東京都若年被害女性等支援事業の受注団体の選定方法について

国会図書館のwebアーカイブの公募時資料から、平成30年度と令和3年度の東京都若年被害女性等支援事業の団体の選定方法について整理する。なお、複写禁止でありメモから起こしているため、不正確な部分があるかもしれない。

選定方法の概要

選定方式

企画書の競争により団体を選定する方式であり、「企画競争」や「プロポーザル」と言われる方式である。東京都の類似事例としては設計業務等のプロポーザル及び指定管理者の選定がある。ただ、同一条件業務の4団体同時選定は、東京都に限らず全国的にも珍しいと思われる(私は聞いたことがない)。
また、プロポーザルや企画競争は選定後に自治法上の随意契約*1をするのが普通であるが、本事業については選定後の扱いが不明である。
なお、自治体によって企画提案とプロポーザルは同じとしたり、提案対象が異なるとしたり統一されてない。
*1 企画入札方式とする情報もあるが企画競争と入札は論理的に矛盾する

選定プロセス

選定プロセスは大きく以下の2段階にわかれている。
①応募と資格確認
通常は「参加資格確認」と呼ばれているもので、企画競争を実施する要件を備えているか団体の基本的な事項を審査するもの。
②企画提案と審査
参加資格が確認された団体が提出する企画提案書を審査・評価する。女性支援事業の審査では選定委員会の場で各団体がプレゼンを実施している。

選定スケジュール

選定スケジュールは下表のとおりである。

企画提案のスケジュール

R3の応募開始日はpdf作成日からの推定である(機会があれば東京都公報(特定調達公告)を調べようと思う)。応募開始から応募締め切りまでの期間が1週間程度となっている。

応募と資格審査

応募と資格審査の条件は下表のとおりである。

応募資料と資格要件

アウトリーチの実績を参加要件と定めているのが特徴的である。メモし忘れたが、当該実績はH30のニヶ月からR3は三ヶ月と変更されてたように思う。

企画提案項目と評価

企画提案項目は下表のとおりである。

企画提案項目

アウトリーチの方法と頻度を提案させている。仕様書の「声掛けや 相談支援を原則として週1回程度」の達成状況について、暇空氏と弁護団で争われているが、回数や方法の条件が最も具体的なのは本提案だと思われる。契約的にも提案内容の履行義務があるため、本来は提案の履行状況を明らかにすべきであろう。

企画提案の評価方法(メモに疲れたので一部のみ)

企画提案は、各委員ごとに5件法によって評価される。最終的な点数の算定方法に明記はないが、全委員の評価点の合計値によって順位付けがなされているのではなかろうか。

見積書

企画提案やプロポーザルでは、提案時に提出する見積等は提案内容の実現性の確認のために用いられ、契約時の拘束力はないものとされる。また、通常は団体を選定した後に見積書を提出させ、発注者が設計書組んで予定価格とし随意契約するプロセスを踏む。
本事業でも提案時に経費内訳を提出させると共に選定後の見積書提出を伺われる記述がある。

(9)本案件は、提案書に加えて経費内訳書の提出を求めるものであるため、見積書は、 経費内訳書に記載された金額以下でなければならない。

企画提案募集要領 付帯事項

本事業選定方法の課題・疑問点

企画提案の仕様書への反映

例えばアウトリーチの方法及び頻度を企画提案させている。団体選定後に仕様書を企画提案の内容に沿ったものとした上で随意契約を締結する必要がある。全団体共通の仕様書では、仕様書と各団体の実施事項に乖離が生じトラブルのもととなる。

周知の不徹底(期間・方法)

応募開始から締め切りまで1週間ではあまりに期間が短い。東京都の公園指定管理者の公募では、公表から応募締め切りまで2ヶ月程度の期間を設けている。また、東京都の電子調達システムで結果の検索ができず、同システムで周知していない可能性がある。

上位4者選定

自治法上の契約の相手方の選定の原則は「最も安い者(価格競争)」、次いで「最も優れている者(総合評価)」で、更なる例外として「この者しかできない(随契)」を適用することができる。「上位4団体と随意契約(4番目と随意契約)」という選定は自治法と整合的ではなく、前例もほとんどない。4番目の相手と契約することの法的整理が必要であろう。なお、国交省の一括審査方式は「入札無効」を組み合わせることで複数案件について「最も安い者or最も優れる者」と契約する建付けとなっている。
また、参加者が限られ履行時も受発注者間がアンバランスな力関係にある本事業では、募集団体数(=1件あたりの契約金額)の設定にあたり事前調整の可能性が出てくる。周知期間が短いのも疑念を深める。H30~R2年まで3団体、R3年からは4団体を募集しているが、申請者数や企画提案者数の検証が必要であろう(当該情報が公開されてない)。

5 この法律において「入札談合等関与行為」とは、国若しくは地方公共団体の職員又は特定法人の役員若しくは職員(以下「職員」という。)が入札談合等に関与する行為であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 事業者又は事業者団体に入札談合等を行わせること。
二 契約の相手方となるべき者をあらかじめ指名することその他特定の者を契約の相手方となるべき者として希望する旨の意向をあらかじめ教示し、又は示唆すること。
三 入札又は契約に関する情報のうち特定の事業者又は事業者団体が知ることによりこれらの者が入札談合等を行うことが容易となる情報であって秘密として管理されているものを、特定の者に対して教示し、又は示唆すること。
四 特定の入札談合等に関し、事業者、事業者団体その他の者の明示若しくは黙示の依頼を受け、又はこれらの者に自ら働きかけ、かつ、当該入札談合等を容易にする目的で、職務に反し、入札に参加する者として特定の者を指名し、又はその他の方法により、入札談合等を幇助すること。

官製談合防止法

経費内訳書・見積書の非活用

経費内訳書や見積書を契約後の事業管理に全く活用していない。弁護団説明書のように「流用、付替えが自由で、自主財源部分との切り分けも不明朗、四半期報告も暫定値で良い」だとしたら、東京都は最初から予実管理を放棄しているのと同じである。経費の積算が不可能だとしても契約時の見積もりに基づき予算管理をすべきであろう。

不十分な情報公開

東京都の電子調達システムにも結果の登録がなく受注団体の企画提案書の採点結果や申込込者数や企画提案者数さえ不明である。同じ東京都の環境局で実施している公園の指定管理者の選定では、提案者の得点(候補者は社名記載、次順位意向は得点のみ)だけでなく、評価委員会の議事録や候補者の提案事業計画書も公表されている。→サイト
企画競争を自治法上の随契としているのであれば、選定過程が随契理由に相当するものであり、都民に対する説明責任を果たすためにも一層の情報公開が必要である。


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