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最終24章 オリオンズの歴史に幕 1991(平成3)年

(1)川崎改装、千葉と駆け引き

 前年、大きな期待を寄せてトレードで獲得した高橋だったが、外野構想のアテが外れ、1年で阪神にトレードし、左腕の遠山昭治投手を獲得した。
 そして、ロッテ本社が腰を上げた。1月18日、重光武雄オーナーの次男、昭夫(本社総合調査室室長)が球団社長代行に就任することを発表した。重光社長代行は「我々の相手は西武さんでも読売さんでもなく、ディズニーランドなんじゃないかと思う」と発言。これまでのイメージを払しょくする戦法に出た。
 「テレビじゃ見れない川崎劇場」をキャッチフレーズにテレビ中継されないことを逆手に取ったPR戦略を打ち出し、従来通りのポスター等の告知はもちろん、テレビのCMにも打って出た。
 ただ、一部報道では移転を円滑に進めるための人事であり、移転のためにロッテ本社が球団運営に重い腰を上げたと伝えられた。

 オフのオリオンズの話題が千葉移転一色となっていた中で、カネやん二次政権の2年目がスタートした。川崎市も引き留めを図り、川崎球場が生まれ変わった。
◆グラウンドの全面人工芝化
◆パネル式だったスコアボードの電光化
◆防球ネットの嵩上げ
◆一部座席の取替え
◆スタンド壁面の再塗装
◆ベンチ、ロッカー等バックヤードの改修
 そして、川崎市は新川崎駅周辺の新鶴見操車場の跡地について「都市拠点総合整備計画」を策定し、都市計画道路の整備、横須賀線の新駅設置などとともに、ドーム型運動施設(老朽化した川崎球場に代わるドーム球場または一般野球場)の建設など、川崎市の副都心として大々的に整備することを発表した。
 すでに新球場が完成し、地元千葉県、千葉市が一体となった招致活動を進める千葉市と、引き留めたい川崎市の水面下で激しい綱引きが行われていた。ただ、昭夫の球団社長代行で千葉移転が本格化するとの推測が大半を占めた。

 カネやんは主将に西村を指名。選手会長には愛甲が選ばれた。カネやんは愛甲にリーダーとしてチームのけん引役を要請。さっそく愛甲は若手の小宮山、福沢らを引き連れ自主トレを行った。

 キャンプでカネやんは「若手が中心に一致団結してロッテらしい野球を見せる」と宣言。特に投手陣は、村田の穴を若手投手陣で埋めるべく、カネやんは投手陣の強化に力を入れた。中心に考えているのは前年結果を出しつつあった小宮山、前田、伊良部の3投手だった。ブルペンでは手取り足取りのアドバイス。本球場では、自らノックバットを手にした。先発は、この3投手を軸にベテランの荘、左腕園川が中心。リリーフには前年40試合に登板した平沼、井辺、今野に加え、阪神から移籍した左腕遠山、抑えは前年2ケタ10勝の白武が回る。前年右肩痛で3試合の登板に終わった牛島も別メニューながら復活を期す。
 前年は固定できず、ベテラン袴田が抜けたキャッチャーにも若手の育成にカネやんは力を入れる。前年87試合でマスクを被った青柳が中心となるが、打率.227ではカネやんも任せきれない。ディアズ、3年目の福沢、新日本製鐵広畑からドラフト2位で即戦力として期待されているルーキー定詰らに競わせるつもりだ。カネやんも「キャッチャーが厚くなった」と手応えを口にした。

 打線では来日以来2年連続で3割30本塁打100打点をマークしたディアズが4番として座る。脇を固めるクリーンアップは、前年.243に終わった愛甲がキャンプでも積極的に動き、3番としてディアズにつなげる役割を果たすことを誓う。5番には前年18本塁打の初芝、4年目の堀ら若手に期待が集まる。一番には首位打者の西村がいるだけに、如何にクリーンアップにつなげるかがカギになりそうだ。
 もちろん、3割の実績がある横田、上川らも復活を期し動いている。投手陣のみならず、打撃陣も激しい争いが予想され、戦力アップが期待された。

(2)2度の9連敗で最下位、ディアズ骨折離脱

新装なった川崎球場

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