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『イワノキツネ』第2部 №6

悩みを聞く石は、大雨の水がなかなか引かないことで有名なアンダーパスまで来ると、ピタリと止まる。そしてゆっくりと、アンダーパスに残る深い水溜りへと誘導する。猫さん達が恐る恐る見てみると、水溜りの中に白くて大きな排水ポンプが入っており、ブルブルと稼働していた。

猫さんはまたもや白いヘビを説明するハメになる。それを見ていたチョビヒゲ猫は、ふとあることに気がつく。

悩みを聞く石は、心の奥まで見通すような澄んだ結晶を持っている。猫さんはお気に入りの白い石を取り戻したくて白ヘビを探しているが、もともとヘビが大の苦手で、見つけたいけど見つけたくないという矛盾した気持ちまで伝わって、"ヘビみたいなモノ"を見つけてしまうのではないかと。

小野さんは、なるほどとうなづく。試しにチョビヒゲ猫が悩みを聞く石に、白ヘビや白い石を探していると相談してみても、本当は興味がなく、特に悩んでいないチョビヒゲ猫に、石はウンともスンともせず、小野さんも同じ結果だった。

「アプローチを変えよう」

小野さんは猫さんに、白ヘビと白い石以外で、困りごとに近い情報は無いかと聞くと、猫さんの脳裏にフラッシュバックのように、見たことのない海へ斜めに突き刺さった岩の、あの夢で見た風景がよぎった。小野さんはすぐさま猫さんに石を渡すと、心象風景を掴み取ったのか、結晶部分がキラリと光る。

「その岩が見つからなくて悩んでいるのですね」

今度は本気なのか、石は透明な部分を更に透明にして、まるで自分自身を覗き込むかのように深く振動すると身震いして、猫さんの頭にポンと飛び乗った。小野さんは、国指定名勝の白ヘビ探しで館から特別休暇をもらっているので、そのまま捜索を続行する。

チョビヒゲ猫は、今回の探索はあまり乗り気ではなく、自治会館で留守番してようかなと、なんだか正直どうでもいい気持ちだった。


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