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Charles Smith ロングインタビュー 4

ワシントン州のヒーロー・ワインメーカー チャールズスミスの最新のインタヴュー音源の文字起こしをしました。

その1はこちら

元音源はこちら


サブスタンスCS

チャールズ(以下C):次はサブスタンスCSをテイスティングしよう。

(C)口に入れた瞬間に強烈に凝縮したフレーバーを感じるだろう。長いミネラル感、シルクの様な舌触りと芳香、、、、君たちの感想は?

インタビュアー(以下 I ):ラベルにも書いてある通り、間違いなくカベルネのアロマがある。

(C)消費者がこのワインに反応してくれたのは、これを口に含んだ瞬間に、これこそが自分たちの求めていたカベルネであることがわかるからだ。これにはちゃんと理由があるんだ。


サブスタンス カベルネ

ラベルには元素周期表(の様なデザイン)がはってあり、CS(カベルネ)とある。だからこのワインは100%カベルネであるべきだと、このプロジェクトを始めた時から考えていたんだ。だってしっかりと書いてあるんだからね。そして「黒果実:ブラックフルーツ」のキャラクターを持つブドウを探した。

多くの人が「赤果実:レッドフルーツ」のキャラクターを持つワイン、レッドカラントやミネラルやスエードがあるカベルネの方が好きであるとはわかっていた。昔のラザフォード(ナパ)、例えばBVのラザフォードはそうだよね。素晴らしいワインだ。

一方で「黒果実」のカベルネも存在する。チョコレートやコーヒーとかそんな感じのね。僕はどちらのカベルネが好きかと聞かれれば、10回中9回は「黒果実」の多い方が好みだと言うと思う。で、どうしたかと言うと、うちの契約農家を周って、この「黒果実」のフレーバーを持つブドウを探したんだ。そして収穫し、アルコール発酵させ、澱もそのままに樽で寝かせ、瓶に詰めた。何も添加してないし、ブレンドもしない。ブドウだけだ。

このワインを飲んで何が印象的って?もちろんカベルネなんだけど、決して大げさではなくこの価格帯のカベルネで、しかも大量生産で、このクオリティっていう事なんだよ・・普通はほら、いろいろ混ぜたくなるだろ。。。。

( I )言ってる通りのストレートカベルネで、黒果実のキャラクターを持つのだけど、ほんのりハーブのフレーバーもある。これぞカベルネなんだよね。多くのワインメーカーは収穫を遅くしたりしてこのハーブのニュアンスを隠そうとするけれど、これぞカベルネの個性なんだ!素晴らしいよ!

(C)ありがとう。ほんの少しの複雑味があるから皆カベルネが好きなんだろ?
僕は“カンフーガール・リースリング”から始まった男なんだよ。


カンフーガール

周りは皆、「なぜ、リースリング?カンフーガール?」とあの時言ったよ。でも感受性の強いリースリングは僕の大好きな品種だった、白ブドウが好きだったんだ。白ブドウは育つ場所によって大きな多様性を持つからね。皆、ミネラル感のある美味しいグラスワインが好きなんだ。でもいったいどこにそんなブドウがあるのか知らない。僕らは、複雑味を持つリースリングがここにある事を知っていた。大体の人がこれを飲んだ時、『リースリングなんて好きじゃないよ。カンフーは好きだけどね』と言ったんだ。…「いやいやこれがリースリングだよ? 」『でもリースリングは好きじゃないんだ。。カンフーは違うんだ。』これと同じような事がカベルネにも言える。消費者は僕らが良く言う“クラッシックなカベルネ~ハーブとミネラルのニュアンスを持ち果実の複雑味もある~”を好むんだ。

( I )このカベルネは・・・旨みがある。考えうる様々な香りがあるし、グリーンオリーブまである。正直に言うと、そんなに期待をしてなかったんだよ。何と言ったらいいかな、、、全国に出回っている、名の知れたワインだし、、私がいつも飲んでるタイプのカベルネとは違うっていうか、自分でお金を払ってるわけじゃないけど私はラッキーな事に140ドルもするような高級カベルネを常に飲むことが出来る立場にあるしね。ただこのワインはスゴイよ。これは周りの20ドルのワインを全部ダメなワインにしてしまう可能性があるね。

(C)そう、それが僕のやりたかった事なんだ。「なぜこのワインを30万ケースもつくるのか?」って?「だってこんなワインを皆飲みたかったんだろ?」
「なぜ最終的に単一畑のピノノワールを15万ケースも造ろうとしてるのかって?」「じゃぁ、たった18ドルで買える恐ろしく出来の良いピノノワールを飲みたくない人間がいるのか?」「皆飲みたいに決まってる!」このカベルネは毎年90~93ポイントを取ってるんだ。たった15~16ドルで売られてるこの安いワインがだよ。なぜかってこのワインの品質が素晴らしいからで、別に批評家たちと僕が友達だからなわけじゃないさ。彼らに大金を払った事もないしねw


2022年10月9日

(C)これが僕がやりたかった事なんだ。ちょっと前に話したことを思い出して欲しい、、、、僕がこの世界に入ったきっかけは、パラドゥッチのソーヴィニヨンブランだ。そして最初に造ったワインは、ワラワラのシングルヴィンヤード“シラー”だよ。そして僕はワシントン州で最初に100ポイントを獲得した人間だ。それもシラーで・・クリストフバロン=素晴らしいワイングローワーが獲得するよりも前の話だ。

( I )しかもその時、あなたはまだワインを造りだして3年か4年目の話だろ。

(C)何が言いたいかと言うと、僕には幸運な事にワイン造りの才能があったんだ。自分がワインメーカーになるなんて考えてもなかったのにね。僕は幸運な事にこの分野においてとても優秀だったんだ。だったらこの才能を皆と分かち合うべきだと思ったんだよ。それなら誰もが買えるものを造るべきなんじゃないかって。単純だよ、造る事が出来る人間が造るべきなんだ!

このカベルネを30万ケース造るよりも、ロイヤルシティやパワーラインやキングコールを造る方がずっと簡単なんだ。
このカベルネを造るには、たくさんのブドウが必要だ。もちろんバラバラの畑からのブドウになるね。それは全て同じようなコンディションでないといけない。しかも化学肥料や殺虫剤を使わず完璧な形に仕上げないといけない。自分のブランドだからね。責任があるんだ。これは大変な事なんだよ。


僕は個人事業主だ。パートナーも出資者もいない。役員もいない。という事は意思決定は僕と、出来うる限りの最高の仕事をしてくれるチームのサポートによって行われる。良い仕事をして給料をもらう事以外に、哲学的にだけではなく、自分の信じている事を実際に行う事でやりがいを感じる事が出来るんだ。
僕のチームは想像を絶するほど素晴らしいチームだ。彼らは化学薬品やその他の、自然や人間に良くないものを使用しない、サステイナブル農業に行きつき、自分達自身でそのハードルをどんどん上げて、それを乗り越えていく。この事の重要さに周りも気が付き始めたんだ。ただ大きくなる事だけが正しい事じゃない。

( I )ワイン界のインディーズ・ロックだね。

(C)その通り!

インディーズであるのはいい事ばかりじゃないけどね・・・

( I )本当にすごいよね・・アメリカの市場だと、このワインの価格帯の競争相手は、(元ケイマスの)メイオミとかモンダヴィのウッドブリッジだろ?
その辺のワイン、いつも目にもくれず通り過ごしてしまうよね。

(C)そりゃそうだよ。$15の価格のうち、$8が宣伝費でワインの中身が$7の価値しかないワイン誰か飲みたい?

パート5に続きます


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