像度を上げてみると”相手の力を奪ってでも奉仕するやさしさ””相手を勇気付けるやさしさ””柔らかくて傷つけないやさしさ”もそれはそれで”やさしさ”なのだ。そこに偽物はいないし、悪者もいないと思う。それは個性なんだと思う。

しかし、相手に成長してほしいとき、相手の可能性を広げたいとき、相手の活躍を願うとき、そんなときには”力を与えるやさしさ”を選ぶんだ。と櫻本さんが示してくれたような気持ちになった。

やさしさの物語

櫻本さん:

5年くらい証券アナリストとして仕事をしていたんですけど、当時はリーマンショックの後で会社の雰囲気が悪くなってた時期でもあり、周りで人が辞めていくのもあってメンタルの調子を崩してしまい、メンタルクリニックに行ってみました。

そのときに、診察までに1時間くらい待ったにも関わらず、ほんの数分の診察でうつと診断され、薬を渡され、帰されました。

この体験が私の中ではショックが大きくて、かなりしんどい状況で病院を頼って行っているのに、薬を出されて終わる感じ。

私はメンタルの不調は人生の不調だと思っているので、人生の生き方だったり、働き方だったりと向き合うタイミングだと思うのですが、そういうときに薬しか出すことができない医療の現実がそこにはあって、それって何かできることがあるんじゃないかと思いました。

京都大学卒業後、証券アナリストとして活躍されていた櫻本さんがcotreeというオンラインカウンセリングサービスを立ち上げるきっかけになったのは、櫻本さんの実体験からだった。メンタルの調子を崩してしまった人が "どこにいても""どんな時間でも""誰にもばれずに"相性の良いカウンセラーとつながれる場をつくる。そんな想いを持って櫻本さんはcotreeを立ち上げた。

やさしいつながりをつくる cotree

櫻本さん:

cotreeでやっていることというのはすべて共通していて、やさしいつながりをつくる。ということです。やさしいつながりというのは、その人が弱っているとき、あるいはもっと前に進んでいきたいときに、よりempowerされるようなつながりだと思っています。そのために、カウンセラーだったり、コーチといった専門家との”相手に力を与えられるつながり“やベンチャーキャピタルが経営者に対してやさしくあるための仕組み作りをやっています。

「あなたは誰によって力を与えられていますか?」

もちろん、力は自分で勝ち取っている。っていう人もいる。ただ日常を丁寧に観察してみると、上司であったり、後輩であったり、家族であったり、友人であったり、関わるすべての人たちが何かしら自分に影響している。そして、その影響をきちんと捉えないと本当の意味で良い関係とは言えないではないか。

櫻本さんは、カウンセラーを”人の悩みを紐解いていくための会話の技術を持っている人たち”と定義している。自分が弱っているとき、落ち込んでいるとき、その悩みを認識できるように紐解き、それを次への一歩を踏み出す力に変換してくれる。このような影響というのは、自分自身でも、上司でも、友人でも、与えてくれる人というのはそんなに多くないと思う。ただ、本当は持っていたい能力だ。

だからこそ、カウンセラーやコーチというのは、自分の鏡であったり、上司であったり、友人になりうるのかもしれない。

「仕事がうまくいかなくて落ち込んでしまったとき」「上司に言われた心無い一言で傷ついてしまったとき」「友人とケンカしてしまったとき」これらを自分で上手く紐解けずに絡まってしまっているときに、cotreeを通してカウンセラーやコーチとのつながりを持つことは、自分がその問題と向き合うため、そして解決して次への一歩を踏み出すための力になる。

やさしい人を育てる CoachEd

櫻本さん:

CoachEdがやっていることを一言で言うと、やさしい人を育てる。ということです。やさしい人というのは、”相手の力を引き出すことができる人”だと思っています。上司だったり、親だったり、教師だったり、経営者、影響力を持った人が人の力を引き出す力を持っていれば、そもそもコーチといった専門家は必要無いじゃないですか。なので、コーチングスキル、人を支えるスキル、心理的安全性を生み出して安心してコミュニケーションをとることができる場を生み出す力というのを影響力を持った人は身につけていく。つまり、やさしい人を育てるというのをCoachEdでは目指しています。

「上司が部下の、教師が生徒の、親が子供の、彩り豊かな個性をより輝かせられるように。その成長と成果をともによろこぶことができるように。」

CoachEdにはそんな想いが込められている。世の中の上司たち、教師たち、親たちも恐らくは同じ気持ちだと思う。部下にいじわるしたい上司、生徒の成功を願わない教師、子供の成長に喜びを感じない親、そんな人たちはマイノリティだ。しかし、実際は想いはあるけど結果的に想うようにいかない人たちがマジョリティなのだと思う。

仕事ができることだけが上司の役割ではない。

勉強を教えることが教師の役割ではない。

怒らない優しい親が良い親ではない。

個性を尊重し、尊重される時代だからこそ、相手の個性を彩り豊かにすることがこれからの影響を与える側の役割なのだと思う。そして、CoachEdは以下のこともコンセプトのなかで掲げている。

「人が人を生かし育てるために必要な力を、ひとりひとりに合ったやり方で身につけるための場を提供します。」

今の時代、大人になってから自分の興味のある分野を学ぶために大学に通う人たちが増えてきている。CoachEdも影響力を与える側の人たちの学校になっていくのだと思う。

やさしさでつながる社会をつくる

櫻本さん:

cotreeとCoachEdの2つでやさしい人とつなげる、やさしい人を育てる。結果として、やさしさでつながる社会でつくるというのが私たちがやっていることの全体像。同じ山を2つのルートから登っているような感じです。

櫻本さんは、やさしさを”相手に力を与える”と定義した。ここで言う”力”とは、恐らくは”一歩踏み出す力”とか”自ら考え答えを出す力”なのだと思う。そうした場合、”やさしさでつながる社会をつくる”とは、”答えの受け渡し”ではなく、”能力・考え方の受け渡し”の関係性になるのだと思う。思いつくのが、お腹がへった人が目の前にいた時に釣った魚を渡すのか、魚の釣り方を伝えるのかの話。

きっとcotreeとCoachEdがもたらす世界は、人々が”自分なりの魚の釣り方”を理解していることや、”相手に合わせた魚の釣り方を伝える方法”を理解している世界なのだと思う。彩り溢れるそんな世界。


株式会社cotreeでは、個人向けオンラインカウンセリングサービス(cotree)、自己理解をもとに特性に合った目標設定を支援するアセスメントコーチング、起業家・経営者のメンタルヘルスと成長を支えるescort(エスコート)などのカウンセラーやコーチとのマッチングサービスを展開しており、やさしい人とつながる仕組みを提供している。一方で株式会社CoacEdは、コーチング習得プログラムを提供し、「チームを育てるリーダー」といったやさしい人を増やす仕組みを提供している。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?