気象予報士の朝ドラを観て宇宙飛行士の歌を思い出した話
10月29日に最終回を迎えたおかえりモネ。
私が最も好きなアーティストであるBUMP OF CHICKENが主題歌を務めるとの一報に触れてから、第1話から追いかけようと決めていました。
結論から言うと、観て良かったです。
振り返ると放送開始の5月17日から半年近く、120話×15分=30時間のドラマを見続けられたのは、このドラマが人と人との関係を丁寧に描いていたからだと思います。
モネとモネを取り巻く魅力的な人たち。
感情が溢れると近しい人の心をえぐってしまうみぃちゃんの難儀な性格、進次さんの深い喪失感とその親友耕治さんが抱える自分への不甲斐なさ、自分を律しどんと構えて背中を見せつけ背中を押すサヤカさんなどなどなど。
登場人物が物語を進めていく15分が短くてしょうがなかったです。
ドラマを観ていて所々にBUMPの歌詞と通底しているように感じるセリフがありました。
中でも印象的だったのは菅波医師のこのセリフ。
「あなたの痛みは僕には分かりません。でも分かりたいと思っています」
少しでも近くに寄り添いたいので想像を止めませんよという菅波医師なりの誠実さだと捉えたのですが、これって『宇宙飛行士への手紙』で歌われている内容ととても近いのではと感じました。この歌詞です。
「どうやったって無理なんだ 知らない記憶を知ることは
言葉で伝えても 伝わったのは言葉だけ」
セリフと歌詞に共通していると感じたのは次の2点です。
①他者を想像力により優しく受け止めようとしている
②「わからない」という不可能性をゴール(悲観的な結論)ではなくスタート(建設的な第一歩)にしている
今のコミュニケーションの基本って共感と共有が重要視されている気がしているのですが、①は共感や共有とは種類の異なる受容の仕方のように思います。
先述の歌詞は一見すると悲観的な結論のように見えますが、歌詞には次の一節があります。
「できるだけ離れないで いたいと願うのは
出会う前の傷を 僕にそっと見せてくれたから」
勝手な意訳をすると「経験を分かち合うことはできません、打ち明けられた人間ができることはなぜ悲しいのか汲み取るよう一生懸命考えることしかない」みたいな。
呼吸器系の医師である菅波医師は最終話でモネと2020年以来2年半ぶりの再会を果たします。2人は東京と気仙沼で遠距離恋愛を続けていました。
モネと再会し「あなたと僕は違う時空で生きているのか」と冗談めかして語りかける菅波医師。明るい太陽の下で凪いだ海を背にして微笑むモネと、つい昨日まで自分がいた大シケのような職場とのギャップに信じられない思いだったのでしょう。
「私たち、距離も時間も関係ないですから」とモネは答えます。同じ場所で同じ時間を過ごせていなくても何の問題もないですよ、と。強い。
そしてそのまま砂浜を4つの踵が同じ方向へ進んでいきドラマは幕を下ろします。
モネの予報通りにこのすぐ後に太陽が隠れ雨が降ってきても、昨日までもそうだったように明日も2人は繋いだ手を解くことなく、長い時間をかけてこれまでの2年半を教え合い、これからの未来を語り合っていくに違いないと思わせる幸せなラストカットでした。
観られて超よかった。
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