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《全文無料》【マリーンズ略史 92~05/-49- 45年ぶりの12連勝 (2005年)】

(写真 初先発初完封の久保康友、最後を締めた薮田安彦、一発を放った大塚明)



(49)45年ぶりの12連勝(2005年)

 これまで幾度となく触れてきたが、NPBにおける連勝記録は「18連勝」である。マリーンズの前身・大毎オリオンズ時代の1960年に記録したものだ。ソフトバンクの前身南海ホークス時代も1960年に記録しており、NPBタイ記録となっている(但し毎日は1分を挟む)。マリーンズは毎日時代にも15連勝もマークしている。
 2005年に12連勝を記録したが、球団記録の扱いとしては18連勝と15連勝があるために時間が経過すると埋もれてしまうことも致し方が無いところだ。しかし、18連勝と15連勝は球団創成期のものであり、大型連勝が出にくくなったドラフト制度導入後に限ると12連勝はNPBベスト10に入る記録である。
 そこで、今回は12連勝を改めて振り返り、試合の流れを追ってみたいと思う。連敗時のコラムと比較すると、試合の流れの大切さが見えてくると思う。

 【連勝記録ベスト10】

 NPB連勝記録ランキング(球団名は当時、<M>は現球団名略称)を見ると
・18連勝…南海<H>(1954年・昭和29年)※NPB記録、パ・リーグ記録
・ 〃 …大毎<M>(1960年・昭和35年)※NPB記録、パ・リーグ記録
・17連勝…南海<H>(1954年・昭和29年)
・15連勝…毎日<M>(1950年・昭和25年)
・ 〃 …巨人<G>(1951年・昭和26年)※セ・リーグ記録
・ 〃 …中日<D>(1955年・昭和30年)※セ・リーグ記録
・ 〃 …阪急<B>(1971年・昭和46年)
・ 〃 …ソフトバンク<H>(2005年・平成17年)
・ 〃 …日本ハム<F>(2016年・平成28年)
・14連勝…タイガース<T>(1937年・昭和12年)※1リーグ時代
・ 〃 …タイガース<T>(1946年・昭和21年)※1リーグ時代
・ 〃 …西鉄<L>(1957年・昭和32年)
・ 〃 …中日<D>(1965年・昭和40年)
・ 〃 …阪急<B>(1973年・昭和48年)
・ 〃 …巨人<G>(1976年・昭和51年)
となっている。
 お気づきかと思うが、多くが「昭和の時代」のものであり、2リーグ創成期(1950年代)のものも多い。その理由として挙げられるのが戦力格差の大きさと言われている。1965年から導入されたドラフト制度の効果により、その戦力格差が無くなったことが大型連勝減少の要因と考えられる。

 【ドラフト制度導入後の連勝記録ベスト10】

 そこで、連勝記録をドラフト制度導入後(1966年以降)に絞ると、下記のようになる。
・15連勝…阪急(1971年・昭和46年)
・ 〃 …ソフトバンク(2005年・平成17年)
・ 〃 …日本ハム(2016年・平成28年)
・14連勝…阪急(1973年・昭和48年)
・ 〃 …巨人(1976年・昭和51年)
・13連勝…巨人(1967年・昭和42年)
・ 〃 …阪急(1984年・昭和59年)
・ 〃 …西武(2017年・平成29年)
・12連勝…巨人(1967年・昭和42年)
・ 〃 …巨人(1967年・昭和42年・2度記録)
・ 〃 …広島(1984年・昭和59年)
・ 〃 …ヤクルト(1991年・平成3年)
・ 〃 …ロッテ(2005年・平成17年)
 2ケタ10連勝以上が珍しくなってくる。ロッテが2005年に記録した12連勝もドラフト制度後に絞ると9番目の記録になる。球団記録としては3番目の記録になるため、球団記録に埋もれてしまった感はあるが、改めて見ると価値の高い記録だった。

 今回はこの「12連勝」を改めて振り返り、追いかけてみたい。

 【12連勝の足跡】

 2005年は開幕ダッシュに成功。リーグ10勝一番乗りするなど一時は首位に立った。その後負けが続き2位に後退したものの、4月18日時点で19試合を消化して12勝6敗で首位のソフトバンクに1.0ゲーム差だった。

◆1 19日 日本ハム5回戦(札幌D)○4-1
 先発セラフィニが好投。3回表に福浦犠飛で先制、4回裏に被弾して追いつかれるも5回以降は零封。8回表二死満塁で今江が走者一掃の三塁打で3点勝ち越し。8回裏薮田、9回裏小林雅が締めて勝利。

◆2 22日 楽天3回戦(フルキャスト)○5-1
 新球団楽天本拠地での初戦。3回表に堀の適時打で先制。しかし、先発小野が4回裏に追いつかれる。打線は直後の5回表、堀と里崎の適時打で再びリード。6回表にも堀のこの試合3打点目となる適時打、9回表にもベニー適時打で加点。小野は4回の1失点のみに封じ完投勝利。

◆3 23日 楽天4回戦(フルキャスト)○12-4
 初回に3点を先行した打線が2回表に爆発。福浦、フランコ、里崎、西岡の適時打などで7点を追加。先発清水直は7回まで4失点も山崎健、藤田が終盤を封じ12ー4で圧勝。

◆4 24日 楽天5回戦(フルキャスト)○6-0
 ルーキー久保が初先発。初回、福浦の適時打で先制すると3回表には西岡適時打、福浦2ランなどで4点を援護。久保はテンポ良く投げ込み、楽天打線を114球4安打でプロ初勝利を完封で飾った。

◆5 25日 西武4回戦(千葉マリン)○8-2
 4連勝で本拠地へ帰還。2回裏、敵失をきっかけに打線がつながり一死満塁からフランコ適時打、さらに敵失、福浦適時打で5点を先行。先発渡辺俊は6回表に2点を失うも、その裏今江の適時三塁打と小坂適時打で3点を追加。渡辺俊は8回2失点、9回表は薮田が締めて勝利。

◆6 26日 西武5回戦(千葉マリン)○7-1
 2回裏今江の適時二塁打で1点を先行すると、4回裏には大塚適時二塁打、今江スクイズ、福浦適時打で3点を追加。先発小林宏は援護を受け7回を1失点と好投。8回裏にさらに3点を追加し、薮田‐山崎健とつないで勝利。ソフトバンクが敗れて首位再浮上。

◆7 27日 西武6回戦(千葉マリン)○7-1
 先発は今季2度目の先発加藤。5回まで1-1と投手戦。6回裏、敵失をきっかけにフランコ適時二塁打、二死満塁で小坂が走者一掃適時二塁打、押し出しで5点を奪いリード4.加藤は7回を1失点、山崎健、8日ぶりの小林雅とつないで7連勝。

◆8 29日 ソフトバンク7回戦(ヤフーD)○6-5
 首位攻防3連戦。先発清水直が2回裏に1点の先行を許す。しかし直後の3回表に西岡の犠飛で追いつき投手戦へ。6回表大塚の2ランで逆転、7回表には堀適時二塁打と福浦犠飛で5-1と差を広げる。清水直はその裏に1点を失うも9回裏もマウンドへ。しかし、ヒットと二塁打で1点を失い小林雅へ。小林雅が2ランを被弾して1点差に迫られるも後続を断ち1点差で逃げ切った。

◆9 30日 ソフトバンク8回戦(ヤフーD)○2-1
 セラフィニと新垣の投げ合い。5回表フランコ4号ソロで先制、6回表にはベニー適時打で2-0。セラフィニは6回無失点で降板、継投へ。藤田から8回裏に柳崎健が登板も被弾して1点差に。9回裏は小林雅がヒットでピンチを招くも最後は併殺打で1点差で逃げ切った。

◆10 5月11日 ソフトバンク9回戦(ヤフーD)○15-3
 2回表3四球の一死満塁でサブロー適時二塁打で2点を先行。しかし、先発渡辺俊が本塁打と3連打で2-2に追いつかれる。直後の3回表フランコ2ランなどで再びリード。渡辺俊はその後立ち直り零封する。すると6回表から打線が爆発、ベニーの2ランなどで4点を奪うと7回表2点、8回表1点、そして9回表には3点を奪い15-3と大きくリード。渡辺俊は8回3失点、9回裏は高木が締めて大勝。10連勝、首位決戦3タテで首位固め。

◆11 3日 楽天6回戦(千葉マリン)○4-3
 初回、先発小林宏を打線が援護。ベニー適時打で1点を先制する。しかし、小林宏は3回表に1点を失い同点に追いつかれる。こう着状態が続いたが5回裏二死満塁で福浦が走者一掃の適時二塁打で3点を奪い4-1とリードする。小林宏は7回表二塁打と2本の安打と守備のミスで2点を失い1点差に追い上げられ降板、代わった藤田がこの回を断つと藤田、小林雅とリレーして1点差を守った。

◆12 4日 楽天7回戦(千葉マリン)○10ー0
 前回初先発、初完封の久保が2度目の先発。その久保を初回にフランコの適時二塁打で1点を援護する。久保は前回同様テンポ良いピッチングでこの1点を守る。6回表ヒットと四球でピンチを招くと高木にスイッチしてピンチを断つ。7回に藤田が抑えるとその裏福浦適時打、サブロー適時二塁打、李適時二塁打などで5点を奪う。8回裏にはさらに4点を奪い10-0で勝利。連勝を12とした。

 【12連勝に見る試合の流れ】

 12連勝中、打線が先手を取ったことが12連勝につながった。相手に先制を許したのは1試合だけだった。先制したイニングを見ると初回が4試合、2回が3試合、3回が3試合、5回が1試合だった。早い回での先制が多かったことは先発を楽にした。もちろん、先制した後に追いつかれるケースもあったが追いつかれてもリードを許さなかった先発陣の踏ん張りは、この援護があったからかもしれない。連勝中2試合に先発した渡辺俊は「四球などで崩れないように、リズムだけは気をつけた。不思議なもので『ここを踏ん張れば』というところで踏ん張ると打線がすぐ援護してくれました。試合の流れの大切さを再確認出来ました」と話した。

 試合の流れの大切さを生かしたのが、この12連勝だったが、逆に試合の流れを呼び込めずにズルズルいったのが、1998年の18連敗と2002年の開幕11連敗だった。読み比べて比較して頂くのも面白いと思う。
(20)なぜ18連敗を喫したのか?
https://note.com/orions_marines/n/nb5edd5fb65ec
(39)あわや、開幕連敗記録に王手(2002年)
https://note.com/orions_marines/n/nc98ddc439fac

 さて、開幕ダッシュを決めたマリーンズだったが、7月にソフトバンクに首位を奪われた。それは6月から7月にかけてソフトバンクが記録した「15連勝」が要因だった。15連勝はドラフト施行後の最多タイ記録だった。

(次回)⇒《有料・冒頭試読》『(47)球団創設年以来55年ぶりの快挙・久保康友(2005年~2008年在籍)


----- マリーンズ略史 92~05 INDEX ------

 【年度別出来事編】

【~1991(平成3)年】
(1)《全文無料》『千葉移転前夜』
  (25)《全文無料》 オリオンズ~マリーンズ ファンクラブ略史
【1992(平成4)年】
(2)《全文無料》『千葉移転元年 4月ダッシュも最下位に沈む』
  (42)《全文無料》移転直後の快進撃
  (57)《全文無料》5試合で4完封
【1993(平成5)年】
(3)《有料・冒頭試読》『最下位脱出も大差の5位に低迷』
  (54)《全文無料》1993年 NPB記録/リーグ記録/球団記録/珍記録
【1994(平成6)年】
(4)《有料・冒頭試読》『八木沢監督休養、2年連続5位に終わる』
  (60)《全文無料》1994年 NPB記録/リーグ記録/球団記録/珍記録
1995(平成7)年
(5)《有料・冒頭試読》『球団改革断行、千葉移転後初のAクラス』
  (21)《全文無料》風しん蔓延で主力が消えた14日間
  (45)《全文無料》胴上げ阻止、神戸3連戦
【1996(平成8)年】
(6)《有料・冒頭試読》『投手充実も、得点力不足否めず5位低迷』
【1997(平成9)年】
(7)《有料・冒頭試読》『中盤反攻も迫力不足否めず最下位に沈む』
【1998(平成10)年】
(8)《有料・冒頭試読》『18連敗「七夕の悪夢」もチーム力は向上気配』
  (20)《全文無料》なぜ18連敗を喫したのか?
  (22)《全文無料》ユニホーム応援が広がったのはロッテから
  (33)《全文無料》黒木2冠と小坂の盗塁王騒動
【1999(平成11)年】
(9)《有料・冒頭試読》18年ぶり「七夕首位」も、連敗喫して4位低迷』
  (18)《有料・冒頭試読》熱く育てた山本監督の5シーズン (1999年~)
  (28)《全文無料》18年ぶり首位「七夕の歓喜」狂騒曲
  (38)《全文無料》前半快進撃支えた「ボーリック神話」(1999年)
【2000(平成12)年】
(10)《有料・冒頭試読》『4月出遅れ5割届かず5位低迷』
  (52)《全文無料》乱打戦で連夜の日本タイ記録
【2001(平成13)年】
(11)《有料・冒頭試読》『世代交代、福浦首位打者、小林雅パ記録もエース後半離脱』
【2002(平成14)年】
(12)《有料・冒頭試読》『開幕11連敗が響き借金5の4位に終わる』
  (39)《全文無料》あわや、開幕連敗記録に王手
【2003(平成15)年】
(13)《有料・冒頭試読》『終盤に先発安定、9月快進撃も4位で山本監督辞任』
  (47)《全文無料》2003年 NPB記録/リーグ記録/球団記録/珍記録
【2004(平成16)年】
(14)《有料・冒頭試読》『ボビー復帰、新制度プレーオフ進出に0.5ゲーム差』
  (17)《有料・冒頭試読》「ボビーマジック」とは何だったのか(2004年)
  (19)《有料・冒頭試読》巻き込まれた、球界再編騒動
【2005(平成17)年】
(15)《有料・冒頭試読》『プレーオフで逆転優勝、阪神破り31年ぶり日本一』
(16)《全文無料》(付録)『ポストシーズン詳細、二軍合わせて6冠王者成』
  (49)《全文無料》45年ぶりの12連勝(2005年)
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 【選手編/投 手】

(23)《有料・冒頭試読》チーム支えたエースの苦悶・黒木知宏(1995~2007年在籍)
(26)《有料・冒頭試読》ルーキーからフル回転左腕・藤田宗一(1998年~2007年在籍)
(27)《有料・冒頭試読》低迷期支えたエース、復帰後はリリーフで日本一・小宮山悟(1990年~1999年、2004年~2009年在籍)
(30)《有料・冒頭試読》抑えの切り札への道・小林雅英(1999年~2007年在籍)
(32)《有料・冒頭試読》マリーンズ初タイトル剛腕エース・伊良部秀輝(1988年~1996年在籍)
(35)《有料・冒頭試読》強気なマウンド、マリーンズ初代クローザー・河本育之(1992年~1999年在籍)
(37)《有料・冒頭試読》マリーンズ初の最優秀救援投手から手術へ…・成本年秀(1993年~2000年在籍)
(40)《有料・冒頭試読》7年目のブレーク「サンデー晋吾」(1994年~2013年在籍)
(43)《有料・冒頭試読》先発の柱サブマリン・渡辺俊介 (2001年~2013年在籍)
(44)《有料・冒頭試読》中継ぎ切り札から先発の柱へ・小林宏之(1997年~2010年在籍)
(47)《有料・冒頭試読》絶対的エースの信頼・清水直行 (2000年~2009年在籍)
(50)《有料・冒頭試読》球団創設年以来55年ぶりの快挙・久保康友(2005年~2008年在籍)

 【選手編/打 者】

(24)《有料・冒頭試読》二軍成長記・福浦和也(1994~2019在籍)
(29)《有料・冒頭試読》打線を支え愛された背番号6・初芝清(1989年~2005年在籍)
(31)《有料・冒頭試読》オリオンズ最後の戦士・堀幸一(1989年~2009年在籍)
(34)《有料・冒頭試読》マリーンズ初の新人王、盗塁王・小坂誠(1997年~2005年在籍)
(36)《有料・冒頭試読》「14打席連続出塁」の大記録樹立・南渕時高(1990年~1997年在籍)
(41)《有料・冒頭試読》裏から支えたバイプレーヤー・諸積兼司(1994年~2006年在籍)
(48)《有料・冒頭試読》千葉で途切れた連続記録・愛甲猛 (1981年~1995年在籍)
(51)《有料・冒頭試読》オリオンズ最後のタイトル・平井光親 (1989年~2002年在籍)

 【選手編/助っ人】

(53)《有料・冒頭試読》中4日のタフネスエース・ネイサン ミンチー(2001年~2004年在籍)
(54)《有料・冒頭試読》「神話」と「ナイト」の勝負強さ・フランク ボーリック(1999年~2002年在籍)
(56)《有料・冒頭試読》安定感抜群の助っ投・エリック ヒルマン(1995年~1996年在籍)
(58)《有料・冒頭試読》 窮地を救ったストッパー ブライアン・ウォーレン(1998年~2000年在籍)
(59)《有料・冒頭試読》「いつか必ずロッテに帰ってくる」の約束果たした フリオ・フランコ(1995年、1998年在籍)

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