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松崎健夫さんのコメントを全文掲載!

映画評論家・松崎健夫さんの「おろかもの」へのコメント全文をこちらに掲載させて頂きます!

●この映画に登場するのは、タイトル通り“愚か者”たちばかりだ。誰かを恨んだり、妬んだり。世の中が綺麗事ばかりではないことを知っているからこそ、愚かだと判っていても愚行をやめることができないのだ。みんな悪いけれど、誰も悪くない。そんな、理屈だけでは裁けない人間の性がここにはある。彼らは“愚か者”であり、同時に“疎か者”なのだ。世界的にも不寛容で排他的な傾向が強くなっていると言われる国際社会の中で、この不寛容に満ちた物語は、やがて予想外な<和>のあり方を導いてゆく。憎しみ合うだけでは何も生まれない。だから憎しみに対して、あえて“おろか”になってみようと云うのだ。拡大解釈すれば、『おろかもの』が描く日常生活における<和>は、不寛容に満ちた世界が寛容という名の優しさにつつまれてゆく希望を提示しているようにさえ見える。若き世代によるこの人間賛歌は、混沌とした時代だからこそ、まさに今観るべき作品なのだ。
(映画評論家・松崎健夫)

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