熱帯 佐藤哲也

「小さな多々礼島の住民には過酷な夏をやりすごすために夏眠を取る習慣があっ た。初夏までに体重を増やして脂肪を貯え、盛夏は泥の下に潜って眠るのである。父祖伝来の秘技であり、この技によって多々礼島の人々はおよそ五百年にわたって夏を生き延びてきたという。(中略)隣の多々朗島に住む業つくばりな連中が海を渡って多々礼島の人々の真上に稲を植えるようになったからである。稲は夏眠中の人々から容赦なく養分を奪い取った。」(熱帯P5より抜粋)

 これが、物語の始まりです。もうなんなんだろう、これは。と思いますよね。以下文中に出てきた言葉、セリフを並べていきたいと思います。

・不明省 ・反伝統的室外機 ・事象の地平の彼方 ・オネイロス ・大日本快適党 ・部長もどき ・課長もどき ・プラトンファイト ・エアコンを止めて頭を冷やそう ・CIA   ・KGB  ・神々の父なる神 ・バランジン中佐 ・保管五課 ・主体獣アンガジュマン ・水棲人 ・金庫 ・わたしの年金を要求するつもりだ ・うんちが出ました。うんちが出ました。でも変わりません。・向こう側が新天地かもしれません。

 すっきり明快な物語を求める人にはオススメできない物語だと思います。昔の自分なら、途中で投げ出してしまっていたかもしれません…。水棲人は可愛いなと感じました。話をうまく説明できる気がしないのだけれども、どうやって筆者の中からこの物語が生まれたのか。熱帯という名前の通りに、じめじめ・ねっとりを背中に感じながら読みました。

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