見出し画像

かいこかいこのかいこ

蚕に魅力されつづけている
気付けばもう長いこと

毎回、毎日、見るたびに蚕に惹かれる
なぜなのか、わからない

元々虫好きなので他の虫も愛でる
つかまえて、観察して放すことはあっても
飼うことはない
そもそも蚕は野生ではないので
飼う以外に愛でる方法はない

蚕が家畜、と聞いた時
虫が野生を失い、人間に依存していることが
すぐには理解できなかった
蜜蜂も家畜と呼ばれる虫だが
蜂蜜や巣は(時には子どもなども)
奪われようとも
その生態をを大きく変えられたり
ましてやいのちを取られることはない

蚕はどうだろう
自分が蛹になるために作った繭ごと、奪われる


家畜、というのは
人間の役に立つように飼い慣らした
野生動物のことをいう

多くは牛、豚、鳥など食用の
動物を指すことが多いが
そのほかに農用動物、
愛玩動物のことも含むらしい

蚕は昆虫工場という記述を目にしたことがある
基本桑しか食べない虫がその体内で
タンパク質を作り出し
糸にまで仕上げてしまうところから
そう呼ばれている

糸をつくるという役割は農用動物、糸をとったあとに残るさなぎも食べる地域もあるので食用としての家畜の役割もまかなっている


養蚕の用語ではかいこが脱皮をする前に動かなくなることを「眠る」
脱皮をして動き出すことを「起きる」と表現する
「おかいこさん」「おこさん」と呼ぶ方もいまだに多い
かいこまわりの言葉はとても親しげでやさしい

ではかいこはペットか、というとそれは違う
愛玩動物ではない
でもただの家畜とも違う


のんびりとした動き
桑を食べる音
四度の脱皮を繰り返してむちむちと大きくなる体
繭をつくる場所をさがして動き回り
首を八の字に振りながら繭をつくっていく姿
できあがった繭
夜明けに羽化する成虫
ふわふわの体毛と柘植の櫛のような触角


養蚕農家の方は何万頭、キロ,トン単位での飼育でかいこをかわいい、なんて悠長な気持ちでは飼っていないと思う

それでもかいこのまわりには
慈愛がまとわりつく

わたしはきっと知りたいのだ
かいこのことを

かいこのまわりにあるものや事柄を
かいこの気持ちを、知りたい

今も家にはかいこがいる
私は今日も桑を採りに行く


懐古/回顧/蚕
2022/7-8
「かいこかいこのかいこ展」挨拶文


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?