04 「僕が好きなのは君じゃない」

1991年発売。
「君は誰と幸せなあくびをしますか。」に収録されている『満月の夜』

僕は毎回タイトルの部分に歌詞の一節を使うようにしている。
それは単純に曲名ではなく、歌詞を使うことでその曲の特徴を読んでいる方に感じて欲しいからだ。

ただ普通に見ただけでは、なんの変哲もないラブソングの一説だ。
しかし、こと槇原敬之に至ってはこの曲は大変珍しい曲である。

槇原は1999年の逮捕までラブソングを多く制作していた。
単純に2人の恋を描いていたり、失恋をテーマにしたものが目立つ。

あくまで彼の作品は
曲の主人公が浮気や心変わりするのではなく、
相手から別れを言い出されたりその気持ちを悟ってさよならと告げるストーリーが大半を占める。

しかし、この曲は主人公の心変わりによって別れを告げる大変珍しい曲だ。
(まぁ、かなり初期の曲だから後半の作品とは比較できないけど)

そんな思いとは裏腹に曲はバラード系ではなくライトポップ。

イントロのラジオ部分で前作アルバム収録の「80km/hの気持ち」が使用されてるのもファンとしてはたまらなくいい。

自分の気持ちが彼女ではなく別の誰かに向いた瞬間を
「順番違いの恋を抱いた」と表現しているのもさることながら、
その後の彼女がその気持ちに気づいて取る行動が現実味を帯びて切なさを増させる。

またこの曲で
僕はどうなってもいいからせめて彼女を幸せにしてほしいとしたのも
彼の本質から来る優しさなんだろうなと僕は思う。

冒頭、甘い誘惑も入れつつ、そうしなかったのはそういうことだろう。
(この擬人法は、なんとも槇原らしい歌詞と言えよう)

「優しさを貫いても、2人が辛いだけならせめて…」とするのは槇原のよく使う手法だが、その思いの出どころが違うだけで曲の持つ意味がこんなに違うのかと思わせる一作だ。



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