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1時間半の登園

今日は幼稚園の始業式。

息子には何度も、

「次は、真ん中組になるよ!◯◯組で、△△先生だからねー!」

と伝えていたが、もしかしたらプレッシャーに感じていたのだろうか。

今日が始業式だと知ったら、大荒れ。途中、裸足のままベランダへ出ていってしまった。

話しかけると余計にヒートアップするので、落ち着くまで遠くで見守っていた。すると、切り替えられた息子は

「ママ!あし、よごれちゃった。ふいて!」

と、話しかけてきた。

自分で切り替えられたようだ。
最近は、コントロールの術を少しずつ身につけている。

8時25分。
そろそろ、出発の時間だ。

自転車で行けば5分で行ける。

しかし、結局、自宅に帰れたのは10時だった・・・

1時間半の間、何があったか振り返ってみよう。


まずは出発の時点で、行き渋りが発動。
変化を敏感に感じ取り、葛藤しているのだろう。

息子は自由に遊ぶことを好む。
けれど、クラスが始まったら先生のお話を聞かねばならない。タイムスケジュールをこなす必要もある。それがきっと窮屈なのだろう。

結局、なんとか宥めて出発。
いつもどおりストライダーにまたがり、直進する。

自分の気に入っている道を通り、踏切を渡る。
何度も踏切を通ったり、戻ったりとちょろちょろしている。人や自転車とぶつからないか、ヒヤヒヤする。

そして、幼稚園近くの踏切に来た。ゴールまでは目と鼻の先。しかし、なかなか幼稚園に行かない。幼稚園に近づいては踏切に戻り、何本もの電車を見送る。

そして、何度目かの

「この電車を見たら、幼稚園に行こう」

に納得してついてきてくれた。
やっと門の前に到着。

しかし、いつもと違うことに気づく。

たくさんのお友達や保護者が行き交っている。
この1か月の様子と違うことを察し、泣き出す。

「こわい。いきたくない。おうちにかえりたい。」

「こわいよね。きんちょうするよね。でも、ママ、お仕事あるから今日は幼稚園に行こうか」

「いやだ、いかなーーーい!!!」

この繰り返しで、しまいには地面に寝転んで抵抗する。

抱っこしようとすると、脇をぎゅっとしめて手を差し込まれないようにしている。足はかかと落としをして、抱っこされないように防御している。小さいながらも必死さが伝わる。

息子の洋服には、地面に落ちている枯れた桜の花びらが大量についていた。

周りの子は制服を着て、ママやパパと手を繋いでいるのに、わが子は私服で寝転んで抵抗している。

比較しないようにしても比べてしまう。

「こわい」と泣き、門にしがみつき入らないように抵抗する息子を見て

「がんばれ」「おつかれさま」

と声をかける人もいれば、大笑いしている人もいる。

この世の縮図を見るようだ。

そこで、門にいた先生が

「今日はママと一緒に教室に行けるよ!」

と言ってくれた。すると、息子の抵抗がだんだんとおさまる。

ママの手をぎゅっとつないで、立ち上がる。

自分で気持ちが切り替えられた。

今日2度目の成長。
同時に、こんな気持ちもわいていた。

早く帰って、仕事がしたいのに!
先生なんてことを言うんだ!行きたくない!

私こそ、今にも叫び出したい気持ちだ。
そう思ったけど、ぐっとこらえて、息子に声をかける。

「〇〇くんの教室はどこかな?ママに教えて」

と言って、歩みを促す。
息子の足取りが軽くなっているのが分かる。

仕事はいいや。もう野となれ、山となれ

途中、息子の担当の先生も合流してくれて、3人でクラスに向かう。

やっと教室に到着した。
年中さんは2階のお部屋。すぐそばに電車が通っていて、踏切も見える。
ここなら楽しく1年間が過ごせるかもしれない。

「じゃあ、ママそろそろ行くね」

そう伝えると、途端に不安そうな顔をする息子。

すかさず先生が、
「ここからママにバイバイしようか!下から出てくるかな?」
と、伝えてくれた。

先生の機転が素晴らしい!

素早く下へ移動。
靴を履き、下から息子を見上げる。
ママが出てきて、少しだけ嬉しそうな顔していた。

「バイバイ~」

と言って、幼稚園を後にした。

正門に置きっぱなしにした、ストライダーと水色のヘルメット、息子の相棒のネコの人形がまとめて置いてあった。

誰かがまとめてくれたのだろう。
私は必死だったから、適当に置いてしまったのに。

電動自転車にストライダーを乗せて出発したら、なんだか分からないけれど次から次へと涙が溢れてきた。

本当は早く仕事がしたかった。

けれど、今が10時だからライティング1時間分を失っただけ。この1時間、息子と向き合えたから安いもんだ。

そう思おうとしても、子どもを優先にして蔑ろにされたと思っている自分がいる。頭では分かっているけど、心は悲しんでいる。だから、勝手に涙が流れるんだ。体が訴えかけている。

そして、先生たちの言葉を思い出す。

「〇〇くん、よく幼稚園まで来たね!」

「〇〇くんは繊細な子です。それってとても大切なこと。その違和感をちゃんとイヤだと言えるのが良いんですよ」

「〇〇くん、よく教室まで来てくれたね。」

息子も自分の想いと折り合いをつけて、幼稚園に行った。

私と同じだった。

だから、あんなに抵抗したんだね。
ママも悲しいから、よく分かるよ。
イヤだったね。怖かったね。それでも、よく受け入れたね。

息子の年中さん初日が良きものになったなら、私のライティング1時間分は価値があるよ。

よく頑張ったね。
ちゃんと向き合った私は、めちゃくちゃえらいよ。

今度は自分を労い、家路についた。


帰りのお迎えに行くと、

「ぼく、おにいちゃんになったよー」


と、満面の笑みで息子が駆け寄ってきた。


うん、これでよかったんだ。
今朝の葛藤が全部、報われました。

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