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『悩ましい世』No.7

融雪剤を撒き終えた小野さんは、白髪のおじいさんからもらった2本目の枝をリュックに刺し、商店街を通って会館まで帰ることにした。新しい枝をもらった猫さんは、ホッとして爪とぎに疲れたのか、リュックの中でスヤスヤと寝てしまった。小野さんは、深々とおじいさんにお辞儀をして、防災倉庫を後にする。

商店街ではクリスマスの飾りつけもそのままに、新春初売りの準備が始まっていた。小野さんはハッとする。防災倉庫には、ほんの2時間ほどしか滞在していなかったはずなのに、商店街はクリスマスも年末大売り出しも過ぎて、初売りを待つばかりになっている。白蛇様のお祭りはもう終了なのか、旗がすでにしまわれていた。

狐につままれたような気持ちの小野さんが、なんの気なしに石の祠の前を通りがかると、大人しく鎮座していた野生の白蛇が、小野さんを見るなり異常に興奮し、シャーシャーと警戒音を立てはじめた。不気味に思った小野さんが、祠から立ち去ろうと後ずさると、白蛇はカッと目を開き、「ウヌレワレヲオトシメタヤカラ!」と叫び、勢い良く祠から小野さんに飛びかかった。

とっさに身をよじり蛇を払いのけるも、白蛇は執念深く何度も小野さんに飛びかかってくる。小野さんは、仕方なく荒ぶる白蛇の胴体をうなぎを持つようにギュッと掴むと、傷つけない程度の力で首根っこを押さえつけた。白蛇はさすがにグッタリして動かなくなった。

すると、白蛇祭りで使用した小さな輪投げの輪がどこからともなく飛んできて、くるくるとリュックに刺している枝に引っかかった。

「アハハ」

聞いたことのある笑い声がして、気が動転している小野さんの前に、ガラガラとキャリーバックを持った意外な人物が現れた。

「ケルヌンノスの完成だな」

ようやく海外出張から戻ってきてお偉いさんだった。リュックで寝ていた猫さんは、お偉いさんの声に気づいて一度は起きたものの、小野さんが手にしている白蛇を見て、再び気を失った。

「ご冗談はおやめください」

現状に困り果てている小野さんが、からかうお偉いさんに苦言を呈すと、お偉いさんは、自分の留守中の働きを労うと、商店街のオヤジに手配してもらったタクシーで会館へ戻ることにした。







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