子供の頃、自分でもよくわからないくらい神経質だった時期がある。
「神経質」という表現が正しいのかどうか分からないが、変な子であった。

トマトの皮は噛み砕けないから飲み込めず口の中にずっと残ってしまい、
結局最後に口から出してお皿の端に残していた。
ソーセージの皮も同じく飲み込むことが出来ず残した。
みかんも果肉だけ食べて、薄皮の房だけ口から出して残した。
こんな汚い食べ方だから、家族以外の人間がいる食事の席では
そもそもトマト、ソーセージ、みかんなどは口にしなかった。
口に出来なかった。食べたかったけど。
少しでも大きなもの・固いものが飲み込めない子だった。

また、いちごのプチプチが嫌いで種があるから食べたくないと言った。
キウイも同様にタネが嫌いで真ん中の白い部分だけを食べて大部分を残した。
ある日、自分が食べたいと言ったハンバーガーのバンズの上のゴマも食べたくないと思った。
母に一粒ずつ全部取り除いて欲しいとお願いしたら、いい加減にしろと怒られた。

また、ひとつ気になりだすとずっと気になってしまう子で、
本が1巻から10巻まで順番に揃っていないと気が済まず、
保育園では園内の絵本を一人で黙々と並べ変えたりする子だった。

玄関で脱いだ左右の靴を１ミリのズレがないように並べないと気が済まない、
右足を引っ掛けて躓いたら、左足もどこかに引っ掛けないと気持ちが悪い。
（左右対象じゃないと嫌）

そんな「変」な子。

7部丈という中途半端な袖の長さが気持ち悪くて頑なに着なかったし。
毎日持たされるハンカチとポケットティッシュも
ハンカチは四隅がきちんとズレずに畳まれていないと気持ち悪かったし
ポケットティッシュは常に未開封の新品であって欲しかった。

だからティッシュを使いたくなってもどうしても開けたくない。
結局持っている意味がないのだが、
開封して中途半端に中身が半分に減ったティッシュを
持っている状態の方が苦痛であった。

変なところが気になる性格だった私だが、小学校に入って事態は一変した。
私が通っていた保育園はすごく少人数だったため、
ある程度自分が思う通りに出来ていた。
みんなが遊んでいる時に本を黙々と並び替えたところで怒られることも邪魔されることもなかった。

小学校では、クラスルームの後ろに扉のないロッカー棚があり、
ひとり30×40cmほどのロッカーが割り当てられて自分の荷物を置くように言われる。
体操着、お道具箱、家庭科で使う裁縫箱、リコーダー、書道の道具などなど。

ただ、そこで個性が出るのである。

私はひたすら綺麗に整頓する。体操着はもちろんきちんと畳む。
体操着に着替える際も、着てきた洋服まで綺麗に畳んでいた。
そんな整頓された自分のロッカーの両隣、上下のロッカーの汚いこと。
いや、私以外のロッカーが全て整理されてない。汚い。
体操着がびろーんと垂れ下がっちゃってるロッカーまである。

許せない、気になる、整理整頓したい。だが、他人のロッカーだ。
勝手に触って良い訳がない。
あぁ、なんてカオスなんだ。
あぁ、自分でコントロールできないこの状況、、、
ああぁぁぁぁぁーーーーー！！！

と、色々と衝撃が強かったようで、その時私の中で何かが弾けた。
それからというもの、何もかもどうでも良くなった。
本が順番に並んでなくても気にならなくなったし、
整理整頓もしなくなり出したものは出しっぱなし、脱いだものは脱ぎっぱなし
開けた扉は開けっぱなし、電気もつけっぱなしになった。
振り幅が大きく、１８０度変わってしまった。

人生にはいろんな転機がありますが、私の人生で初めての転機は間違いなく
あのクラスのみんなの汚いロッカーを目の当たりにした瞬間でした。
残念ながら、だらしない方への転機でしたね。
とはいえ、あのまま変わらず大人になってしまっていたら、
社会に適応出来ない、生きづらい人間になっていただろうから
よし、としよう！

適当でいい加減な私、嫌いじゃないぞ。