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過去問 公認心理師試験第6回 午前 一般問題 問26

みなさん、こんにちは。

公認心理師受験生Kidです。

さて、掲題の通り、問26です。

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問26
N. E. Bank-Mikkelsenによるノーマライゼーションの説明として、最も適切なものを1つ選べ。

① 生活上のリスクを共有して負担し合うこと

② 社会的に立場が弱い人々への支援や制度を設けること

③ 多様性を全て包摂し、個々に必要な支援を保障すること

④ 知的障害者に全ての市民と同等の権利や機会を与えること

⑤ 個人の権利や自己実現が尊重され、人が身体的・精神的・社会的に良好な状態でいること
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正解、 ④です。

しかし、②「社会的に立場が弱い人々への支援や制度を設けること」と、④ 「知的障害者に全ての市民と同等の権利や機会を与えること」が、とても近い回答と考えています。具体的に考えていきます。

ノーマライゼーションは、1950年代に北欧諸国から始まった社会福祉をめぐる社会理念の一つで、障害者も、健常者と同様の生活が出来る様に支援するべきという考え方で、また、そこから発展して、障害者と健常者とは、お互いが特別に区別されることなく社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方としても使われることがあり、それに向けた運動や施策なども含まれるようです。

全ての人が当然もっている通常の生活を送る権利をできる限り保障するという目標を一言で表したものであり、たとえ障害があっても、その人を平等な人として受け入れ、同時に、その人たちの生活条件を普通の生活条件と同じものにするよう努めるという理念を指すようです。

現在、福祉国家といわれているデンマークにあっても、かつては障害のある人に対しての福祉は、大規機施設での隔離主義によるものであり、劣悪な処遇だったようです。

そのような処遇のあり方、人権侵害に対する厳しい批判として現れたのがノーマライゼーションの考え方になります。

デンマークでは1950年代に「知的障害をもつ親の会」が結成され、そこで明確化された親の願いは施設の小規機化や「自分たちの子どももほかの子どもたちと同じように…」というもので、この親の願いを出発点として1959年法(精神遅滞者福社法)が成立されました。

この法案作成に携わりノーマライゼーションという言葉を取り入れたのが、社会省の担当官Bank-Mikkelsen.N.E(バンク・ミケルセン)でした。

同法では「知的障害者のために可能なかぎりノーマルな生活状態に近い生活を創造する」とあり、この精神がノーマライゼーション理念の基盤となっています。

つまり、ノーマライゼーションとは関害のある人たちに、障害のない人たちと同じ普通の生活条件をつくり出そうとするものになります。

また、バンク・ミケルセンは「「ノーマライズ」というのは、障害のある人を「ノーマルにする」ことではありません。彼らの生活条件をノーマルにすることです。このことは、特に正しく理解されねばなりません」と述べています(今回、勉強して、わたし個人はこの理解が浅かったと強く反省しています)。

つまり「ノーマライズ」とは障害のある人の生活条件を「ノーマルにする」ことを意味すると強調していることになります。

その後、ノーマライゼーションの考え方はスウェーデンにも取り入れられ、同様の法律が1967年に制定されており、法律の成立に重要な役割を果たしたニィリエ (NIJIE,B.)は知的障害のある人がノーマルな生活をしていくための原則を示されています。

さらに、1970年代にヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger,W) によってアメリカ、カナダに紹介され、新たな展開をしていくこととなっています。

ノーマライゼーションの理念は「障害者の権利宣言」(1975年)や「国際障害者年」(1981年)、「国連・障害者の十年」(1983~1992年)に取り入れられるとともに世界へ広がっていきました。

2006(平成18)年12月13日には「障害者の権利に関する条約」が国連総会で探択されました。

本条約は、第1条(目的)で、障害者が非障害者と同様に「あらゆる人権及び基本的自由」を「完全かつ平等」に享有し、確保することを掲げています。

各条文で差別禁止だけでなく、移動、教育、雇用、健康、文化・スポーツ、政治活動などのあらゆる分野での非障害者との平等な権利と社会参加を示しています。

締約国にはその権利を確実に実行できるようにすることを責務としており、日本は2014(平成26)年1月に条約に批進して締約国となりました。

今後のノーマライゼーション理念実現の中身として「形式的・外見的なノーマライゼーションではなく、人生の内容面でのノーマライゼーション、より一段的な表現ではQOL(Quality of Life)を直接課題とする」ことが期待されます。

上記からもわかる通り、Bank-Mikkelsenは劣悪な環境の施設に収容されている知的障害児者の処遇に心を痛め、1951年に発足した知的障害者の親の会の活動に共鳴し、そのスローガンが法律として実現するように尽力されました。

ですから、本問で問われている「Bank-Mikkelsenによるノーマライゼーションの説明」となると、④の「知的障害者に全ての市民と同等の権利や機会を与えること」が適切ということになると考えます。

②については、上記の「Bank-Mikkelsenによるノーマライゼーション」から発展した社会福祉の理念の一つであるノーマライゼーションに関する全般的な説明という印象になると思います。

そうなると、この設問はBank-Mikkelsenによるノーマライゼーションの説明」という限定がなされていることと言えそうです。

よって、②ではなく、④が適切と判断になると思います。

引用URL:https://public-psychologist.systems/12-福祉に関する心理学+法律/公認心理師%E3%80%802023-26/

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