高スペックで条件全部クリアでも、しっくりこないものは無理

同棲していた彼氏に振られたM子が家探しをしているが、なかなか決まらない。話を聞いていると、「不動産屋が押し付けがましくてヤダ」という。

『さぁ、気になるものは全部見に行きましょう』、『バス・トイレ別だし、駅から近いし、家賃も予算内。築年数もそんなにだし、いいじゃないですか』、『他の店でもデータベースは同じですよ、決めちゃいましょう』…。

若い営業マンは、おそらく目標を達成することに目一杯なのだろう。その様子はありありとわかる気がする。

M子は言う。「確かに条件はクリアしてるんだけど…、住むイメージが湧かなくて。気に入らないのに決められないんだよ」。

それを聞いて私はハッとした。

「私の婚活もそれじゃん」

年収は400万くらいでもいい、スポーツが趣味の人がいいな、休日が私と合って、背が170くらいあれば御の字…。

私の条件はさほど厳しくはない。条件クリアの人は結構いるが、Pairsで私に「いいね」をくれても、メッセージをくれても、トキメキはないし、テンションも上がっていない。むしろ条件は良すぎるはずなのに、結局同じ。

飲み会や紹介で知り合う男子が、十分どころかハイスペックだったとしても付き合うイメージなんてなかなか湧かない。

賃貸を探すときも、いい物件に出会う時は最初に思う「あ、ここに決めよう」と。間取りを見て「いいかも」。外観を見て「やっぱありかも」。内覧して「ここだわ」と。

安易かもしれないけど、そう言う気持ちの勢いがないと決まらない。それは家探しも婚活も似ていると気が付いた。すごく期待して不動産屋に行ったのに、いまいちしっくりこなくて落ち込むM子は、まるで紹介してもらった人が悪くないけどテンションが上がらないガッカリ感に似ている。

周りの人に「いい人じゃん、なんでダメなの?」と聞かれて、自分でもうまく説明できないけど、気が進まないものは進まないのだ。むしろそれがしっくりこない自分に苛立ったり、落胆したりするくらいだ。

わかってくれ。こっちだって好きになりたいし、決めたい気持ちが大前提にあるということを。そしてそれでも決められないということを。

高スペックはあくまで、万人評価

前に引っ越した時、不動産屋イチオシのそこそこの物件を見せてくれた後に、どぎつい色の古いアパートなんだけど台所が異様に広くて綺麗だった部屋を見た時、、私の気持ちは後者が気になって仕方なかった。

万人ウケするものよりも、自分にハマる部屋に出会った時の方がドキドキする。「私のことを待ってたんじゃないか」と。こんなにアンバランスな間取りだけど、私はむしろこういうの求めてた!って方がグッとくる。

前に高学歴の友人が「大学の同級生であるハイスペ男子に言い寄られたことがあるが、なんでそうなのか全然わからないけど、全くテンションが上がらず、むしろそれが衝撃的だった」と話してくれたことがあった。

みんなそうなんだ。

学歴とか年収とか職業とか、数値化された他人の評価や世間体、流行りの服、ルックス、総合評価…そういうのが高くてもうまくいかないのが人間の「スキ」と「キライ」のフィーリングだ。

ましてこれまで、ダメ男・クズ男に引っかかってきた私やM子なんだから、そんな万人ウケするものが理解できるんだったら、とっくに幸せになってるだろう。クセが強いのが好きなんだから、我々にフィットするものは万人ウケするものじゃない。

もともと営業職をしていた私としては、最初から感じていたけど、M子を担当した営業マンに言いたい。M子がよくわかんないワガママを言っているんじゃなくて、あんたがM子のニーズを汲み取る力が足りてなんだよ、と。

私の婚活も、Pairsみたいな大きなマーケットで探すより、もっと細かい私の求めてるニーズを自分で汲み取って、そういうターゲットのいるニッチなところで探すべきなのかもなぁ。

人気者とカップリングして羨望の眼差しを集めたいわけじゃないし、万人ウケな人とくっついて認められたいわけじゃない。むしろ、みんなにはあまり理解できなくても「素敵でしょ」「いいでしょ」って心底思うような人と結ばれたい。

重要なのは高スペックより、ニーズの掘り下げ。でも自分が好きばっかりではマッチングされない。そこが家探しと違う、婚活の最大の難所だな。家は住む人を選ばないけど、男は女を選ぶし、態度を変えたり、裏切ることもあるから…。

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