空想草紙屋 猩々堂 sho-jo-do

ミステリ小説を中心に扱うちいさなちいさな空想の本屋、猩々堂です。 おすすめ本やフェアの…

空想草紙屋 猩々堂 sho-jo-do

ミステリ小説を中心に扱うちいさなちいさな空想の本屋、猩々堂です。 おすすめ本やフェアの紹介、店主の日々の雑記など。

最近の記事

おすすめ本紹介 「Y駅発深夜バス」(青木知己/東京創元社)

創元推理文庫の帯には、 「あの手この手で謎解きのおもしろさを描いた〈ミステリ・ショーケース〉」 「手間暇かけた五つの短編ミステリを御賞味ください。」 と書かれています。 店主は東京創元社の友人に「これでお客さんに面白さが伝わるかなあ……」と言いましたが、ではどう書くのかと問われたら答えに窮します。 五つの短編がそれぞれバラエティに富んでいて、すべて質が高い。フーダニットあり、アリバイ崩しあり、ホラーあり。それらがいずれも本格ミステリのテイストで書かれているのですから、これ

    • 書店員日記 「小説の映像化はどうするべきですか?」

      先日、ドラマ「セクシー田中さん」の件について社内調査報告書が発表されましたね。 店主は、ドラマをまったく観ていませんでしたので、そのドラマの内容の是非についてはコメントする資格が無いのですが、三者(原作者・出版社・テレビ局)のトラブルによって起きた事件についてはとても悲しく思います。 今更ですが、追悼の意を表します。 映像化された作品に対して、視聴する側としては、当然賛否があると思います。 店主の個人的な感想ですが、最近で言えば「ACMA:GAME」(あ、これも日テレで

      • 書店員日記 「本を探すにはどうすればいいですか?」

        先日のnoteで「お客さんのお問い合わせは疑ってかかろう」というお話をしました。 それについて、もう少し詳しく書いてみたいと思います。 書店員の方には釈迦に説法でしょうし、長くなりますがお付き合いください。 一日に100点単位で新刊が出ると言われている出版業界。 どんなにちいさな書店でもお客さんが目当ての本を探すのはなかなか難しいものでしょう。 それはわかります。 当然、スタッフに「〇〇って本ある?」と問い合わせがくるわけですが、その際、お客さんが正確にタイトルや著者、出

        • 書店員日記 「100まんびきのねこってどこにありますか?」

          「孫が猫大好きで、猫の絵本ばっかり読んでるのよ」 店主も猫を飼っているので、こういうお問い合わせは嬉しくなってしまいますね。 統計をとったわけではないので単なる肌感覚ですが、書店員は猫好きが多いような気がします。 書店や本のシンボルに使われているのも犬より猫の方が多いかも。 犬って猫に比べてアクティブなので、インドア派の猫の方が「読書」と親和性が高いのかもしれません。 さて、それはともかくお問い合わせです。 「100まんびきのねこ……ですか? ええと、『100万回

        おすすめ本紹介 「Y駅発深夜バス」(青木知己/東京創元社)

          フェアの紹介 「特殊設定ミステリ7選」

          特殊設定ミステリというのは、現実世界ではあり得ないような設定(たとえば超能力とか心霊現象など)が存在しているという前提で書かれているミステリのことです。 舞台が現代日本ではなく、魔法が当たり前に使えるファンタジー世界だったり、異星人が登場する他の惑星であったりもします。 「実は犯人は透明になるマントで身を隠していたんだよ」というのが密室の真相だったら読者は怒り狂うでしょう。(こういうミステリを店主は実際、読んだことがありますが。逆にびっくりしました……) でも、最初から「

          フェアの紹介 「特殊設定ミステリ7選」

          書店員日記 「月刊誌ってどこ?」

          「あのさ、月刊誌ってどこに置いてあるの?」 これ年配の男性のお客さんにありがちな問い合わせです。 ベテランの書店員になるとたぶん一度くらいは訊かれたことがあるでしょうから、すぐに察して案内ができますが、新人アルバイトさんとかだと戸惑うかもしれません。 「〇〇誌」というのはその雑誌の刊行ペースを表現しています。 週に1回発売される雑誌は週刊誌、月に1回なら月刊誌、2か月に1回なら隔月刊誌、年4回なら季刊誌です。 つまり、毎月発売される雑誌はすべて「月刊誌」であり、店頭に

          書店員日記 「月刊誌ってどこ?」

          おすすめ本紹介 「黒野葉月は鳥籠で眠らない」(織守きょうや/双葉社)

          教え子の女子高生への淫行容疑で家庭教師の男が逮捕された。 その弁護人になった木村龍一は、非協力的な被疑者に戸惑うばかり。 だが、不起訴を望む被害者の黒野葉月が木村のもとを訪れ、法に則った驚くべき切り札で事件をひっくり返してしまう。 新米弁護士の木村が先輩の高塚と共に難儀な依頼を解決。 鮮やかなどんでん返しと感動の結末が待ち受ける連作短篇「木村&高塚弁護士」シリーズ第一弾。 いわゆる、「リーガルミステリ」というジャンルに属する短編集です。 店主は、このリーガルミステリ

          おすすめ本紹介 「黒野葉月は鳥籠で眠らない」(織守きょうや/双葉社)

          書店員日記 「POPってどう描きますか?」

          店主はミステリ読みなので、POPを描くのも必然的にミステリが多くなります。 どんな小説でもそうですが、ミステリは特にその性質上、先入観や情報をなるべく入れずに読んだ方が面白いものが多いです。 クイーンの「国名シリーズ」や有栖川有栖さんの「学生アリスシリーズ」のような、いわゆる「犯人当て」ミステリであれば、ある程度内容がわかっていたところで面白さが減じることはないかもしれませんが、「どんでん返し」を売りにしているタイプのミステリは、何も知らない状態で読みたいものです。

          書店員日記 「POPってどう描きますか?」

          書店員日記 「音符の種類と意味が載っている本ありますか?」

          こういう感じの問い合わせは、実はけっこう多いのです。 店主が受けた問い合わせでは、たとえば、 「平成元年が西暦何年かとか調べられる本ある?」 とか。 もちろん、音符の意味が載っている本もありますし、和暦と西暦の対応表が載っている本だってあります。 そりゃあるんですけどね。 でも、それって本にするほどの情報量ではないですよねえ。 和暦と西暦の対応表なんて1ページで終わっちゃうし。 そもそも、自分の生年の和暦と西暦は皆知っているのだから、その年をもとにして自分で紙に書

          書店員日記 「音符の種類と意味が載っている本ありますか?」

          書店員日記 「講談社の「漱石の妻たち」って本ある?」

          このお問い合わせはすぐに正解がわかりました。 出版社も正しいし、タイトルもほぼ合っています。 店主はこの本を読んだことがあったのですぐにピンときましたが、もしこの本の存在を知らない書店員さんだとしても、「漱石」「妻」「講談社」のキーワードで簡単にたどり着くでしょう。 書店員の検索の基本は、 「てにをは」や余計な付属物を外してシンプルなキーワードのみで行う というのが第一原則。 その基本技で十分、正解にたどり着きます。 でも、よく考えると。 「妻たち」って、漱石

          書店員日記 「講談社の「漱石の妻たち」って本ある?」

          書店員日記 「10人の有名建築家がホテルを作ったらしくて…その本ある?」

          お問い合わせしてくださったのは、年配の男性のお客さん。 このお問い合わせの正解は、残念ながらわかりませんでした。 「そのホテルの建築写真集のようなものですか」 「もしくは建築の専門書ですか」 「雑誌か、書籍かわかりますか」 「何でその本を知ったのですか」 「いつ頃出た本ですか」 「その建築家の方って一人でもわからないですかね」 など、いろんな質問を重ねてしました。 でも、お客さんが何もわからないみたいで……何を訊いても、「10人の有名建築家がホテルを作ったらしくてさあ

          書店員日記 「10人の有名建築家がホテルを作ったらしくて…その本ある?」

          書店員日記 「春雨入りハンバーグが作りたいんですけど、載っている本ありますか?」

          内容を訊かれる問い合わせというのも、わりとあります。 これこれこういうことが知りたいからそれが載っている本はありますか、というような場合です。 たとえば、 「折り紙で『新幹線』を作りたいんだけど、載ってる本あるかな?」 というような場合。 これはそれほど難しい話ではなくて、折り紙の本の目次を見れば新幹線の折り方があるかどうかはすぐわかるでしょう。 何冊か確認すればたぶん見つかると思います。 でも「春雨入りハンバーグ」って。 どのレシピ本見ればいいのかわからないし、そもそ

          書店員日記 「春雨入りハンバーグが作りたいんですけど、載っている本ありますか?」

          おすすめ本紹介 「放課後探偵団」(相沢沙呼・他/東京創元社)

          収録作品と作家さん。 「お届け先には不思議を添えて」(似鳥鶏) 「ボールがない」(鵜林伸也) 「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」(相沢沙呼) 「横槍ワイン」(市井豊) 「スプリング・ハズ・カム」(梓崎優) 全編書き下ろしの学園ミステリ・アンソロジーです。 東京創元社からデビューした1980年代生まれの若手作家さんが「学園」というくくりで若い読者層に向けてミステリを書く、というのがこの本のコンセプト。 学園ミステリなのでどれもライトな感じで読めますが、その一方で、本格

          おすすめ本紹介 「放課後探偵団」(相沢沙呼・他/東京創元社)

          書店員日記 「これの前の巻ありますか?」

          40代くらいでしょうか、女性のお客さんが、 「これの前の巻ある?」 お客さんが手に持っていたのは、「ないものねだるな」(阿川佐和子/中央公論新社)です。 「ないものねだるな」は、阿川佐和子さんが日々の生活の様子や、そこで考えたことなどをユーモア溢れる表現で綴ったエッセイです。 もちろん、エッセイでもシリーズになっているものはあります。 たとえば、東海林さだおさんの「丸かじり」シリーズ。 文庫版では特に巻数が振ってあるわけではありませんが、単行本ではシリーズ

          書店員日記 「これの前の巻ありますか?」

          書店員日記 「この本、最近出ましたか?」

          先日、お客さんとこんな会話がありました。 「これ私買ったかどうかわからなくなっちゃって。最近出た本かしら?」 「えーと、これは……最近じゃないですね」 「そうなの。いつ出たの?」 「えっと、今年の2月に発売されていますから、もう3か月くらい前ですね」 「あら、今年出た本なのね。ならまだ買ってないわ」 書店の商品のサイクルはとても速いです。 主な文庫本だけを見ても、月の前半は文春文庫、光文社文庫、幻冬舎文庫、双葉文庫。 中旬で講談社文庫、集英社文庫。 後半は角川文庫、新

          書店員日記 「この本、最近出ましたか?」

          書店員日記 「鬼滅の刃、どこにありますか?」

          「鬼滅の刃」のアニメ柱稽古編が始まりましたね。 コミックのアニメ化は売上にかなり影響を及ぼしますが、「鬼滅の刃」のように社会現象にまでなったものはさすがに少ないです。 あの頃は大人も子供もみんな、鬼滅、鬼滅、鬼滅。でしたから。 店主も大好きでアニメも観ていましたし、いまだに時々コミックは読み返してしまいます。 「鬼滅の刃」について語りだすと長くなってしまいそうなので、やめておきます。笑 さて。 アニメの影響からか、昨日、ご年配の女性のお客さんから、 「『鬼滅の刃』はどこ

          書店員日記 「鬼滅の刃、どこにありますか?」