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「蜂と蟻に刺されてみた」読んでみた!

人間の皆さんこんにちは。大浮藻です。

今回はジャスティン・O・シュミット博士の【蜂と蟻に刺されてみた】の感想を書いていきます。
題名のとおりに虫が出てくる感想となっておりますので(虫の画像は載せていません)、虫の名前を見るのも嫌なんだ!!という方は覚悟を決めるかページを閉じるか、どちらかでお願いいたします。

【どんな本だったか】
知っているひとは知っているかも?なシュミット指数(※シュミット刺突疼痛指数)の生みの親、シュミット博士による、蜂、蟻に関しての本。
ハチやアリの生態だったり、進化史だったり、研究のサンプル採集時に刺された時の話だったり、蜂と蟻に関係した話が読めます。ハチ・アリ特化のファーブル昆虫記みたいな感じです。

シュミット刺突疼痛指数(しとつとうつうしすう)とは、「虫にさされた時の痛みの度合い」です。シュミット博士、自分でハチやアリに刺されてこの指数を作っています。タイトル通り、「蜂と蟻に刺されてみた」ですね。

こちらの刺突疼痛指数、セイヨウミツバチ(Apis mellifera/アピス・メリフェラ)に一度刺された時の痛みをスケール2として、それを基準に、痛みをレベル1からレベル4までに等級分けしています。中には人間の皮膚を貫けるほどの針を持っていなかったりして、レベル0(ほとんど痛みを感じない)に等級分けされた虫もいるそうです。蜂とかに刺されて痛くないなんてことがあるんですね。

シュミット指数は、2015年にイグノーベル賞を受賞しています。シュミット指数、という言葉に聞き覚えのある方はこのタイミングでシュミット博士を知った方も多いのではないでしょうか。わたしもこの賞の受賞でシュミット博士の名前を知りました。

【めっちゃ面白い本です!】

知的好奇心と虫嫌いのはざまで読んだ本なのですが、とっても面白かったです。蜂やら蟻やらについて知らなかった知識がたくさん手に入りました。知的好奇心が満たされます。ファーブル昆虫記が好きだった人にはぜひおすすめしたい本です。

*ハチとアリは、メスしか刺してこない(オスは刺針を持たないが、針のように尖った腹部の一部で刺すふりをしてくる)そうなんです。(アリって〝刺す〟んだ、という驚きもありました。噛むんじゃないんだ……)
何故かというと「卵を産む器官(産卵管)が毒針に転用されるようになったから」だそうで、生き物の合理性というか、理由の美しさ、みたいなものを感じてときめいてしまいました。こういう話にときめきやロマンを覚えるタイプの人間にはぜひ読んて欲しい本です。
確かに、産卵管が毒針に進化したなら、そもそも産卵管を持っていないオスは毒針を持てないわけで、そのへんの〝なるほど〟が読んでいて楽しいですね。パッと見ただけだと理由の分からない進化も、過程を辿ったときに納得に変わるのが生物の面白いところだな〜と思います。最初から毒針を搭載した生き物なんていないはずで、「じゃあどうして毒針を獲得したのか、毒針をもつ生き物とそうでない生き物がいるのか」「同じ種でもオスとメスで違う発達をしているのは何故か」という疑問に綺麗な答えが見つかった時の嬉しさみたいなものが良いんですよ〜。

 *日本で生まれ育っていると、「大きいアリ」を想像してもだいたい1センチくらいのアリを想像すると思うのですが、どうやら世界にはもっと大きい蟻がいるらしいと知って、怖くなりました。しかも刺されると痛いらしい。絶対にイヤ〜!!
シュミット指数を作る際、シュミット博士は「ミツバチには誰だって一回は刺されたことがあるだろうから、評価の基準としてぴったりでは」というような理由でミツバチに刺された時の痛みを基準にしたそうなんですが、そんなにみんな刺されるものなんですかね!?わたしまだ蚊に刺されたことくらいしかないんですけれども!?アメリカってもしかしてその辺にハチがぶんぶん飛んでたりするんでしょうか。こわすぎる。

わたしは日本で生まれ育っているし、海外に行ったことはあってもそこでアリを見たことがなかったので、アリって全部ちっちゃいんだろうなって思っていたんです。大きくともせいぜい自分の小指の爪くらいの大きさしかないだろうな〜、みたいな(日本で見かける〝大きなアリ〟のクロオオアリでも1センチくらいの大きさしかない)。
でも、海外だと3センチくらいあるアリもいるらしくて、勘弁してくれの気持ちになりました。3センチくらいのアリが行列を作っているのとか想像したらゾワゾワしちゃう。日本に住んでてよかったなと思ってしまいました。3センチくらいの大きさのアリの行列、見たら泣き叫んで怯える自信がある

*2018年頃に話題になっていたヒアリについての話もあったんですが(2018年頃、外国から入り込んだヒアリが日本に定着してしまうのではないか?というトピックが話題になっていました)、思いの外ヒアリはとんでもない生き物らしく、

〝「ほぼすべての人間が無条件に、反射的にヒアリを忌み嫌う。誰もが憎しみを募らせるようなこと、非難されて当然のようなことを平気でしてくるのがヒアリなのである」〟(本文引用、ウォルター・シンケルによるヒアリについてのコメント)

というコメントがあるほど嫌われているみたいです。どんだけ嫌われ者なんだ。

実際にいくつかの【ヒアリ嫌われエピソード】みたいなものも載っていたんですけど、確かに定着してほしくない生き物ですね。他のアリの巣から他のアリの幼虫を奪ってきて食べちゃうのなんか在来種のアリ目線でも嫌だし、人間目線なら触っただけでめちゃくちゃ刺してくるのが何よりイヤですね。そんなアリ来てほしくない。〝非難されて当然のようなことを平気でしてくるのがヒアリなのである〟本当にそう。イヤですね〜。

そんなヒアリですが、他のアリを駆除したりして、競合する生物がいなくなった隙に、脅威の繁殖力でニッチに入り込み、定着するのが得意な生き物らしいので、在来種のアリを大事にする、無闇矢鱈に駆除しないのがヒアリの定着を防ぐ一番いいやり方なのかなと思いました。

*〝刺されると一番痛い昆虫はサシハリアリです〟とシュミット博士がお墨付きを出すくらいに〝刺されると一番痛いアリ〟を、成人の通過儀礼につかう民族がいたりと、人と虫との文化についても触れられていてとにかく全方位に面白かったです。成人の儀でアリに刺されまくるなんてどんな拷問なの……。

その他にも〝うっかり舌を刺された時の痛み(※)〟などのたくさんの面白い話があったので、興味のある方はぜひ!
(※自転車をこいでいて、新鮮な空気を吸いたくて口を大きく開けたところ、ミツバチが飛んできて博士の舌を刺したそうなんですけど、めちゃくちゃ痛かったそうです。口に虫が入るのもイヤなのにさらに刺されるのはもう、ほんとに泣きっ面に蜂だなと思いました)
 
蜂も蟻も社会性昆虫なので、社会性昆虫(※巣を作り、役割分担をして生きる昆虫)の進化史の話が出たり、逆にハチだけど単独で生活する種の話が出たり(アシナガバチとか)、巣を作らないハチの話が出たり。多岐にわたるトピックで最後まで楽しかったです。蜂のメスはオスとメスを生み分けられる、みたいな話もあって、虫は嫌だけどこういう昆虫の話は好きなんだよね~!ってワクワクしながら読めました。

専門的な内容は多少出てきますが、蜂と蟻という身近な虫を取り扱った本なので、中学生くらいでも虫好き・生物が好きなら難なく読めると思います。

個人的には他の国のアリの紹介を見ていくうちに、どうして日本には大型のアリがいないのか気になりましたが(環境のせいなのかな?)、でっかいアリがそのへんをトコトコ歩いてるのもイヤなので考えないことにします。アリの小さい国で良かった。


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