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わざと速度を落としてみたら、まったく違う世界が見えてきた

「あるいていく!!!」

最近の息子は、自己主張が激しい。

朝の一番忙しい時間帯に、幼稚園まで歩いていきたいと言う。

自転車なら5分でつくけど、息子の速度に合わせたら15~20分はかかる。

朝の送りは夫が担当。
時刻は8時40分を過ぎている。
9時には会社にいなければならない夫は、体全体からイライラを発している。

そして、一度主張を始めたら、息子はテコでも動かない。無理矢理連れて行こうとして、何度もしっぺ返しをくらった。

さてと。
腹をくくるか。

「私が連れて行くから、会社に行っていいよ。」

夫に伝えると、無言で首に下げたネームプレートを手渡してきた。両面に、子どもたちの名前とクラスの色がそれぞれ印刷された名札だ。

私も無言で受け取り、振り返らずに進んだ。

自転車の後ろにはヘルメットをかぶり、自分の荷物を持った娘が乗っている。その自転車を押しならがら、チョロチョロする息子に声をかけていく。

東京は圧倒的に、電動自転車を使用する人が多い。宇都宮では基本車だったから、そんなにすれ違ったことはなかったけれど、スピードが出て、意外とヒヤっとする。

息子はあちこち見て歩き、後ろ向きで歩き、急に歩道の真ん中を歩き出したり、アクロバティックに動く。

幼稚園まで、私の心臓はもつかしら。

息子は私の心配など関係なく、自分の見たい物を観察している。

「かざぐるま!」
「せいそうしゃに、さぎょういんさんいたよ」

あちこち見て回って、急に立ち止まって観察している。

後部座席からは
「早く幼稚園に行きたい!」
と、娘が文句を言う。

みんな、勝手なこと言って!
と、心の中でプリプリしていたけど、せっかくだから周りの景色を楽しもうと切り替えた。

梅が咲いている・・・
メジロがいる!
パンジーがキレイだな

いつもは猛スピードで自転車を漕ぎ、脇目も振らずに往復している。
でも、こうやって息子のスピードで歩くと、この世界にはたくさんの発見があって、豊かな場所なんだと気づく。

いつの間にか、春の足音が近づいているんだ。
娘もあと2か月弱で卒園する。
息子は年中のクラスに慣れるかな。

そんな、ちょっと先の未来を想像してみた。

息子は相変わらず、ごみ清掃車にゴミを入れる作業員さんに釘付けだ。
この子にとっては、毎日が新鮮なんだ。
何度見ても、見飽きないんだろう。

私はどうだろう。
周りを見る余裕もなくなっていた。

最近、外出して発見はあっただろうか?
季節の変化を感じただろうか?
大きく息を吸って、新鮮な朝の空気を吸い込んだだろうか?

ちょろちょろする息子を促しながら、なんとか幼稚園に到着。
私の気疲れなど、まったく気にせず、2人とも自分のクラスへ足早に歩いていった。

時刻は午前9時すぎ。
いつもだったら、ウォーキングから自宅に到着しているころ。
ここまで来たら、私もいつもと違うことをしよう。

幼稚園の駐輪場に、そのまま自転車を置いて、そこからウォーキングをしてみた。いつもと違う景色は、自然と心の奥からワクワクを引き出してくれる。

そういえば、この近くのお寺をいつも素通りしてたな。参拝してみようかな?

そんなことを思いついて、お寺へ向かう。
境内は誰もいなくてシンと静かだ。
お堂に向かって祈る。

私は祈るのが好きだ。
祈るとは、目に見えないものと話すこと。
それって自分との対話でもあるんだよね。神様や仏様ならどんな望みを持っているか、素直に答えられる。困っていたら、助けてくださいって言える。

本当は夫や自分に言ってあげないとならないのにね。なかなかに頑固な自分と相対する。
語りかけをしていたら、視界が広がった。
心のモヤモヤはまだ残っているけど、濃さが薄くなった気がする。軽い。

お参りを済ませ、幼稚園の駐輪場に向かう途中。

「欲張らないように」
そんな声が聞こえた気がした。

肝に銘じよう。

自転車で家に帰る途中、なんだかいろんな鳥のさえずりが聞こえてくる。

普段、意識していないから、驚く。
こんなにいろんな種類の鳥がいるの?それとも今日は特別?

違うチャンネルにフォーカスすれば、たとえ同じ場所でも着目するものは違うし、聞こえてくるものも異なる。

だから、息子は歩いていきたかったんだ。
だって、こんなに新鮮でワクワクするんだもん。

4歳の息子から教わった。
ゆっくり歩いてみたら、普段見えないもの、聞こえないものが聞けた。
この世界は、まだまだ驚きに満ちている。

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