見出し画像

人知れず咲く、ねむの花 ー東北の旅2022 その2・双葉郡大熊町ー

連休を利用して、福島、宮城の海岸線を巡ってきました。

だいたい、旅行のプランは夫が決め、わたしは後をついて行く感じ。そして今回の旅の目的は「パークゴルフと、社会勉強。」とのことです。

2日間で見たこと、感じたことを少しずつnoteに残していこうと思います。よろしくお願いいたします。

パークゴルフ用のクラブやボールと、急な宿泊でも大丈夫なように着替えを多めに用意して、朝8時に出発しました。

まずは東北自動道を北上し、福島県へと向かいます。
相馬市までのルートを夫に聞くと「三春の方から」の返事。以前、三春町の東隣の田村市へ行ったことがあります。そのまま海沿いに出るのねと、ルートが頭に浮かびました。

1日目のルート

郡山ジャンクションから磐越自動車道に乗り換えて、舟引三春インターチェンジで下車。そこから国道288号線をひたすら東へ向かいます。

片側一車線の国道は、雰囲気の良い商店街やのどかな田園風景が広がっていました。そして田村市を通過し、自転車レースで有名な葛尾村との分岐を過ぎたあたりから、次第に山の奥へ。

くねくねとした道が続き、しばらくして「大熊町」の標識が見えました。

大熊町は原発事故の影響を受け、一部避難指示が解除された区域があるものの、いまだ帰還困難区域が大部分の町です。

やがて、カーブを曲がると料金所のようなプレハブの建物が見えてきました。建物には大きな文字で「中屋敷スクリーニング場」という張り紙があります。

スクリーニング場って、一時立入りのための中継基地でしょう。
このまま素通りしていいのか、それとも証明が必要なのか。ここまで来て通行止めだったら…と、心配になりました。車線を変更し、プレハブの前にいる職員らしき方の前に車を停めます。

「すみません。双葉町の方へ抜けたいのですが、通っても大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です。そのままどうぞ。」と声をかけてくださいました。

どうやら、前日に国道288号のバイパスが開通したようです。

もちろん一般車も通行可能。ほっとしつつ、新しく完成したトンネルを通り抜けました。

しかしながら、窓から見える町の景色に、言葉を失いました。

側道には進入できないようにバリケードが設置されていて「帰還困難区域のためこの先は立ち入ることはできません」と立て看板がありました。

住宅の入り口にも一軒一軒、バリケードやロープが張られていて、物々しい雰囲気。

車内から撮影

穴の開いたビニールハウスの中で、ぼうぼうと生い茂る草。
コンクリート部分が見えなくなるほど、蔦がびっしりと絡まった電柱。
錆びた軽トラック。
家屋よりも背が高く伸びた植木。
差し出し口をテープで塞がれた郵便ポスト。


時間が止まったままの、人の気配のない町は、しんとしていました。
ほっとしたのは、数キロ間隔で立哨されている警備の方を見たとき。通るたびに会釈をしました。
そして、青い色のランプを点灯させたパトロールカーが走っていたとき。ああ、この町を守ってくれているのだな、大変なお仕事だな、と思いました。


何より印象的だったのが、いたるところで咲く、桃色の花。

高さ3メートルから6メートルほどの木に、孔雀がふわっと羽を広げたような扇形をした桃色の花が、たくさん咲いていました。

庭木として民家に咲くもの、ガードレールのすぐそばに咲くもの。
そして、人が植えたのではないであろう、学習塾の入口に不自然に咲くもの。

緑に覆われた地で、どの花もきれいに咲いていて。
まるで、家族の帰りを待っているかのような、来てくれてありがとうと、わたしはここにいるよ、と言っているような。

きっと、人々が幸せに暮らしていた場所。大切なふるさと。逃げるように、去らねばならなかった場所。

人知れず咲く花のこと、この町の人々のことを思うと胸が痛くなりました。
そして、安易に写真を撮ってはいけないような気がして、ずっと、窓の外を眺めていました。

家に帰って桃色の花を調べたところ、「ねむの木」の花でした。
ねむの木はマメ科ネムノキ属の落葉高木で、夜になると葉が眠るように閉じることから、ねむの木(ネムノキ)の名付けられたと言われているそうです。
また、ねむの花は繊細で、咲くまでに10年ほどかかる場合もあるそうです。


震災から11年。
不自然な場所に咲いていたねむの木は、風や鳥のいたずらで種がこぼれたのかな。
そして根付き、大きな木となり、愛らしい花を咲かせたのかな。

PhotoACより


やがて双葉郡双葉町へ入り、国道6号線に合流しました。
双葉町の中心地は通行車と工事車両が多く、新しい道路が整備されていて、とても綺麗。

そして、最初の目的地である東日本大震災・原子力災害伝承館が見えて来ました。

本日はここまで。すこし書きにくいテーマのため、言葉にするのに時間とパワーがいります。ゆっくりと残してゆきたいと思いますので、よろしければお付き合いくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

双葉郡大熊町について

双葉郡大熊町の人口(令和4年7月1日現在)
10,069人、4,790世帯(震災当時11,505人、4,235世帯)
内訳 県内7,766人 3,628世帯
   県外2,303人 1,162世帯
町内居住者数 379人 319世帯
町内居住推計人口 929人※町に住民登録がない居住者を含めた推計人数   
避難先の状況(令和4年7月1日現在)
福島県内の主な避難先地域
浜通り地方 5,437人(いわき市 4,513人、南相馬市 269人ほか)
中通り地方 1,699人(郡山市 1,013人、福島市 196人ほか)
会津地方 630人(会津若松市 542人ほか)
福島県外の主な避難先都道府県
茨城県 457人、埼玉県 351人、東京都 237人ほか   

大熊町公式ホームページをもとに作成https://www.town.okuma.fukushima.jp/soshiki/jumin/21272.html

この記事が参加している募集

夏の思い出

記事を読んで頂きありがとうございます(*´꒳`*)サポートをいただきましたら、ほかの方へのサポートや有料記事購入に充てさせて頂きます。