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自分の中のサザエさん症候群について|マンガ原稿で収益いくら?⑪

みなさまは『サザエさん症候群』という言葉をご存じでしょうか。
ひと昔、ふた昔前に流行った言葉です。
日本で生まれ育ったある年齢層であれば、誰でも一度は観た事のあるであろう、日曜日の夕方のアレに関する言葉です。
今回は、その件について、まずは早速、マンガをご覧いただきましょう。


今日のマンガ 一人暮らしを始めたときのこと

マンガ初掲載時は春でした。今は秋ですが、引っ越しには諸々安くて良いシーズンです。
この頃は今より物価も安かったはずですね‥

初めての一人暮らしで必要なもの

「一人暮らしを始めてするために、何が必要か?」
との問いに対し、答えは千差万別でしょう‥
今だったら、
「電気とインターネットとスマホ!」が一番かもしれませんね‥
ネットさえ通じていれば、街なかにさえ引っ越せば、飲食品は調達できますし、お店も探せます。仕事だってできちゃいます。
モニター越しに友達と会話もでき、孤独の解消も薄れるでしょう。

しかし、自分が初めて一人暮らしを始めたのは、まだ各家庭にインターネットの時代ではなかった四半世紀前の頃でした。
マンガの仕事だけは続けられるようにと、机とファックス&電話(ネームのやりとりをするため)だけは必要でした。
電話なんてFAXと兼用だったから有線で、コードの届く場所でないと話ができないのですが、話ができればヨシ!でした。
今思えば、リモートワークの駆け出しだったのですねえ‥

「電話とFAXあれば、どんな所でも引っ越せるかも!」
なんて思ったりもしましたが、担当の編集者さんは原稿取りに来なくてはいけないため
「これ以上遠くなるのは勘弁してください‥」
とポツリと言われたものでした。
今ではデータ送信もできるので、データ送信が可能なところであれば範囲が広がっていますね。

この便利さだけ見れば、良い時代であります。

一人暮らしで家電を買う順番は‥?

去年、事情があり不動産会社で1年ほどお仕事していました。
自分がネコと一緒に暮らすためにペット可の今の住処に引っ越してから、ネコが居るため動きにくくなり、20年以上経ちました。
その間、ネットが普及し、生活事情と引っ越し事情もまるで変っていたことに気が付きました。

前記しましたインターネットですが、これは、最近のアパートやマンションでしたら、無料で利用できる部屋も多くあります。
なので、学生さんや一お金がない方は、大抵は無料ネットつきのお部屋を第一条件で探してます。
ただ、無料のインターネットは落とし穴があり、通信速度が物件によって遅かったり、入居者が同時にインターネット利用している場合、つながりにくくなったりなど、ヘビーユーザーほど自分でプロバイダ契約をしっかりしておく方が良さそうだと思うようです。

高〜いお家賃のマンションなどは、wifiで安定したネット環境も揃っているようですが‥

自分のマンガの頃と比べると、一番変わったのはコレかなあ~と思いますね。

マンガの中で、初めての引っ越しにあたり、手持ちで自由に使える額が限られていた時、何をまず買えばいいかと悩んだ私に、姉が
「それなら絶対冷蔵庫だ!テレビだけで食べていけるか!」
と吠えています。

貧乏暮らしをしている場合、食事を買って食べていたらお金がすぐなくなってしまいますので、自炊を選ぶことが多いです。
自分も自炊派ですし、その都度買いに行くとしても、夜型漫画家で店が開いていない場合もあり、保管にも冷蔵庫は必要です。
これを書いている現在は、コンビニで一人暮らし用の便利な商品が出ていますので、
「コンビニのすぐそばに住んでしまえば完璧だ」
となる一人暮らしの人も居そうです。

お金を貯めて、次に買ったのは洗濯機でした。
洗濯は当時近くに母と姉の住む実家アパートがあったので、そこで洗濯機を使わせてもらっていました。
一人暮らしを始めたのが夏場でしたので、始めは洗濯物を運ぶのも楽でしたが、徐々に荷物も重くなって、干して乾いた洗濯物を取りにまた出向くのも面倒になってきて、洗濯機も必要だ!となりました。(笑)

ちなみに、不動産会社に部屋を探しに来る人も色々で、たった1年働いていた間にも、どうしても室内洗濯機置き場は譲れない!となる方も居れば、コインランドリーを使っているので洗濯機置き場はこだわらないという強者まで色々お会いしました‥
そのかわり、光はどうしても必要だったり、自炊を楽しみたいので台所が広くてガスコンロ使えるところを望んだり‥

自分に何が必要かでライフスタイルを選べるのも、最近の生活の強みではありますね。
おかねさえあれば‥ですけども‥

テレビなしの生活が続いた一人暮らし

そうして、私がようやくテレビを買ったのは、冷蔵庫と洗濯機、炊飯器などをある程度揃えてからとなりました。
それまで、日々の情報は、以前から持っていたのか、買ったかで家にあった「CDラジカセ」でした。

「CDラジカセ」って、noteユーザーの方はどの位の方がご存じでしょうか。
CDプレーヤーとラジオと、カセットテープが再生できるプレイヤーです。
当時の私の予算内で買ったとすれば、かなり安いものではなかったかと思います。
記憶がないですが、もしかしたら母が買ってくれた可能性もあります。

余談ですが、その後、壊れたか何かでラジカセを処分してしまったのですが、昔聞いていた音楽を録音していたカセットテープをまた聞きたくなり、パチンコでカセットデッキのついたミニコンポをゲットしました。

マンガを描いていると、手元を動かしている必要があり、目も原稿に向かっていないといけないため、ラジオは大変役に立っていました。
ネームやペン入れるとき以外のベタやトーン貼りなどは、機械的な作業となるので、音楽があるほうが乗り良くできますし、耳が退屈をなごませてくれます。

そういえば自分は、一人暮らしの前から、テレビは何かあるたびにそちらに目をむけなくてはならず、CMの音もでかいのでうるさいからと、観たい番組がある時でなければテレビもつけなくなっていました。

むしろ、ラジオからの情報で物知りになっており、友人宅にお呼ばれした時に、友人夫さんから、
「オオサワさん、テレビないのに何でそんなに色んな事知ってるの?」
と言われたほどでした。
ラジオってすごいですね。

それでも、ラジオのトーク番組で、オリンピックの話や、(長野冬季だったかなあ‥)話題のドラマで盛り上がっていたりすると、どんな話なんだろう?と気になって、やっぱりテレビは必要かなあと思うようになりました。
当時は映画配信なんかもないし、近所にレンタルビデオ店があったため、観たい映画も借りたいし、がんばって金を稼いで会員登録しよう!と、けなげな目標も立てていたり‥

そんなわけで、ようやくテレビを買ったのは、一人暮らしを始めてから2年ぐらい経ってからではないかと思います。

自分の中の『サザエさん症候群』

一人暮らしを始めて、ようやく買ったテレビは、今はなき「テレビデオ」。
もうさすがに生産はしてないでしょう‥
テレビとビデをデッキの複合器です。
当時はレンタルビデオ店があちこちにあり、住んでいたアパートの近所にもあったので、そこで会員登録をして、ビデオ三昧するぞ!と意気込んでいました。(笑)
自分の部屋に、動画がやってきたのでした。

ちなみに、マンガでしたら出版社からの雑誌の配本で毎週毎月数冊のマンガが届いていたため、目を通すのすら大変な状態で、娯楽には不自由はしていませんでした。

一人暮らしも随分となじみ、ドタバタしながらも漫画の仕事が繋がって来て生活も少しずつ安定しており、普通車の教習所にも通い始めました。

どれどれ、最近流行りのドラマやアニメを観るぞ!
久しぶりの番組も観るぞ!と、毎朝新聞のテレビ欄(これまた古いですね)をながめるのも楽しみになりました。

戦後の経済復興期で言うところの三種の神器(冷蔵庫・洗濯機・テレビ)が揃い、貧乏していましたが、ようやく中流家庭の仲間入りです(笑)

戦後の経済復興期は、ほんとうに、冷蔵庫と洗濯機とテレビが三種の神器と言われて、この3つが揃えば中流家庭の証!って風潮があったのですよ‥

『サザエさん』で涙が止まらない‥

ようやく生活も安定してきたある日。
日曜日の夕暮れでした。

夕飯に、イワシの焼き魚、野菜炒め、炊きたてのゴハン、お味噌汁。
料理をサボってばかりの今では信じられないほど、きちんとした夕飯を整えて、サザエさんを観ながら食事を始めました。

サザエさんで、特に何か自分の気に障るテーマをしていたわけでもなく、不愉快な会話をしていたわけではありません。

だって『サザエさん』ですよ?あの、国民的アニメのトップを飾った‥。

観ながら、食べている間に、涙がモロモロとこぼれてきました。

なんで泣いてるのか?自分でもわかりません。

ただただ、涙がホロホロとこぼれ続けます。

泣きながら食べるメシのマズイことマズイこと‥味なんかわかりません。

「自分はとうとう、頭がおかしくなってしまったのか。」

マンガの仕事も割と落ち着いて依頼が来るようになってたし、テレビも買ったし、車の免許も取り始めたし、これからまだたくさん、色んな楽しみがあると夢いっぱいに過ごしていたはずなのに‥

食事中、サメザメと泣いて、食事がすんだ頃にはサザエさんも終わり、泣きやんだあとはマンガ描きに戻ったか、また普段通りに過ごしていたと思います。

それでも、その日のことが気になって、ある日、たまたま何かの用事で姉が電話をかけてきたときに雑談になって、ふと、その時の話をしてみました。

姉は、
「それは、『サザエさん症候群』ではないのか?」
と、言いました。

現在、『サザエさん症候群』で検索すると、
「日曜日の夕方から深夜、翌日からまた仕事をしなければならないと言うことを思い出して憂鬱になってしまうこと」
と、出てきます。

しかし、通勤の必要もなく、毎日好きな仕事であるはずのマンガを描いて暮らしている私には、必要なのは締め切りを守ることで、日曜日なんて関係ありません。

しかも、当時のサザエさん症候群の説明とは違っていると思います。

「それはサザエさん症候群ではないのか?」
と言われた私は

「確かにサザエさんは観ていたが、サザエさんで誰が何を言ったとか、自分の見たくないテーマだったとかはなかったのだ。
しかも、サザエさん症候群って、家庭に憧れてる人が家庭を持てないストレスで、見ると鬱になるってやつではなかったっけ?
むしろ自分、家庭だのの縛りが嫌で離婚したようなものなんだが。」

と言いました。
姉もそのあと

「そういう解釈もあるかもだが、進学や就職などで親元から離れて一人暮らしを始めた人が、アレを観て孤独感に襲われる場合もあるそうだ。
まあ、どちらにしても、それを観て心を病んでしまう人が多くいるということは、意外と罪なアニメかもしれんな。」

と言って、その話は終わりました。

その後、サザエさんを観て泣くことは1度もありませんが、あれはいったい、なんだったのかと、たまに思い出します。

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