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その19 ジョブ・クラフティング

 このテーマは、少々難しいので、きちんと説明できるか少々自信がありません。こういうことかなという感じでお話します。言葉としてはジョブ(仕事)をクラフティング(手作りのものを作る)なのですが、クラフティングは革細工とか陶器などなどを手作りする皆さんも知っているクラフティング、ご家庭によっては“オカンアート”呼ばれることを指します。要は「仕事を手作りしていきましょう」ということです。

 一般的に、仕事は私たち従業員が組織・会社からタスクとして与えられるものなのですが、それを自分にとって有意義、有意味なものにしていこうということも含まれます。

ケース「俺」(PMI)

 私は、入社以来30数年ずっと事業部門にいて売上を上げるための仕事をしてきました。30年のうち後半戦はどちらかというとマネジメント面の仕事が多かったわけですが、経営管理や経営企画の皆さんが行っているような専門的なオペレーションも知識も経験がありませんでした。約1年半前、M&Aで取得した会社の経営統合(PMI)の担当に指名されたときの話は以前書いた通りです。

「俺」の仕事の意味

 PMIで協力してくれる経営管理の皆さんは財務、人事、法務のプロフェッショナルです。PMIはこういった領域を網羅して取得した会社との「経営」、「業務」、「意識」を統合していく作業です。ガバナンス面では親会社と同レベルの管理の仕組みを取り入れる必要があります。組織にとってもPMIは投資効果の最大化のために必須のタスクであることに間違いありませんし、私自身がそれを目指しています。一方で「俺」自身が自分にかけたタスクは、PMIを知ること、どのような活動があってどのように進めるのか、「未知の世界を楽しむ」でした。また、もう一つの狙いは社内のプロフェッショナル達の「仕事の仕方を覚えて、共通の言語を獲得する」ことでもありました。

 ネットや本にも多くの情報がころがっていて、基礎的な理解は進みますがリアルな業務としては、書いてある通りには進みません。この部分はこの稿の本旨ではないので割愛します。
 整理すると、「投資効果の最大化」は組織のミッションです。「俺」の意味づけはミッションを前提にした、自己成長です。そこには知識領域の拡大が含まれますが、それに留まらないことは、このブログを読まれている皆さんにも想像が難くないのではないでしょうか。

見えないモノに力を注ぐ

顕在化しにくいモノに力を注ぐ。また、ぶっ飛んでいる私の論調にこの辺で読むのをやめている方もいらっしゃると思います。もう少しでこの段は終わりますのでお付き合いください。PMIの中で一番気を付けていることをお話します。それは彼の会社を理解することです。どんな領域の仕事をどのようなスキルを使ってどのような成果を上げているのか、どのような人が働いているのか徹底的にヒヤリングしました。そこには「買われてしまった」人の心情や価値観を理解することも含まれます。

組織的な意味としては、組織の力、個人の力を変わらずに発揮していただくことがあります。「俺」にとっての意味は、それまで知っていた工事案件の入札者の立場からもう一つレイヤーの高い入札仕様書を作る皆さんの知識、知見に触れる機会を作りたかったということでした。それは彼の会社の書棚には、技術、法令は当たり前ですが、それ以上に設計に必要な細部にわたる資料が備え付けられていたことからもわかります。
そういった相互理解が前提でなければ、先に挙げた「業務」「意識」の統合はなしえないと考えています。 

3つのクラフティング

ここで、クラフティングについて整理していきたいと思います。
ここまで例示した「俺」の言動を分類してみます。
関係性のクラフティング
うっかりすると、買われた側、買った側の対立関係に陥る可能性をコミュニケーションという道具を使って「相互理解」つまり協創の下地を作るということを事例として挙げてみました。「見えないモノに力を注ぐ」ご参照。ケース「俺」は新たな関係構築についてお話しましたが、関係性を変えることもクラフティングに含まれます。
意味のクラフティング
「俺」は「未知の仕事を楽しむ」ことや「(管理部門との)共通言語を獲得する」、「仕様書を作る皆さんの知識、知見に触れる」という意味付けをすることで「やりがい」を作りました。(『「俺」の仕事の意味』ご参照)
このあたりの意味づけについては、アドラー心理学でも語られていることですのでご興味のある方は、下段の参考文献も読まれるとよいかもしれません。
プロセスのクラフティング
ケース「俺」では出てきませんでしたが、プロセスのクラフティングは皆さんにとって一番身近なエピソードになるのではないでしょうか。
日々の業務の中でプロセスを描き、手順書を作成されてそのプロセスを実践する中で見直し、改善するなどの活動はすでに日常に組み込まれているように、私には見えます。

ここに挙げたようなケース「俺」は皆さんご自身がこれまで実践してこられたことかと思います。このように身近な話題を言語化・構造化することで私自身の理解を深めることに役立てています。3つのクラフティングの類型でご自身のクラフティング事例を整理してみてはいかがでしょうか。

いかがでしたか、あまり上手な説明になったか不安も残ります。ご不明な点、ご質問、ご意見は私のメール(ooshimatomohiro@gmail.com )でもうかがうことができます。

次回はジョブ・クラフティングと密接な関係があるエンゲージメントについて取り上げたいと思います。

参照)川上真史共著 2021.10「人事のためのジョブ・クラフティング入門」株式会社弘文堂
参照)岸見一郎 2018.6「アドラー 人生の意味の心理学」NHK出版

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