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ある曲とその思い出 #2

4.手紙 / lostage

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 18〜20歳の時、奈良のスタジオでバイトをしていた。そこでバンドlostage(当時は4人編成lostage表記、今は3人編成LOSTAGE表記。)がメジャーにいく様を目の当たりにした。正しくはトイズファクトリーから発売された2ndアルバム「DRAMA」のゲネプロ作業をスタジオの受け付けからまじまじと見ていた。

 時折り、レコード会社の人が進捗をチェックしてきていたのだろうか、スタジオに出入りし「やべーな」「ヤバいすね」と男の人2人が静かに盛り上がっていた。ニット帽に髭、ゆったり目の厚手のシャツ…といった格好でなんとなく東京を感じたのを覚えている。

 所謂オルタナにはそこまでどハマりしていなかったが、lostageを通じてソニックユース、ピクシーズ、フガジ、アメリカンフットボール…と色々聞くようになる。
 
 目の前にいられるとだんたんlostageに夢中になっていきスタジオで売られていたインディーズのEPをスタッフながら買ったり、知り合いづてにもっと過去の音源も入手したりとかなりのファンになっていた。

 手紙という曲は流通している中では一番古いEP、P.S. I miss you(BeatlesのP.S.I Love Youのもじりらしい)の最後の5曲目に収録されておりメンバーや編成が変わっても長く演奏され、ファンにも手紙が特に好きという人は沢山いると思う。簡単にいうとエモさが詰まっている。

 その後も自身の弾き語りライブのセットリストに入れてみたり、LRに振られたツインギターをスピーカーのLRチェックに使うのにもまずは手紙になった。

 サブスクに無いのでYouTubeのリンク貼っておきます。


5.Boundless / Waking Vision Trio

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 直近の出来事だが印象に残ったので。

 同じマンションの一室に住んで4,5年。機材に服に本に、物といえば増えるだけなので年に一回断捨離をしている。せざるを得なくなる。一階にある自室は湿気が溜まりやすく毎年梅雨になると本棚、ギターアンプのがわ、下手するとギターまでもがカビの被害に遭うので、今年はカラーボックスか本棚かわからんような安モンの家具をメタルラックに替えようと高さ170センチ、天井近くまで収納できる背の高いものを導入し要らないものを捨てた。

 その時にリピート再生していたのがウォーキング・ビジョン・トリオのThe Ancient Bloomというアルバムだった。名うてのジャズギタリストは逐一チェックしていたつもりだったがJohn Shannonは知らなかった。個人名がバンドの名前にないジャズバンドは聞き逃しやすい。一聴するとメセニーっぽいなという印象だったが、不自然に繰り返されるテーマ、普通だったらソロにいくでしょうというところでまたテーマ。テクノっぽさ、ミニマルさがあり(メセニーのミニマルさとはまた違う、ジョンスコのファンクともまた違う、それらが混ざったような感じと言えなくもない)、気付けばいつの間にかソロパート。音はクリーンのみで、歪ませないのであればフルアコの方が太いクリーンが出るのに、セミアコの微妙に音の細いクリーンで弾きまくるのが返って本人にしか出せない音色になっていた。山道ならマウンテンバイクで行くべきなのに頑なにシティサイクルで行く感があり面白かった。

 ウォーキングビジョントリオを聴きながら、今季存在すら忘れていたブーツを捨て、腹筋ローラーを捨て、10年ほど経つが完全には壊れていない500GBのHDDを捨て、いつも買うだけでマメには開かない過去の手帳を捨て、ちょっと良い店の紙袋の束を捨て、新規契約時にもらうようなノートの類を捨て、勢いで買った外国の偉い人の名言集のような本を捨て、用済みの本棚を風呂場でノコギリでカットし捨て、その他もろもろ捨て、ごみ収集所まで2,3往復した。

 アルバムも3,4周はしたので完全に掃除のテーマになってしまった。

5.5 Into High Selva / Waking Vision

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 謎にTrioが取れたウォーキング・ビジョンも聞きました。聞けば別名義にするのも納得。こちらファズぐらいまで歪ませていてJohn Shannonには違いないが別人格。トリオの方はイヤな言い方をするとバークリーっぽいなといった感じだが、コチラは京都辺りで長くやってるオルタナインストバンドと言われたらそう思ってしまいそうなサウンド。それこそlostageファンにも刺さるのでは。

6. Bad Sneakers / Steely Dan

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 ハタチかそこいらの頃、スタジオで先輩らがスティーヴ・ヴァイの話をしていたので「あの蝋燭みたいなジャケットのやつですよね」と首を突っ込むと「そらスティーリー・ダンやろ」と恥をかいた。どっちにもまだ興味がなかったので頓珍漢なことを言ってしまったが、スティーヴ・ヴァイはフランク・ザッパのバンドにいたギタリストで、スティーリー・ダンは人の名前ではなくAORの金字塔を打ち立てた偉大なバンドだと知る。

 話の流れだとスティーヴ・ヴァイに焦点が合うと思いきや、そこは思い出。それからその先輩バンドのライブのサポートでキーボードを弾くことになり、話によく上がるのはもっぱらスティーリー・ダンの方だった。

 スタジオのテレビでスティーリー・ダンのライブ映像を観ながら

 「スティーリー・ダン聴いて飯食ったらめっちゃ美味いで。」

 とドラムの人。スティーリー・ダンのサウンドは見たこともないのにニューヨークの夜景をバンドサウンドに変換したような音で、スタジオから帰る車中Ajaをかけると奈良の健康ランドや来来亭の灯りが倍華やかに見えた。

 「このギターの人テレキャスのボディにストラトのピックアップ付けてんねん。ええ音やなぁ。」

 「このサックスの人ニューヨークの駅で吹いてるとこスカウトされたらしいで。」

 ギターの人にも色々教えてもらった。後日その先輩バンドのデモを聞かせてもらうとAメロのプレイがラリー・カールトン風になっていた。いつかあんな曲が書きたいとよく言っていたのがBad Sneakersという曲だった。

 あとがき

 コレを書きながらAjaを久しぶりに聞くと脊髄まで染みるくらいに感動した。Ajaを5周くらいしてナイトフライも聞いてみる。素晴らしいのには違いないが自分の中ではAjaに軍配が上がった。デジタルレコーディングになったからだろうかと考えてみたが直感ではナイトフライのドナルド・フェイゲンはどこかご機嫌な気がした。Ajaは不穏でムードで緊張感がある。和声とアンサンブルからそう感じたことを次の日に気づいた。アルバムの2曲目に8分の曲というにわかをふるいにかけるような曲順もたまらない。普通2曲目はPegでしょう。聞き逃していたライブ盤も素晴らしく当分はスティーリー・ダン狂いになりそうです。

 
 
 

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