07「それもいいかなって言うから胸は捻じ曲がるばかり」

2月も終わろうとしているのに、窓の外では「そんなこと知るもんか」と言わんばかりに雪が深々と降っている。

今年の雪は異常だ。

それは僕だけでなく、この雪に毎年会っているこの町の人々ですら口にするくらいだ。

そんな雪が僕に思い立たせる。
「冬の曲について何か書きなよ」と。

さて、冬が好きな槇原。
冬の名曲も多い。

ふと気付いた。
「そういやこの曲でいつも冬を出迎えてるな」

1996年9月25日発売
槇原敬之6枚目となるシングルでカップリングとして登場した
「I need you.」

この曲はシングル版とアルバム版の2つが存在する。
シングルは、バラード系で重く現実を受け止めている
アルバムは、ライトに仕立てて自分の気持ちを隠した印象。

さてストーリーに入ろう。

この曲は片想いがテーマの曲。
主人公と意中のその子は幼馴染で、ずっとその子に片思いをしてきたのだろう。

雪を素手ですくい取って、手を赤くするほどおてんばな彼女。
その子を思い続けるだけの日々は、彼の前を過ぎ去っていくことしかできない。

そしてついにこんなセリフを口にする。

「僕のものになっちゃえよ」 冗談ぽく試した時
「それもいいかな」て言うから 胸は捻じ曲がるばかり

彼の思いを隠して放たれた渾身の一言は、彼女の悪魔の一言で沈んだ。
むしろ自分自身がさらに苦しめられる結果となる。

さてこの歌詞の2番Bメロの最後のフレーズ。
これもさすが槇原と言わざるを得ない表現だ。

友達も恋人も どっちも同じ言葉なら
遠くから見ればただの 白い息で流れるよ

ずっと思い続けてきたこの思い
ただ側から見てば僕たちは恋人同士に見えているのだろうか。
それならもういっそこのままの関係でいいんじゃないか。

彼が彼自身をこの状態に至らしめた最大の感情がこのワンフレーズに全て込められているような気がした。

そして歌詞の冒頭と最後に出てくる、彼女の手を温める表現。
(厳密に言うと冒頭では手を温めていないが)

最後の歌詞からも読み取れるように、彼自身は結局何も変わっていない。
ただ一生彼はこのままだろう(なんかLOVE LETTERの彼を思い出すな)

それを決定づけるのがこの歌詞に付けられているピリオドだろう。

ピリオドは英文において、その文脈が終わる時に記される。
今回の曲名で言うとわざわざ打つ必要もない。
「I need you」でも「I  need you.」でも全く変わらない。

ただ僕は思う。
槇原はあえてこの曲名にピリオドをつけたのだと。

I need youだけだとその後にもストーリーを続けられる。
ただ先述した通り、彼の性格上それは難しいだろう。

だから槇原は彼の未来のないストーリーを表現するために、ピリオドをあえてつけたのだと思う。これが真実かどうかはわからないが、この妄想こそが考察における最大の楽しみだ。


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