オレオの読書記録

大学5年生。日々の読書記録を綴っていきます。

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最近の記事

『土星の環 イギリス行脚』W.G.ゼーバルト|感想

 文章を読んでいると、この文体はすらすら読める、また別の文体は読みにくいが不思議な高揚感がある、さらに別の文体は全く自分の好みではない、など理屈で説明することは出来ないが感覚的に自分に合う文体というのが自ずと見えてくることがあると思う。私にとって、そのような感覚に訴えかけてくる文体がまさに鈴木仁子さんの訳したゼーバルトの文体なのだ。  私が初めてゼーバルトを読んだのは、講義の課題図書としてゼーバルトの『移民たち 四つの長い物語』を指定された1年前である。その講義を履修するまで

    • 『闘争領域の拡大』ミシェル・ウエルベック|感想

      ー現実社会という名の檻ー 『闘争領域の拡大』は、現代フランスを代表する小説家であるミシェル・ウエルベックの処女作である。私にとっても、初めて読むウエルベックの小説だった。ただ正直なところ、うまく読み込むことができなかった。読み終えた後の感覚は、村上龍『限りなく透明に近いブルー』を初めて読んだ時と近しい感覚だった。それはテーマのひとつとして、セックスを扱っているからだろう。  読み込めなかったなりに、この小説を読み解いてみた。そのために『闘争領域の拡大』のあらすじを説明したいの

      • 『坑夫』夏目漱石|感想

        ー『坑夫』の主人公像ー・「なにを言いたいのかわからない」作品と「矛盾」した主人公  漱石は、日本で一番有名な作家と言っても過言ではないだろう。教科書に『こころ』が載っていることからも窺える。ただ、彼の著作の中でも『坑夫』はあまり知られていない作品ではないだろうか。  私が『坑夫』を知ったのは、村上春樹の『海辺のカフカ』を読んだときだ。『海辺のカフカ』の田村カフカは家を出てから辿り着いた図書館で、夏目漱石全集を読み耽る。図書館職員の大島さんとの会話において、カフカは『坑夫』に

        • 『空襲と文学』W.G.ゼーバルト|感想

          -破壊の記憶を物語る- 今回取り上げるのは、W.G.ゼーバルト『空襲と文学』である。この本を手に取ったきっかけは、先日プリーモ・レーヴィ『これが人間か アウシュビッツは終わらない』を読み、戦争に関する文章を読みたいと思っていたからだった。大学の授業も終わり、課題図書ではなく好きな本を読めるようになったこともあって、読むことに決めた。  ゼーバルトは、ドイツ出身の作家である。写真を用いた、小説とも随筆とも言えるような独特の文体で知られている。今回取り上げる『空襲と文学』は、チ

        『土星の環 イギリス行脚』W.G.ゼーバルト|感想