見出し画像

いや、エビの頭は好きなんですけどねあたしゃ

友人と天ぷらを食べにいった。銀座の天ぷら屋、中どころの店ではあるがふだん小汚い恰好しかしないので「ちょっとはマシ」なスタイルでいく。呑みのお誘い、次回からかからなくなってしまってはなんともまずい。

口開けの17時から彼女は席を取ってくれていた。5分ほど前に到着すると、店の前で開店を待っているのは外国人ばかり。

こちらが異邦人かのようにカウンター席へつく。席の間隔、体格のよい人向けではない。となりのバックパッカー風カップルに押し寄せられるように着席。
天ぷらそのものは、お値段なりの中どころの味。高級店に通いつめるほどの財布のわたしではないから充分満足である。

呑み助同士、おきまりに加えてちょいちょいと黒板に書かれたおすすめを頼んでは杯を傾ける。そんなんしているうちに隣はもう次のお客。
尻の落ち着き先をバーへ変えたのち連れの彼女「お隣さん、エビの頭とか手ぇつけられなかったみたい。彼らにはてんやのほうが満足度高かったんじゃないかなぁ」。

てんや、チェーンであのクォリティはなかなか高いとわたしも思うのである。揚げ油の回転をケチってないのだろう。折々季節のネタ(かならずしも高価でなくとも、季節を感じさせるネタというものはある)も提供するし、ごはんもしゃきっと炊かれている。天丼でもお好みで別皿に出してくれるのもまた気が利いている。

「そうだねぇ、カウンター越しに『これ何?』『シュリンプ』みたいなやりとりはあったけど、こんなセミの抜け殻みたいなの一品に仕立てるなんてボラれたくらいには思ってるかもね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?