時事ニュース/探偵が切る(汚職事件)

「千代田区のドン」による汚職事件で、警視庁が一罰百戒。首都・東京にも残る癒着の悪しき慣例は解明できるのか?捜査の行方に注目が集まっている。
【本文】 
自民党派閥のパーティー券を巡る裏金問題を、最強の捜査機関・東京地検特捜部が華々しく捜査する裏側で、東京都千代田区の汚職を巡って、元区議会議長が警視庁に逮捕されたのは1月のこと。
 罪名は、千代田区立の小学校の改修工事などについて、業者側に一般競争入札に応札すると業者の数や、最低制限価格の近似値を教えていたとする官製談合防止法違反容疑。有り体に言えば、懇意な業者が落札できるよう、情報漏えいしていたという構図だ。
 逮捕時は6期目だったというこの元区議会議長が慕っていたのが、かつて都議会で圧倒的な権力を誇り、中央政界にも影響力を持つことから「都議会のドン」と呼ばれた内田茂氏(2022年死去)だ。ある区議会関係者は「逮捕された元区議会議長は、同じ千代田区出身ということもあり、内田氏の『一番の子分』を気取っていた」という。
 親分の威光を傘にしてか、この元区議会議長は業者間との癒着を深め、区役所の幹部を通じて一般の職員に入札情報を漏えいさせるよう要求していたという。同時に逮捕された元区部長は新聞各紙の取材に、「上司から言われて元区議会議長に情報を教えていた」と話しており、癒着の根深さをうかがわせる。
 実際、警視庁は2月に入って、さらに3件の入札に関する情報を漏えいした容疑で、元区議会議長を再逮捕している。捜査では、元区議会議長が地元の業界団体の求めに応じて、応札する業者の数などを漏えいし、業界団体側が受注を調整していた疑いも明るみに出ている。元区議会議長がパーティー券の購入などで、業者側から見返りを受けていたとの一部報道も出ており、警視庁は今後も「千代田区のドン」について、業者や役所との癒着を徹底的に解明するとの憶測がもっぱらだ。
 なぜ探偵が今回の事件を取り上げたのか。地元の有力者である議員が、懇意にしている業者のために、役所に圧力をかける。時には、役人も一緒に美味い汁を吸う。実はこういった構図は、全国の自治体で未だに悪しき慣習として残っており、各都道府県警は定期的にこういった癒着を摘発している。まさに「一罰百戒」なのだが、特捜事件などと比べ、ニュースバリューの地味さから大手マスコミ、特に全国ニュースでこの手の事件が報じられることは少ない。
 今回の事件は事前に、市役所職員の「有志」らによる告発文が関係業界で出回るなど報道が先行した面もあり、警視庁としても「捜査しにくい事件」だったと思われる。それでも、立件をあきらめなかった背景には、「一罰百戒」への並々ならぬ執念がうかがえる。
 権力を笠に甘い汁を吸う構造は、自民党のパーティー券問題も、千代田区の汚職事件も何ら変わらない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?